労働安全コンサルタント試験 2020年 産業安全一般 問12

職場における安全教育等




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合格

 このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和02年度) 問12 難易度 労働安全教育等に関するごく基本的な知識を問う問題である。これを正答できなければ合格は覚束ない。
職場における安全教育等

問12 職場における安全教育等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)高年齢労働者を対象とした教育では、十分な時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用して理解を促すとともに、繰り返し行って定着させる。

(2)KYT(危険予知訓練)とは、現場や作業の状況の中に潜む危険要因を発見し、その問題点を解決して、危険に対する感受性や問題解決能力を高める手法である。

(3)従事する作業に関する安全衛生の知識等を就業時に付与することは重要であり、パートタイム労働者のように勤務シフト等から集合研修の実施が困難な場合においては、視聴覚教材を活用した教育も有効である。

(4)OFF-JTによる教育は、新規採用者教育等の共通的な内容のものには適しているが、特別教育のような特定の内容のものについての教育には適さない。

(5)建設業の職長の能力向上を図るための教育は、職務に従事することとなった後、概ね5年ごと及び機械設備等に大幅な変更があったときに実施する。

正答(4)

【解説】

(1)適切である。「安全衛生教育等推進要綱(以下、「要綱」という。なお、通達も参照されたい。)」においては、「高年齢労働者の安全衛生教育等においては、対象者の理解度に応じて、反復学習の機会を与えることが望ましい」とされている。

そもそも「十分な時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用して理解を促すとともに、繰り返し行って定着させる」というのであれば、対象が高齢者であろうとなかろうと不適切なわけがないであろう。

(2)適切である。職場のあんぜんサイトの安全衛生キーワードの「危険予知訓練(KYT)」によれば、「危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法です」とされている。

(3)適切でないとはいえない。まず、本肢の冒頭の「従事する作業に関する安全衛生の知識等を就業時に付与することは重要」なことが適切であることは当然だろう。要綱にも「パートタイム労働者、派遣労働者等就業形態は多様化しているが、労働者に対しては、就業時に従事する作業に関する安全衛生の知識等を付与すること、すなわち雇入時等の教育を徹底することが重要である」とされている。

問題は、パートタイム労働者だからといって、就業時の教育について「勤務シフト等から集合研修の実施が困難」だとは思えないことである。しかし、パートタイム労働者は、採用時期が統一しないことなどから、集合研修の実施が困難な場合もあろう。

最後の「視聴覚教材を活用した教育も有効」というのは、集合教育の困難性とは無関係に、またパートタイム労働者に限らず適切であろう。なお、「視聴覚教材を活用した教育」と「e-ラーニング」とは、まったく異なる概念である。

趣旨のはっきりしない文章ではあるが、必ずしも不適切とも言い切れないだろう。

(4)適切ではない。特別教育は、安全衛生特別教育規定によって実施時間や内容が定められている。学科教育、実技教育ともにOFF – JTでなければならない。

なお、本肢とは直接の関係はないが、令和2年3月26日基安安発0326第1号「インターネット等を介したeラーニングにより行われる特別教育の当面の考え方等について」によれば、eーラーニングによる特別教育の実施は絶対的に否定されてはいないが、これはOJTによる実施を認めたものではないことは当然である。また、自宅でのe-ラーニングによる学習も原則として認めてはいない。

(5)適切である。要綱の別表の「2.安全衛生に係る管理者」の「(3)職長等」に、(建設業に限らず)職長の能力向上を図るための教育は、職務に従事することとなった後、概ね5年ごと及び機械設備等に大幅な変更があったときに実施するものとされている。

2020年11月21日執筆