労働安全コンサルタント試験 2020年 産業安全一般 問05

信頼性工学における総合信頼性用語




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合格

 このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和02年度) 問05 難易度 過去に前例のない問題である。一般の受験生にとってはかなりの難問だったか。
総合信頼性用語

問05 信頼性工学における総合信頼性用語に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)故障とは、対象となる機器が要求どおりに実行する能力を失うことである。

(2)保全とは、対象となる機器が要求どおりに実行可能な状態に維持され、又は修復されることを意図した、全ての技術的活動及び管理活動の組合せである。

(3)冗長とは、対象となる機器において、機能を達成するために複数の手段を用意することである。

(4)信頼度配分とは、産業用ロボットのような対象となる機器の信頼性目標を達成するために、当該機器自体の信頼性特性値(数量的に表した信頼性の尺度)を決定することである。

(5)ディレーティングとは、発動機のような対象となる機器の信頼性を向上させるために、予想される動作ストレスよりも高い能力をもつものを使用する、又は当該機器をその定格値よりも低い動作ストレスで運用することである。

正答(4)

【解説】

本問は、JIS Z 8115:2019「ディペンダビリティ(総合信頼性)用語」からの出題であると思われる。ただ、このJISを知らなかったとしても、言葉の意味から正答の予測がつくであろう。

(1)適切である。JIS Z 8115では、「故障」とは「アイテムが要求どおりに実行する能力を失うこと」とされている。また、常識的に考えても、本肢は正しいとしてよいであろう。

(2)適切である。JIS Z 8115では、「保全、保守」とは「アイテムが要求どおりに実行可能な状態に維持され、又は修復されることを意図した、全ての技術的活動及び管理活動の組合せ」とされている。これも、常識的に考えて正しいとしてよいであろう。

(3)適切である。JIS Z 8115では、「冗長」とは「システムにおいて,機能を達成するために複数の手段を用意すること」とされている。これも、常識的に考えて正しいとしてよいであろう。

(4)適切ではない。JIS Z 8115では、「信頼度配分」とは「システムの信頼性目標を達成するために実施する、サブシステム及びその構成要素への信頼性特性値の配分」とされている。

すなわち、信頼度配分とは、本肢にあるような「機器自体の信頼性特性(数量的に表した信頼性の尺度)を決定すること」ではなく、機器を構成する要素ごとに信頼度を合理的に配分することである。

例えば、aとbという2つの構成要素があり、aは1月に1回故障し、bは100年に1度しか故障しないとしよう。そのとき、システム全体の信頼性を向上させるために、bの信頼度を向上させてもあまり意味はない。限られた資源を用い、各要素にどのように信頼度を割り振って、全体の信頼性を合理的に高めるかが大切なのである。

(5)適切である。ディレーティング(derating)の定義はJIS Z 8115にはない。しかし、これは言葉通りの意味である。「rating」(定格)という単語に、下げるなどの意味をもつ接頭辞の「de」が付いている。すなわち、最大定格よりも低い能力で使用することにより、そのシステムの信頼性を向上させることを意味する。

本肢の言う「発動機のような対象となる機器の信頼性を向上させるために、予想される動作ストレスよりも高い能力をもつものを使用する、又は当該機器をその定格値よりも低い動作ストレスで運用すること」がディレーティングである。

2020年11月14日執筆