労働安全コンサルタント試験 2020年 産業安全一般 問04

建設工事に使用される設備や施工方法




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合格

 このページは、2020年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年度(令和02年度) 問04 難易度 やや細かな知識を問うている肢もある。基本的な内容だが、建設以外の受験生には難問の部類か。
建設工事の設備等

問04 建設工事に使用される設備や施工方法に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)移動式クレーンを使用中、つり荷を下ろしたときに玉掛け用ワイヤロープが荷と地面の間に挟まり、手で抜けなくなったので、周囲に人がいないことを確認してからクレーンのフックの巻き上げによって引き抜いた。

(2)低層住宅の工事を足場先行工法によって行うこととし、敷地が狭あいで二側足場の設置が困難であったので、ブラケット一側足場とした。

(3)土止め先行工法において、掘削深さが比較的深く、自立しない軟弱な地山の小規模の溝掘削作業で、一定の深さまで掘削機械により溝掘削を行った後に、軽量鋼矢板を建て込み、最上段の腹起しと切ばりを設置する建込み方式軽量鋼矢板工法を選択した。

(4)単管足場の組立て作業において、足場の桁行方向の外側面に取り付ける大筋かいについては、補強効果を高めるため、できるだけ建地(支柱)と布(水平材)の交点付近を通らないように取り付けた。

(5)可搬型のゴンドラを使用する作業において、つり下げ用ワイヤロープの安全率が6以上であることを確認した。

正答(2)

【解説】

(1)適切ではない。本肢のような移動式クレーンの使用は、その本来の用途から逸脱したものであり適切な使用方法とは言えない。移動式クレーンのメーカーはこのような使用をしないよう、マニュアル等でユーザーに求めている。

なお、本肢とは直接の関係はないが、昭和60年10月15日基発第595号「移動式クレーンを使用して行うくい抜き作業における安全対策について」を参照しておくことをお勧めする。

(2)適切である。平成18年2月10日基発第0210001号「足場先行工法に関するガイドライン」に「足場は二側足場とすること。ただし、敷地が狭あいな場合等二側足場の設置が困難な場合には、ブラケット一側足場等とすることができる」とされている。

(3)適切ではない。平成15年12月17日基発第1217001号「土止め先行工法に関するガイドラインの策定について」(土止め先行工法ガイドライン)において、「これらの土砂崩壊による災害は、土止め支保工が未設置の溝内作業中あるいは溝内での土止め支保工の組立て又は解体作業中に発生したものが9割を超え、こうした災害のほとんどは、労働者が溝内に立ち入る前に適切な土止め支保工を設置し、解体の作業も労働者が溝内に立ち入らずに行うことにより防止することができるものである」とされている。

本肢の「掘削深さが比較的深く、自立しない軟弱な地山の小規模の溝掘削作業で、一定の深さまで掘削機械により溝掘削を行った後に、軽量鋼矢板を建て込み、最上段の腹起しと切ばりを設置する建込み方式軽量鋼矢板工法を選択した」というのは、土止め先行工法の考え方と矛盾するものであり、著しく不適切である。

(4)適切ではない。「大筋かい」は、建地と布材(作業床)の交点付近で交差させることが奨励されている。これは、そうすることで水平力が効果的に伝達されるからである。ただ、このようなノウハウ的な事項は一般的なテキストにはあまり記載されておらず、一般の受験者には、やや難度の高い設問と言えるかもしれない。

なお、「大筋かい」は一般的に用いられている用語であるが、JIS A 8951:1995「鋼管足場」には「けた行筋かい」という用語で表現されている。

(5)適切ではない。ゴンドラ構造規格第41条第1項(第一号)のにより、可搬型のゴンドラを使用する作業においては、つり下げ用ワイヤロープの安全率は10以上でなければならない。

2020年11月14日執筆