労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全関係法令 問08

電気による労働災害の防止




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 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問08 難易度 電気災害については、過去問によって対応できることが多い。正答しておきたい問題である。
電気による災害の防止

問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)高圧の電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行う場合は、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行う期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めなければならない。ただし、当該電路を開路して当該作業を行うときはこの限りでない。

(2)高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれがあるときの措置としては、労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱っている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着することでよい。

(3)高圧の架空電線に近接する場所で、くい打機、くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者が作業中に当該充電電路に身体等が接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときの措置としては、当該充電電路に絶縁用防護具を装着することでよい。

(4)低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行う場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときの措置としては、当該労働者に活線作業用器具を使用させることでよい。

(5)低圧の仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。電路をすべて開路して行うのであれば、停電作業であると考えられる。しかし、安衛則第350条により、第339条の作業(停電作業)を行う場合であっても、本肢の措置を取ることが必要である。なお、このことは開路した電路の電圧によらないので、特別高圧、高圧又は低圧のいずれであっても同様である。

そもそも、作業指揮者に行わせるべき事項には電路を開路して行うときの事項が定められている。

なお、本肢は第342条第1項の作業(高圧の電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業)ではないと考えられる。

【労働安全衛生規則】

(停電作業を行なう場合の措置)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一~三 (略)

 (略)

(高圧活線近接作業)

第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が三十センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が六十センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(電気工事の作業を行なう場合の作業指揮等)

第350条 事業者は、第三百三十九条、第三百四十一条第一項、第三百四十二条第一項、第三百四十四条第一項又は第三百四十五条第一項の作業を行なうときは、当該作業に従事する労働者に対し、作業を行なう期間、作業の内容並びに取り扱う電路及びこれに近接する電路の系統について周知させ、かつ、作業の指揮者を定めて、その者に次の事項を行なわせなければならない。

一~三 (略)

 電路を開路して作業を行なうときは、当該電路の停電の状態及び開路に用いた開閉器の施錠、通電禁止に関する所要事項の表示又は監視人の配置の状態並びに電路を開路した後における短絡接地器具の取付けの状態を確認した後に作業の着手を指示すること。

(2)正しい。安衛則第341条第1項(第一号)により違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱つている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。

二及び三 (略)

 (略)

(3)正しい。安衛則第349条第1項(第三号)により違反とはならない。

なお、「絶縁用防具」と「絶縁用防護具」の違いは理解しておくこと。前者は電気工事等の作業で用いるものであり、後者は建築工事等で用いるものである。また、実務においては知っておいた方がよいことだが、電力会社は「絶縁用防護具は電線保護のためのものであって、感電防止の機能はない」と考えている。

【労働安全衛生規則】

(工作物の建設等の作業を行なう場合の感電の防止)

第349条 事業者は、架空電線又は電気機械器具の充電電路に近接する場所で、工作物の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業若しくはこれらに附帯する作業又はくい打機、くい抜機、移動式クレーン等を使用する作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が作業中又は通行の際に、当該充電電路に身体等が接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

一及び二 (略)

 当該充電電路に絶縁用防護具を装着すること。

 (略)

(4)正しい。安衛則第346条第1項により違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(低圧活線作業)

第346条 事業者は、低圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該労働者に絶縁用保護具を着用させ、又は活線作業用器具を使用させなければならない。

 (略)

(5)正しい。安衛則第338条そのままの条文問題である。ネットで検索すると、通路において架設配線を保護するための用具がかなりヒットする。

【労働安全衛生規則】

(仮設の配線等)

第338条 事業者は、仮設の配線又は移動電線を通路面において使用してはならない。ただし、当該配線又は移動電線の上を車両その他の物が通過すること等による絶縁被覆の損傷のおそれのない状態で使用するときは、この限りでない。

2019年12月15日執筆