労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問01 難易度 安全衛生管理体制は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。
労働安全衛生管理体制

問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、総括安全衛生管理者選任報告書を所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

(2)事業者は、安全管理者を選任したときは、当該安全管理者の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

(3)事業者は、安全管理者を選任することができないやむを得ない事由がある場合で、所轄労働基準監督署長の許可を受けたときは、安全管理者を選任しないことができる。

(4)都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、安全委員会の運営について必要な事項を事業者に命令することができる。

(5)事業者は、安全衛生推進者を選任するときは、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときを除き、その事業場に専属の者を選任しなければならない。

正答(5)

【解説】

(1)誤り。安衛則第2条第2項により、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、選任報告書を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならない。労働局長ではない。

こんな肢に、惑わされてはいけない。労働局が窓口になるのは監督署では対応できないような専門的な内容についてである。監督署が県内に散らばっているのに、こんなことで労働局(県庁所在地に1か所のみ)に事業者を来させるわけがなかろう。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の選任)

第2条 法第十条第一項の規定による総括安全衛生管理者の選任は、総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に行なわなければならない。

 事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、様式第三号による報告書を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。

(2)誤り。安全衛生に関する担当者を選任したときの氏名の周知義務は、「安全衛生推進者等」と「作業主任者」には定められているが、安全管理者には定められていない。

【労働安全衛生規則】

(安全衛生推進者等の氏名の周知)

第12条の4 事業者は、安全衛生推進者等を選任したときは、当該安全衛生推進者等の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

(作業主任者の氏名等の周知)

第18条 事業者は、作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の氏名及びその者に行なわせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

(3)誤り。このような規定はない。安全管理者を選任できないやむを得ない理由などあるわけがなかろう。

などというと、事業場内に有資格者がいない場合はどうすればよいのかと思えるかもしれないが、資格要件のさらに厳しい衛生管理者でさえこのような規定はないし、そもそも安全管理者の有資格はかなり広い。なお、安衛則第5条第3号の厚生労働大臣が定める者もかなり広く定めている。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 法第十一条第一項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 安全管理者を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。

二~四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

 (略)

(安全管理者の資格)

第5条 法第十一条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。

 次のいずれかに該当する者で、法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了したもの

 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)又は高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)における理科系統の正規の課程を修めて卒業した者(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構(以下「大学改革支援・学位授与機構」という。)により学士の学位を授与された者(当該課程を修めた者に限る。)若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められる者又は当該課程を修めて同法による専門職大学の前期課程(以下「専門職大学前期課程」という。)を修了した者を含む。第十八条の四第一号において同じ。)で、その後二年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの

 学校教育法による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による中等学校を含む。以下同じ。)又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後四年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの

 労働安全コンサルタント

 前二号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

(4)誤り。このような規定はない。安全委員会は事業者にとっては諮問機関である。「労働災害を防止するため必要があると認める」なら、直接、必要なことを命じればよい。「安全委員会の運営について必要な事項を事業者に命令する」ような悠長なことをしていてどうするのだ!

なお、安全衛生管理体制について労働基準監督署長が命じることができることに「安全管理者の増員又は解任」及び「元方安全衛生管理者の増員又は解任」があることは覚えておこう。

【労働安全衛生法】

(安全管理者)

第11条 (略)

 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。

(元方安全衛生管理者)

第15条の2 (略)

 第十一条第二項の規定は、元方安全衛生管理者について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該元方安全衛生管理者を選任した事業者」と読み替えるものとする。

(安全委員会)

第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。

一~三 (略)

2~5 (略)

(5)正しい。安衛則第12条の3第1項第2号により、安全衛生推進者は、原則としてその事業場に専属の者を選任しなければならないが、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない。

【労働安全衛生法】

(安全衛生推進者等)

第12条の2 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。

【労働安全衛生規則】

(安全衛生推進者等の選任)

第12条の3 法第十二条の二の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第十条第一項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。

 (略)

 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りでない

 (略)

2019年12月14日執筆