労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全一般 問20

墜落制止用器具




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合格

 このページは、2019年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問20 難易度 時事問題である。改正からあまり経っておらず、かなり話題になった法令改正なのでほぼ正答できただろう。
墜落制止用器具

問20 墜落制止用器具に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)移動時におけるフックの掛替え時の墜落を防止するため、二つのフックを相互に使用する方法(二丁掛け)が望ましい。

(2)6.75 m を超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型のものとする。

(3)鉄骨組み立て作業等において、足下にフックを掛けて作業を行う必要がある場合は、フルハーネス型を選定するとともに、第二種ショックアブソーバを選定する。

(4)適切な墜落制止用器具の使用に当たっては、フルハーネス型、胴ベルト型又はU字つり用胴ベルト型から選択する必要がある。

(5)墜落制止用器具には、使用可能な最大質量が定められているので、器具を使用する者の体重と装備品の合計の質量が使用可能な最大質量を超えないように器具を選定する。

正答(4)

【解説】

本問は「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(以下、本問の解説において「ガイドライン」という。)からの設問である。

(1)正しい。ガイドライン第4の2の(2)ウにこの通りに記載されている。

なお、これは移動時についての記述であり、ショックアブソーバがそれぞれに組み込まれたランヤード2本をかけたまま作業を行うことは好ましくない。

(2)正しい。墜落制止用器具の使用を義務付ける省令の条文には「要求性能墜落制止用器具」と書かれている。この「要求性能墜落制止用器具」の定義は、安衛則であれば第130条の5にあるが、「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具」とされている。

この「墜落による危険のおそれに応じた性能」は、「墜落制止用器具の規格」に示されているが、そのひとつとして第2条第1項に「6.75mを超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型のものでなければならない」とされている。

【労働安全衛生規則】

(粉砕機等への転落等における危険の防止)

第130条の5 (前略)墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(以下「要求性能墜落制止用器具」という。)(後略)。

2及び3 (略)

【墜落制止用器具の規格】

(使用制限)

第2条 六・七五メートルを超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型のものでなければならない。

2及び3 (略)

(3)正しい。鉄骨組み立て作業等は「ワークポジショニング作業を伴わない」が、ガイドラインの第4の「2 墜落制止用器具の選定(ワークポジショニング作業を伴わない場合)」の(1)のイに本肢と同様な規定がある。

ところで、本肢の正誤とは関係はないが、これはかなり無理のある規定である。というのはこの規定には高さについて制限がないので、2m以上のすべての高さについての規定と考えられる。ところが、第2種ショックアブソーバの付されたランヤードで巻取り式のものは販売されておらず、ほとんどのランヤードは1.7mで、落下距離が5mを超えるのである。

従って、5mより低いところでこの規定に遵おうとすると、墜落すると必ず地面に激突することになるのだ。

結局、ガイドラインに遵おうとするなら、5mより低いところで作業をするなら、ランヤードは第1種ショックアブソーバを選び、腰より高いところにフックをかける必要があることとなる。要は、第2種ショックアブソーバなど使えないのである。

(4)誤り。墜落制止用器具の規格第2条には、フルハーネス型及び胴ベルト型しか示されておらず、U字つり用胴ベルト型は示されていない。従って、U字つり用胴ベルト型は墜落制止用器具に該当しない。

(5)正しい。墜落制止用器具の第9条には、ショックアブソーバには「使用可能な着用者の体重と装備品の質量の合計の最大値」を表示することとされている。これに遵わなければ「要求性能墜落制止用器具」を使用したことにならない。

2020年01月04日執筆