労働安全コンサルタント試験 2019年 産業安全一般 問19

感電災害防止用の器具、装置




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合格

 このページは、2019年の労働安全コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と正答を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問19 難易度 やや詳細な内容を問うている。電気安全以外の受験者には難問だったかもしれない。
感電防止用の器具、装置

問19 感電災害を防止するために使用する器具、装置などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)検電器は、電路の活線・停電を確認するためのものであり、いずれの検電器も交流、直流、電圧の違いによらず使用できる。

(2)交流アーク溶接機の出力側で発生する感電災害の防止のためには、クランプ部以外の部分が絶縁物で覆われた溶接棒ホルダーを用いることが必要である。

(3)感電防止用の漏電しゃ断器は、これが設置された以降の電路及び電気機器で起きる漏電に対して、漏れ電流がある値以上であれば、その電路を自動的に瞬時に開放する安全装置である。

(4)短絡接地器具は、高圧以上の停電した電路などにおいて、誤通電、他の電路との混触等により不意に充電される場合に備えて短絡と接地を行うものである。

(5)交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は、アークを発生させていない場合に、溶接機の二次側回路の無負荷電圧を自動的に安全な電圧に低下させ、感電を防止する装置である。

正答(1)

【解説】

(1)交流用の検電器は、電路が活線だった場合、検電器の握りの部分の静電容量(コンデンサ)を通し、人体を経て対地に流れるわずかな電流を検知することによって、活線であることを確認する仕組みである。この電流は人体には危険を及ぼさない程度の微弱なものでなければならない。そのため、絶縁部分の静電容量や絶縁抵抗が測定対象物の電圧に対応していないと、測定ができなかったり人体に危険を及ぼすこととなる。

また、直流用の検電器は、検電器の握りの部分の静電容量(コンデンサ)を通して電流が流れることができないため、大地(アース)へ電流を流す配線が必要になる。交流用の検電器はそのままでは直流には使用できない。

(2)正しい。ホルダについては、JIS C 9300-11:2015に定めるホルダの規格に適合するもの又はこれと同等以上の絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない。

なお、平成20年9月29日基発第0929002号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」を参考にされたい。

【労働安全衛生規則】

(溶接棒等のホルダー)

第331条 事業者は、アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業に使用する溶接棒等のホルダーについては、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない。

(3)正しい。ただし、アーク溶接装置のように絶縁トランスを内蔵する装置の二次側の漏電を防止することはできない。(1)が明らかに誤っているのでこちらは正しいとしておくが、問題がやや不適切のようにも思える。

(4)正しい。

【労働安全衛生規則】

(停電作業を行なう場合の措置)

第339条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。

一及び二 (略)

 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。

 (略)

(5)正しい。なお、安全な電圧は「無負荷電圧」とはいわないので誤解しないように。

2020年01月04日執筆