労働安全コンサルタント試験 2018年 産業安全関係法令 問08

電気による労働災害の防止




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合格

 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問08 難易度 電気災害の防止に関するやや高度な知識問題ではあるが、正答しておきたい問題である。
電気災害の防止

問8 電気による労働災害を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)対地電圧が220ボルトの電動機械器具を使用するとき、絶縁台の上で使用するので感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなかった。

(2)著しく狭あいな船舶の二重底の内部おいて交流アーク溶接の作業を行うとき、自動溶接であったので交流アーク溶接機用自動電撃防止装置は使用しなかった。

(3)200ボルトの低圧の充電電路に近接する場所で電路の支持物の塗装の作業を行うとき、作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することによる感電の危険があったので、当該充電電路に絶縁用防具を装着したが、塗装の作業を行う労働者に絶縁用保護具は使用させなかった。

(4)6.6キロボルトの高圧の充電電路の修理の作業を行うとき、当該作業に従事する労働者に感電の危険があったので、労働者に活線作業用器具を使用させたが、絶縁用保護具は着用させなかった。

(5)22キロボルトの特別高圧の充電電路の修理の作業を行うとき、作業に従事する労働者に感電の危険があったので、労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、修理部分以外の充電電路に絶縁用防具を装着したが、活線作業用器具及び活線作業用装置は使用させなかった。

正答(5)

【解説】

(1)違反とはならない。安衛則第333条により、電動機械器具対地電圧が150ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のものは、感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならないとされている。しかし、同規則第334条(第二号)によって、絶縁台の上で使用する電動機械器具は適用除外となっている。

【労働安全衛生規則】

(漏電による感電の防止)

第333条 事業者は、電動機を有する機械又は器具(以下「電動機械器具」という。)で、対地電圧が百五十ボルトをこえる移動式若しくは可搬式のもの又は水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所その他鉄板上、鉄骨上、定盤上等導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のものについては、漏電による感電の危険を防止するため、当該電動機械器具が接続される電路に、当該電路の定格に適合し、感度が良好であり、かつ、確実に作動する感電防止用漏電しや断装置を接続しなければならない

 (略)

(適用除外)

第334条 前条の規定は、次の各号のいずれかに該当する電動機械器具については、適用しない。

 (略)

 絶縁台の上で使用する電動機械器具

 (略)

(2)違反とはならない。安衛則第332条は、交流アーク溶接等の作業を行うときの「交流アーク溶接機用自動電撃防止装置」の使用について定めているが、自動溶接は除かれているので、本肢は違反となることはない。

【労働安全衛生規則】

(交流アーク溶接機用自動電撃防止装置)

第332条 事業者は、船舶の二重底若しくはピークタンクの内部、ボイラーの胴若しくはドームの内部等導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ又は墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある高さが二メートル以上の場所で鉄骨等導電性の高い接地物に労働者が接触するおそれがあるところにおいて、交流アーク溶接等(自動溶接を除く。)の作業を行うときは、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置を使用しなければならない。

(3)違反とはならない。安衛則第36条第4号は、直流にあっては750V以下、交流にあっては600V以下を低圧と定義しているので、本肢が200Vを低圧としていることは正しい。そして、低圧の充電電路に近接する場所で電路での支持物の塗装の作業を行う場合に、作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することによる感電の危険があるときは、安衛則第347条本文により、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならないが、絶縁用保護具の使用は義務付けられていない。従って、本肢は法違反とはならない。

なお、同条但書は、充電電路に絶縁用防具を装着しない場合についての規定であり、本肢の場合には関係がない。

【労働安全衛生規則】

(低圧活線近接作業)

第347条 事業者は、低圧の充電電路に近接する場所で電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が当該充電電路に接触することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触するおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(4)違反とはならない。安衛則第36条第4号は、7,000V以下であって、直流にあっては750ボルトを超え、交流にあっては600Vを超える電圧を高圧と定義しているので、本肢が6,600Vを高圧としていることは正しい。また、本問は活線作業用器具を使用させたとあることから、活線近接作業ではなく、活線作業である。

そして、高圧の充電電路の修理の作業を行うときに、当該作業に従事する労働者に感電の危険があるときは、安衛則第341条は、労働者に活線作業用器具の使用、絶縁用保護具の着用などのいずれかの措置を取らせることを義務付けている。従って、本肢の場合は違反とはならない。

【労働安全衛生規則】

(高圧活線作業)

第341条 事業者は、高圧の充電電路の点検、修理等当該充電電路を取り扱う作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に絶縁用保護具を着用させ、かつ、当該充電電路のうち労働者が現に取り扱っている部分以外の部分が、接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるものに絶縁用防具を装着すること。

 労働者に活線作業用器具を使用させること。

 労働者に活線作業用装置を使用させること。この場合には、労働者が現に取り扱っている充電電路と電位を異にする物に、労働者の身体又は労働者が現に取り扱っている金属製の工具、材料等の導電体(以下「身体等」という。)が接触し、又は接近することによる感電の危険を生じさせてはならない。

 (略)

(高圧活線近接作業)

第342条 事業者は、電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が高圧の充電電路に接触し、又は当該充電電路に対して頭上距離が30センチメートル以内又は躯側距離若しくは足下距離が60センチメートル以内に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、当該充電電路に絶縁用防具を装着しなければならない。ただし、当該作業に従事する労働者に絶縁用保護具を着用させて作業を行なう場合において、当該絶縁用保護具を着用する身体の部分以外の部分が当該充電電路に接触し、又は接近することにより感電の危険が生ずるおそれのないときは、この限りでない。

 (略)

(5)違反となる。本肢は、活線作業なのか、活線近接作業なのか必ずしも明確ではない。ただ、「活線作業用器具」を使用させなかったとしているので、活線作業だと思われる。従って、“特別高圧の充電電路の修理の作業”において感電の危険が生ずるおそれのあるときに、活線作業用器具及び活線作業用装置のいずれも使用させなかったのであるから、本肢は違反となる。

なお、活線近接作業だったとしても、活線作業用装置を使用させなかったのであるから違反になることに違いはない。

【労働安全衛生規則】

(特別高圧活線作業)

第344条 事業者は、特別高圧の充電電路又はその支持がいしの点検、修理、清掃等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない

 労働者に活線作業用器具を使用させること。この場合には、身体等について、次の表の上欄に掲げる充電電路の使用電圧に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる充電電路に対する接近限界距離を保たせなければならない。

充電電路の使用電圧(単位 キロボルト) 充電電路に対する接近限界距離(単位 センチメートル)
二二以下 二〇
二二をこえ三三以下 三〇
三三をこえ六六以下 五〇
六六をこえ七七以下 六〇
七七をこえ一一〇以下 九〇
一一〇をこえ一五四以下 一二〇
一五四をこえ一八七以下 一四〇
一八七をこえ二二〇以下 一六〇
二二〇をこえる場合 二〇〇

 労働者に活線作業用装置を使用させること。この場合には、労働者が現に取り扱っている充電電路若しくはその支持がいしと電位を異にする物に身体等が接触し、又は接近することによる感電の危険を生じさせてはならない。

 (略)

(特別高圧活線近接作業)

第345条 事業者は、電路又はその支持物(特別高圧の充電電路の支持がいしを除く。)の点検、修理、塗装、清掃等の電気工事の作業を行なう場合において、当該作業に従事する労働者が特別高圧の充電電路に接近することにより感電の危険が生ずるおそれのあるときは、次の各号のいずれかに該当する措置を講じなければならない。

 労働者に活線作業用装置を使用させること。

 身体等について、前条第一項第一号に定める充電電路に対する接近限界距離を保たせなければならないこと。この場合には、当該充電電路に対する接近限界距離を保つ見やすい箇所に標識等を設け、又は監視人を置き作業を監視させること。

 (略)

2018年10月28日執筆 2020年01月26日修正 2020年11月20日修正