労働安全コンサルタント試験 2018年 産業安全一般 問14

流量計とその動作原理




問題文
トップ
合格

 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2018年度(平成30年度) 問14 難易度 流量計とその動作原理に関する高度な知識問題である。直接の専門家でなければ正答は難しいだろう。
流量計とその動作原理

問14 流量計とその動作原理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)電磁流量計

磁界の中を導電性流体が流れるときに、流体の密度に比例した起電力が流れの方向と直角方向に発生する。これを計測して体積流量が得られる。

(2)コリオリ式流量計

振動しているU字管の中を流体が流れると、管の入口側と出口側との間で逆方向のコリオリの力が作用し、管がねじられる。コリオリの力は物体の質量と速度に比例するため、管のねじれ角から質量流量が得られる。

(3)差圧式流量計

管路にオリフィス板などの絞り機構を設置し、その上流側と下流側の圧力差と流体の密度をもとに流速を算出して、体積流量が得られる。

(4)超音波式流量計

管路を挟み、上流側と下流側にずらして設置した超音波の送受波器から超音波を発信し、その伝播時間の差から流速、ひいては体積流量が得られる。

(5)渦流量計

流れの中に円柱や角柱(渦発生体)をおくと、そこで発生するカルマン渦の周波数は流速に比例する。発生する渦の数を計測して、体積流量が得られる。

正答(1)

【解説】

(1)誤っている。液体が流れている被測定管等に対して、垂直に磁界を加えると、管内の液体が磁界を横切るので、ファラデーの法則により、液体の平均流速と磁界の磁束密度の積に比例して、電圧が発生する。液体の密度は関係がない。

(2)正しい。コリオリ式流量計は、Gaspard Coriolisの発見した原理を用いていることからこう呼ばれる。

U字管に左側から右側へ重量のある流体を流して、このU字管の“U”字の上の部分を固定して(本管につなげる)下の部分を前後に振動させてみよう。すると、U字管の下部が手前に来たときは、左側の管内では流体が手前に曲げられるので、菅には向こう側への力が働き、右側の管内では流体が向こう側に曲げられるので管には手前側への力が働く。

これによって管がねじれるが、ねじれの大きさは流体の質量流量によることになる。これを利用して質量流量を測定するのがコリオリ式流量計である。

(3)差圧式流量計には、本肢のオリフィスのみならず、ベンチュリ、フローノズル、ピトー管などがある。航空機では、対気速度を測定するためにピトー管が用いられている。いずれもベルヌーイの定理を利用した測定装置である。

オリフィス流量計は、測定を行う流体が流れている管内にオリフィスと呼ばれる絞り機構を設けて、その前後の圧力差を調べることにより流体の速度を調べるものである。

なお、オリフィス流量計は、前後にある程度の長さの直管が必要で、またオリフィス部の圧力損失も大きい。ベンチュリやVコーンを用いるとこの問題はかなりの程度に解消できる。

(4)正しい。流体の流れる管路の反対側に超音波の発信と受診のできる素子をセットしておく、この2つの素子は上流側と下流側にずらして設置する。

管内の流体の速度がゼロであれば、この素子の一方が超音波を発信してからもう一方が受信するまでの時間は、どちらが発信した場合でも同じはずである。ところが流体が流れていると、上流側の素子が発信してから下流側の素子が受信するまでの時間は、流体の流れに乗る分だけ早くなり、逆に下流から上流への信号の到達は流れに逆らう分だけ遅くなるはずである。

この原理を利用したのが超音波式流量計である。質量流量ではなく単純な流速が測定される。

(5)正しい。川の流れの中に、大きな石があって水面に突き出していると、その後ろに渦ができていることがある。流体中の物体によって、下流に交互に並んだ規則正しい渦列が発生することが、テオドール・フォン・カルマンによって解明されたため、この渦をカルマン渦と呼ぶ。

このカルマン渦の渦周波数は、流れの速さに比例し、渦発生体の幅に反比例する。そのため渦の数を測定すれば流れの速さが分かることになる。

2018年10月27日執筆 2020年02月09日修正