労働安全コンサルタント試験 2017年 産業安全一般 問22

建設工事に使用される設備や施工方法




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問22 難易度 建設工事の設備等に関する知識問題ではあるが、常識で正答できる。正答できなければならない。
建設工事の設備・施工

問22 建設工事に使用される設備や施工方法に関する次の記述のうち、安全上、適切でないものはどれか。

(1)中層の鉄筋コンクリート造建築物の地上部分の解体工事において、圧砕機を地上に据えてビル全体を解体する方法では、通常、上階から下階に向かって解体するが、建築物全体としては、先に中央部分を解体し、外周部分については控え壁を同時に残す等の方法により、自立安定性を確保しながら最後に解体する。

(2)手すり先行工法では、建設工事において、足場の組立ての作業を行うに当たり、労働者が足場の作業床に乗る前に、作業床の端となる箇所に適切な手すりを先行して設置する。

(3)鉄骨造建築物の建方工事に安全ネットを使用する場合、作業箇所からネットまでの高さやネット下方のあきに関係なく墜落阻止効果が得られるようにするため、その取付けに際しては、緊張器等を用いて強く張ることによりネットの垂れをできるだけ小さくする。

(4)小規模の溝掘削作業において採用されている土止め先行工法の一つである建込み方式軽量鋼矢板工法は、掘削深さが比較的浅く、自立性の高い地山に適している。

(5)支柱式足場の壁つなぎは、できるだけ足場の支柱と水平材の交点付近に設けるのが効果的であり、枠組足場では建枠の横架材付近の脚柱に、単管足場では布との交差部付近の建地に設ける。

正答(3)

【解説】

(1)適切である。建築物の解体工事においては、騒音、粉塵、落下物対策等を考慮し、建築物の外壁を最後に残し、内側から解体する工法が一般に推奨、実施されている。本肢のような、中層の鉄筋コンクリート造建築物の地上部分の解体工事において、圧砕機を地上に置いて解体を行う場合には、基本的な流れは次のようになろう。従って、本肢は適切ではないとは言えない。

① 屋根部圧砕解体

② 中抜き解体(外壁を残した中央部の解体)

③ 上階の外壁解体

④ 下階の外壁解体

なお、国土交通省の「建築物の解体工事における外壁の崩落等による事故防止対策について」によれば「都市部における中高層建築物は、外周部が外側に張 り出していて重心が外側にかかっているケースや、構造的に自立しないカーテンウォール等が用いられるケースが多いことから、建築物の内側から解体する場合は、残された外周部が外側に崩落しないよう、その構造的な安定に十分考慮する必要がある」とされている。そのため、やや解答に迷う選択肢である。

(2)適切である。「手すり先行工法等に関するガイドライン」(平成21年4月24日基発第0424001号)によれば、手すり先行工法とは「建設工事において、足場の組立て等の作業を行うに当たり、労働者が足場の作業床に乗る前に、・・・(中略)・・・当該作業床の端となる箇所に適切な手すりを先行して設置し、かつ、最上層の作業床を取りはずすときは、当該作業床の端の手すりを残置して行う工法をいう」とされている。

(3)適切ではない。「緊張器」は親綱などを張るときに用いるものである。安全ネットを強く張ると、かえって危ないので緩く垂らすように張る。従って、本肢は適切ではない。

なお、「墜落による危険を防止するためのネットの構造等の安全基準に関する技術上の指針」に、ネットの垂れは一定の値以下とすることが定められているため、本肢は正しいのではないかと誤解された受験生もおられたようだ。しかし、指針は「強く張る」ことまでは求めていない。垂れを一定の値以下とするのは、あまりゆるいと落下体が地面にあたる場合があるからである。

(4)適切である。建込み方式軽量鋼矢板工法とは、「掘削した地山が自立することを前提とした工法であり、その手順は、一定の深さまで掘削機械により溝掘削を行い、軽量鋼矢板を建て込んだ後、所定の深さまで押し込み、地上から専用の治具を使用して最上段の腹おこし及び切りばりを設置して土止め支保工を組み立てる方式である。2段目以降の腹おこし及び切りばりの設置は、専用の作業台を使用して行う」工法である(平成15年12月17日基発第1217001号「土止め先行工法に関するガイドライン」)。

そのため本肢にいうような、掘削深さが比較的浅く、自立性の高い地山において行われる。

(5)適切である。足場の壁つなぎについては、安衛則第570条第1項第5号に間隔(ピッチ)のみが定められているが、この間隔内で本肢のように取り付けるのが普通である。

2018年10月27日執筆 2020年04月09日修正