労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全関係法令 問05

土石流に対する建設工事業者の措置




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 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問05 難易度 土石流による労働災害防止に関する基本的な知識問題。やや難問だが正答しておきたい。
土石流に対する措置

問5 降雨、融雪又は地震に伴い土石流が発生するおそれのある河川において建設工事の作業を行うとき、労働災害を防止するために事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)あらかじめ定めるべき土石流による労働災害の防止に関する規程においては、降雨又は融雪があった場合及び地震が発生した場合に講ずる措置について示さなければならない。

(2)土石流が発生したときに備えるため、関係労働者に対し、工事開始後遅滞なく1回、及びその後6か月以内ごとに1回、避難の訓練を行わなければならない。

(3)土石流の発生を早期に把握するための土石流検知機器を設置するとともに、当該機器について、1か月以内ごとに1回、定期に、自主検査を行わなければならない。

(4)土石流が発生した場合に関係労働者にこれを速やかに知らせるためのサイレン、非常ベル等の警報用の設備を設けなければならない。

(5)土石流が発生した場合に労働者を安全に避難させるための登り桟橋、はしご等の避難用の設備を設けなければならない。

正答(3)

【解説】

本問は、いわゆる条文問題である。かなり細かいことを聞いているという印象を受ける。

(1)正しい。安衛法令の土石流に関する規定は、安衛則の第2編第12章に定められている。土石流による労働災害防止についての規定は、同規則第575条の10に次のように定められている。

【労働安全衛生規則】

(土石流による労働災害の防止に関する規程)

第575条の10 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、あらかじめ、土石流による労働災害の防止に関する規程を定めなければならない。

 前項の規程は、次の事項が示されているものでなければならない。

 (略)

 降雨又は融雪があつた場合及び地震が発生した場合に講ずる措置

 (以下略)

(2)正しい。土石流発生時のための避難の訓練についての規定は、安衛則第575条の16に次のように定められている。

【労働安全衛生規則】

(避難の訓練)

第575条の16 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、土石流が発生したときに備えるため、関係労働者に対し、工事開始後遅滞なく一回、及びその後六月以内ごとに一回、避難の訓練を行わなければならない。

(3)誤り。このような規定はない。土石流の発生を把握するための措置としては、安衛則第575条の12に次のように定められている。要は、降雨によって土石流の発生を予測し、予測したときは監視人を配置する等により、実際の発生を把握するということである。

【労働安全衛生規則】

(降雨時の措置)

第575条の12 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行う場合において、降雨があったことにより土石流が発生するおそれのあるときは、監視人の配置等土石流の発生を早期に把握するための措置を講じなければならない。ただし、速やかに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させたときは、この限りでない。

なお、平成10年3月23日基発第120号「土石流による労働災害防止のためのガイドライン」によれば、土石流の発生の把握のための方法は、監視人の配置か検知機器の設置のいずれかでよいとされており、本条の「監視人の配置等」の「等」には、ワイヤーや柵などの破壊によって土石流を検出する検知機器の設置が含まれるようである。

いずれにせよ、検知機器は監視人の配置に代替し得る物であって、必ず設置しなければならないものではないし、定期自主検査が法的に義務付けられているわけでもない。なお、コンサルタント試験に合格した後の実務においては、ガイドラインで点検を行うこととされていることに留意する必要がある。

(4)正しい。土石流発生時に労働者に警報を出すための設備についての規定は、安衛則第575条の14に次のように定められている。

【労働安全衛生規則】

(警報用の設備)

第575条の14 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、土石流が発生した場合に関係労働者にこれを速やかに知らせるためのサイレン、非常ベル等の警報用の設備を設け、関係労働者に対し、その設置場所を周知させなければならない。

(5)正しい。土石流発生時に労働者を避難させるための設備についての規定は、安衛則第575条の15に次のように定められている。

【労働安全衛生規則】

(避難用の設備)

第575条の15 事業者は、土石流危険河川において建設工事の作業を行うときは、土石流が発生した場合に労働者を安全に避難させるための登り桟橋、はしご等の避難用の設備を適当な箇所に設け、関係労働者に対し、その設置場所及び使用方法を周知させなければならない。

2017年12月24日執筆 2020年05月09日修正