労働安全コンサルタント試験 2015年 産業安全一般 問10

人間の心理特性




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問10 難易度 人間の心理特性に関する知識問題である。常識で考えれば正答できるレベルだろう。
人間の心理特性

問10 人間の心理特性に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)人間には、自ら危険なことをするリスクテイキングという特性がある。

(2)リスクには、自発的リスクと非自発的リスクがあり、後者の方が前者よりリスクの受容度が大きい。

(3)複雑化した現代では、安全であるといわれても安心できないという気持ちになることも少なくない。

(4)大事故に巻き込まれた場合に、頭の中が真っ白になって、身も心も凍り付くことがある。

(5)パニックには、合理性を欠いた心理状態で起こる集団的な逃走行動もある。

正答(2)

【解説】

(1)適切である。リスクテイキングとは、リスクを承知で自らリスクのある行動をとることである。近年の労働災害防止理論では、重要な概念である。

(2)適切ではない。リスクには、「自発的リスクと非自発的リスクがある」としていることは正しい。しかし、前者は後者より受容度が大きく、逆になっている。自ら選ぶリスク(登山やスカイダイビングなどのリスク)は、自ら望んだわけではないリスク(労働災害、薬害、公害などのリスク)よりも受容のレベルは大きくなる。

(3)適切である。文部科学省の「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会 報告書」によれば、“安全”とは「人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されること」とされ、“安心”とは「人が知識・経験を通じて予測している状況と大きく異なる状況にならないと信じていること、自分が予想していないことは起きないと信じ何かあったとしても受容できると信じていること」などといった見方が挙げられている。この2者は異なる概念であり、安全と言われても安心できないことはあり得る。

(4)適切である。橋本の意識レベルの5段階説では、意識レベルを“フェーズ0”から“フェーズⅣ”に分類している。このうち“フェーズⅣ”とは、過度な緊張状態であり、パニック状態となって適切な行動がとれなくなっている状況を表している。

(5)適切である。パニックとは、スメルサー(N.Smelser)によれば、「ヒステリー的信念に基づく集合的な逃走」とされる。なお、ここにいう「ヒステリー」とは一般の用語としての「ヒステリー」とは全く異なる概念である。一方、ブラウン(R.W.Brown)は「感情的で非合理的な逃走反応」とする。

また、サトウの講演録「うわさとパニック」によれば「突然発生した予期しない恐怖で、抵抗不可能なものであり、多くの人々が同時にそれに影響される状態で多くの場合逃走や混乱が見られる」とされている。本肢は適切でないとまではいえない。

2018年10月27日執筆 2020年05月10日修正