労働安全コンサルタント試験 2013年 産業安全一般 問01

安全管理組織(ライン型とスタッフ型)




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合格

 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問01 難易度 安全衛生管理体制に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
安全管理体制

問1 安全管理組織は、安全担当者をどこに配置して安全管理を行うかによって、ライン型、スタッフ型及びライン・スタッフ型に分けられるが、これらの型に関する次の記述のうち適切でないものはどれか。

(1)ライン型は、安全担当者を生産ラインに配置して、安全の計画から実施に至るまでをすべて生産ラインを通じて行うものである。

(2)ライン型は、小規模事業場に適しており、指示や措置が徹底しやすく、これらの実施も早い。

(3)スタッフ型は、安全業務を専ら管掌するスタッフ部門に安全担当者を配置し、そこが安全の計画、調査、検討、勧告、報告等を行うものである。

(4)スタッフ型は、安全活動が生産と遊離するおそれがなく、生産技術の進歩発展に即応した安全対策を取りやすい。

(5)ライン・スタッフ型は、安全業務を専ら管掌するスタッフ部門に安全担当者を配置するとともに、生産ラインにも兼任や専任の安全担当者を配置して、安全対策はスタッフ部門が企画し、これをラインを通じて実施するものである。

正答(4)

【解説】

ライン型とスタッフ型については、2015年産業安全一般問1の解説を参照して頂きたい。

(1)正しい。現実のライン型の管理体制ではここまで極端なものはないだろうが、理念としての「ライン型」は、安全担当者を生産ラインに配置して、安全の計画から実施に至るまでをすべて生産ラインを通じて行うものである。

なお、ここにいう「生産ライン」とは、本来業務(※)の指揮系統のラインのことを指す概念である。「製造ライン」ではないので誤解しないように。

※ 厳密に言えば「生産」だけではない。商業や運送業でも、ライン型はあり得る。その意味で、本問はやや厳格性を欠く。

(2)正しい。小規模事業場は、専門のスタッフを確保することが困難であり、ライン型しか実現できない面がある。一方、この型では「指揮系統ライン」の各級管理者が安全を担当するので、指示や措置が徹底しやすく、これらの実施も早くなる傾向がある。

(3)正しい。スタッフ型は、安全業務を管掌するスタッフ部門(※)に安全担当者を配置し、そこが安全の計画、調査、検討、勧告、報告等を行うものである。

※ 厳密に言えば、この部門が安全業務を管掌していればよく、「専ら管掌する」必要はない。その意味では、本肢はやや正確性に欠ける。

(4)誤り。スタッフ型は、本来の業務の指揮系統(ライン)から外れた専門スタッフが担当するので、安全活動が生産と遊離するおそれがあるとされている(※)

※ コンサルタント試験合格後の実務において、現場の実態を知らなければ的確な仕事はできない。また、現場の意識から遊離して理想論を振り回したのでは、現場が面従腹背するだけで、効果的な安全対策は望めない。

ただ、現場の実態を認めてしまい、「安全の理想から遊離」することがあってはならないだろう。その意味で、現場の意識から多少は遊離している方が、かえって安全対策にとって好ましい面がないわけではない。

しかし、スタッフの意欲と能力によっては、かえってライン型よりも生産技術の進歩発展に即応した安全対策を取りやすい面があることは否定できない。ライン型は、本来業務の専門家や業務管理の専門家が就くことが多く、生産技術の進歩発展に即応した安全対策についての知識を得ることが困難な面がある。

(5)正しい。(図式的に言えば)ライン・スタッフ型は、安全業務を専ら管掌するスタッフ部門に安全担当者を配置するとともに、生産ラインにも兼任や専任の安全担当者を配置して、安全対策はスタッフ部門が企画し、これをラインを通じて実施するものである。

2021年01月24日執筆