労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全関係法令 問15

労働安全衛生法一般




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問15 難易度 安衛法全般についての基本的な内容の問題である。正答しておきたいところではある。
安衛法一般

問15 常時300人の労働者を使用し、産業用ロボットを10台、動力プレスを10台及びフォークリフトを3台有する金属製品製造業の事業場から、労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を実施した結果、事業場の状況は次のとおりであった。このうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)安仝委員会の議事の概要については、労働者に書面を交付してはいなかったが、開催の都度、常時各作業場の見やすい場所に遅滞なく掲示していた。

(2)工場内では、この事業場の労働者と関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われており、混在作業による労働災害防止のため、作業間の連絡調整は行われていたが、その作業場所の毎作業日の巡視は行われていなかった。

(3)産業用ロボットの可動範囲内において当該ロボットに教示等の作業を行うとき、当該ロボットの駆動源を遮断し、作業を行っている間当該ロボットの起動スイッチに作業中である旨を表示し作業を行っていたが、産業用ロボットの操作の方法及び手順等についての規程は定めていなかった。

(4)フォークリフトを用いて行う荷役運搬作業においては、作業計画は定められていなかったが、十分な経験を有する者のなかから作業指揮者が定められ、その者の指揮により作業が行われていた。

(5)動カプレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に従事する労働者に対しては特別教育を実施していたが、動カプレスを用いた加工の業務に従事する労働者に対しては特別教育を実施していなかった。

正答(4)

【解説】

(1)違反とはならない。安仝委員会の議事の概要については、安衛則第23条第3項の規定により、開催の都度遅滞なく、労働者に書面を交付するか、常時各作業場の見やすい場所に掲示すればよい。

【労働安全衛生規則】

(委員会の会議)

第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。

 (略)

 事業者は、委員会の開催の都度、遅滞なく、委員会における議事の概要を次に掲げるいずれかの方法によつて労働者に周知させなければならない。

 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

 書面を労働者に交付すること。

 (略)

4及び5 (略)

(2)違反とはならない。特定元方事業者とは、安衛法第15条第1項(及び安衛令第7条)により、建設業と造船業の元方事業者である。本肢の事業者は製造業の事業者であり、安衛法第30条の2第1項の元方事業者に該当する。

特定元方事業者に適用される作業間の連絡及び調整の義務(安衛則第636条)及び作業場所の巡視の義務(安衛則第637条)のうち、前者については第643条の2により安衛法第30条の2第1項の元方事業者も適用される。しかし、後者を、安衛法第30条の2第1項の元方事業者に適用するとする条文はない。

【労働安全衛生法】

(統括安全衛生責任者)

第15条 (前略)建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)(後略)

2~5 (略)

第30条の2 製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 法第十五条第一項の政令で定める業種は、造船業とする。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(作業間の連絡及び調整)

第636条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第二号の作業間の連絡及び調整については、随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整を行なわなければならない。

(作業場所の巡視)

第637条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なくとも一回、これを行なわなければならない。

 (略)

(作業間の連絡及び調整)

第643条の2 第六百三十六条の規定は、法第三十条の二第一項の元方事業者(次条から第六百四十三条の六までにおいて「元方事業者」という。)について準用する。この場合において、第六百三十六条中「第三十条第一項第二号」とあるのは、「第三十条の二第一項」と読み替えるものとする。

(3)違反とはならない。産業用ロボットの可動範囲内において当該ロボットに教示等の作業を行うとき、安衛則第150条の3但書きにより、当該ロボットの駆動源を遮断していれば、産業用ロボットの操作の方法及び手順等についての規程は定めていなくとも違反とはならない。

なお、作業を行っている間当該ロボットの起動スイッチに作業中である旨を表示し作業を行っていたことは違反となりようがない。(同衛則第150条の3(第三号)参照)

【労働安全衛生規則】

(教示等)

第150条の3 事業者は、産業用ロボツトの可動範囲内において当該産業用ロボツトについて教示等の作業を行うときは、当該産業用ロボツトの不意の作動による危険又は当該産業用ロボツトの誤操作による危険を防止するため、次の措置を講じなければならない。ただし、第一号及び第二号の措置については、産業用ロボツトの駆動源を遮断して作業を行うときは、この限りでない。

 次の事項について規程を定め、これにより作業を行わせること。

イ~ヘ (略)

 (略)

 作業を行つている間産業用ロボツトの起動スイツチ等に作業中である旨を表示する等作業に従事している労働者以外の者が当該起動スイツチ等を操作することを防止するための措置を講ずること。

(4)違反となる。フォークリフトは安衛則第151条の2により車両系荷役運搬機械等に該当する。車両系荷役運搬機械等を用いて行う作業においては、作業計画と作業指揮者は別個の条文によって義務付けられており、作業指揮者を選任すれば作業計画を定めなくともよいということにはなっていない。

【労働安全衛生規則】

(定義)

第151条の2 この省令において車両系荷役運搬機械等とは、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 フオークリフト

二~七 (略)

(作業計画)

第151条の3 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業(不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く。以下第百五十一条の七までにおいて同じ。)を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の広さ及び地形、当該車両系荷役運搬機械等の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。

2~3 (略)

(作業指揮者)

第151条の4 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。

(5)違反とはならない。安衛法第59条第3項の特別教育の対象は、安衛則第36条に定められている。動カプレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に従事する労働者は対象となっているが、動カプレスを用いた加工の業務に従事する労働者は対象とされていない。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

 (略)

 動力により駆動されるプレス機械(以下「動力プレス」という。)の金型、シヤーの刃部又はプレス機械若しくはシヤーの安全装置若しくは安全囲いの取付け、取外し又は調整の業務

三~四十一 (略)

2021年12月03日執筆

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