労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全関係法令 問01

安全管理体制




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 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問01 難易度 安全衛生管理体制は基本中の基本。やや詳細な内容の肢もあるが、本問は正答できる必要がある。
安全管理体制

問1 安全管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)事業者は、安全衛生推進者を選任したときは、当該安全衛生推進者の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

(2)事業者は、安全衛生推進者に安全に関する措置を実施する権限を与えなければならない。

(3)労働基準監督署長は、労働災害が発生した場合において、その再発を防止するために必要があると認めるときは、当該労働災害に係る事業者に対し、当該労働災害が発生した事業場の安全管理者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう命ずることができる。

(4)総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場の安全委員会の議長は、総括安全衛生管理者以外の者であってはならない。

(5)都道府県労働局長は、必要であると認めるときは、地方労働審議会の議を経て、安全管理者を選任することを要しない2以上の事業場で、同一の地域にあるものについて、共同して安全管理者を選任すべきことを勧告することができる。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。安衛則第12条の4の規定により、事業者は、安全衛生推進者を選任したときは、当該安全衛生推進者の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

なお、同条の根拠となる条文は安衛法第101条ではなく同法第12条の2である。また、安全衛生推進者となっているのは、衛生推進者についても同様の義務を課す趣旨である。

【労働安全衛生法】

(安全衛生推進者等)

第12条の2 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。

【労働安全衛生規則】

(安全衛生推進者等の氏名の周知)

第12条の4 事業者は、安全衛生推進者等を選任したときは、当該安全衛生推進者等の氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

(2)誤り。安衛則には「事業者は、安全衛生推進者に安全に関する措置を実施する権限を与えなければならない」とする規定はない(※)

※ これについては違和感を受けるかもしれない。安衛則には安全管理者、衛生管理者、産業医、元方安全衛生管理者に対して、権限を付与しなければならないとの規定があるからである。

しかし、安全衛生推進者にはそのような規定が設けられていないのである。これは、立法者が安全衛生推進者には権限を付与する必要がないと考えたためである。

この点について、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードの「安全衛生推進者」の項には「安全衛生推進者又は衛生推進者は、安全管理者又は衛生管理者が安全衛生業務の技術的事項を管理する者であるのに対して、安全衛生業務について権限と責任を有する者の指揮を受けて当該業務を担当する者であることとされています」との記述がある。

要は、小規模な事業場の場合は、事業場のトップ又はそれに準じる者が権限を持っていればよく、安全衛生推進者はその指揮命令に従って働くものという位置付けなのである。このことは、法違反があっても(原則として)安全衛生推進者の責任が追及されるのではなく、指示をしたものの責任が追及されるということを意味している。

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の巡視及び権限の付与)

第6条 (第1項 略)

 事業者は、安全管理者に対し、安全に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。

(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)

第11条 (第1項 略)

 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。

(産業医に対する権限の付与等)

第14条の4 事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。

 (略)

(権限の付与)

第18条の5 事業者は、元方安全衛生管理者に対し、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため必要な措置をなし得る権限を与えなければならない。

(3)誤り。「労働災害が発生した場合において、その再発を防止するために必要があると認めるときは、当該労働災害に係る事業者に対し、当該労働災害が発生した事業場の安全管理者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう命ずることができる」者は、都道府県労働局長であって、労働基準監督署長ではない。

【労働安全衛生法】

(講習の指示)

第99条の2 都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合において、その再発を防止するため必要があると認めるときは、当該労働災害に係る事業者に対し、期間を定めて、当該労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者(次項において「労働災害防止業務従事者」という。)に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができる。

2及び3 (略)

(4)誤り。総括安全衛生管理者を選任しなければならない事業場であっても、安衛法第17条第3項(及び同条第2項(第一号))の規定により、安全委員会の議長は、「総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの又はこれに準ずる者」を選任することができる。

【労働安全衛生法】

(安全委員会)

第17条 (第1項 略)

 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。

 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

二及び三 (略)

 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。

4及び5 (略)

(5)都道府県労働局長が、必要であると認めるときに、地方労働審議会の議を経て、法的に選任することを要しない2以上の事業場で、同一の地域にあるものについて、共同して選任すべきことを勧告することができるのは衛生管理者であって、安全管理者についてこのような規定はない。

【労働安全衛生規則】

(共同の衛生管理者の選任)

第9条 都道府県労働局長は、必要であると認めるときは、地方労働審議会の議を経て、衛生管理者を選任することを要しない二以上の事業場で、同一の地域にあるものについて、共同して衛生管理者を選任すべきことを勧告することができる。

2021年12月02日執筆