労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全一般 問09

機械類の安全距離




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問09 難易度 出題当時の出典の JIS が廃止されたため、意味のない問題となっている。用語等も JIS と異なっている。
機械類の安全距離

問9 機械類の安全性について、危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)安全距離は、人が、身体の一部を、柵を越える等により危険区域に到達させようとすることを仮定して定められる。

(2)柵の上を越えて到達することに対する安全距離は、柵の高さが肩より少し高い場合には、肘を曲げて手が届く扇状の範囲に基づいて定められる。

(3)柵の上を越えて到達することに対する安全距離は、柵の高さが1m未満の場合には、腰を曲げて手が届く扇状の範囲に基づいて定められる。

(4)柵の隙間から到達することに対する安全距離は、柵の隙間越しに、指、手、腕がどこまで到達するかということに基づいて定められる。

(5)開口部から到達することに対する安全距離は、開口部の形状及び寸法により定められる。

正答(3)が出題当時の正答であった。現時点では解なし

【解説】

本問は、廃止されたJIS B 9707:2002「機械類の安全性―危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離」に基づいた問題である。

出題後にJIS B 9707は廃止され、現在では、JIS B 9718:2013「機械類の安全性−危険区域に上肢及び下肢が 到達することを防止するための安全距離」が有効になったため、あまり意味のない問題となっている。

JIS B 9718:2013の考え方については、横井孝志「JIS B 9718 - 危険区域に上肢及び下肢が到達することを防止するための安全距離 -」が参考になる。なお、併せて中央労働災害防止協会「機械安全規格を活用して災害防止を進めるためのガイドブック」も目を通しておくとよい。

(1)正しい。JIS B 9718:2013の4.1.1は「人は,危険区域に到達しようとして保護構造部越しに,又は開口部を通して,無理に危険区域に到達しようとする」との仮定の下で安全距離を定めるとしている。

【JIS B 9718:2013】

(安全委員会)

  上肢及び下肢による接近を防止するための安全距離Sr

4.1 一般要求事項

4.1.1 仮定

  この規格における安全距離Srは,次の仮定の下で得られている。

- 人は,危険区域に到達しようとして保護構造部越しに,又は開口部を通して,無理に危険区域に到達しようとする。

(2)出題当時は正しい肢であった。現在も実質的には正しいとしてよい。JIS B 9718:2013は、「機械類の危険区域にガード等の保護構造物を越えて上肢が到達しないための安全距離」を、危険区域の高さ及び保護構造物の高さに応じた水平安全距離を表の形で示している。

ガード等の保護構造物には柵を含み、水平安全距離は、本肢のような発想から導き出されている。

(3)出題当時は誤りの肢であった。現在は実質的には正しいとしてよい。JIS B 9718:2013については、保護構造物の高さが1メートルの場合、危険区域の高さごとに水平安全距離を定めている。

(4)出題当時は正しい肢であった。現在も実質的には正しいとしてよい。JIS B 9718:2013は、開口部(※)の大きさに対する安全距離が定められているが、これは指先、指、手、腕がどこまで到達するかという観点から定められている。

※ 開口部の径は120mm以下が想定されている。隙間という言葉は使っていないが、隙間と考えれば本肢の通りの発想から水平安全距離が定められている。

(5)正しい。JIS B 9718:2013は、開口部から到達することに対する安全距離は、開口部の形状及び寸法により定められている。

2021年12月13日執筆