労働安全コンサルタント試験 2012年 産業安全一般 問03

小集団活動(日常的な安全衛生活動)




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合格

 このページは、2012年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2012年度(平成24年度) 問03 難易度 日常的な安全衛生活動に関するごく初歩的な知識問題である。現場の経験があれば正答できる。
日常的な安全衛生活動

問3 小集団活動に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)TBM(ツール・ボックス・ミーティング)は、現場で作業開始前などに短時間、その日の仕事の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイントなどを話し合う活動である。

(2)ヒヤリハット活動は、作業中にヒヤリとしたりハッとしたことなどを報告させ、それを危険有害情報として活用する活動である。

(3)指差呼称は、誤操作、誤判断などを防止するのに有効で、作業の要所要所で、対象を腕を伸ばして指差し、自分の確認すべきことを「〇〇ヨシ!」と呼称して確認することである。

(4)危険予知活動は、ヒューマンエラー事故を防止するのに有効で、イラストシートを用いたり現場で作業をしてみせたりしながら、危険要因を抽出し、その対策を決め、実践する活動である。

(5)4S活動は、職場の整理、整とん、清掃、しつけを徹底させる活動で、この整理とは、必要な物をいつでも取りだせるようにすることを意味し、この整頓とは、必要な物と不要な物を分けて不要な物を捨てることを意味する。

正答(5)

【解説】

(1)適切である。TBM(ツール・ボックス・ミーティング)は、現場で作業開始前や昼食後に5~10分程度、その日の仕事の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイントなどを話し合うことである。

現場でツール・ボックスの近くで(又は座って)行うイメージからこの名前がついているとされている。

(2)適切である。「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードのヒヤリハットに「仕事をしていて、もう少しで怪我をするところだったということがあります。このヒヤっとした、あるいはハッとしたことを取り上げ、災害防止に結びつけることが目的で始まったのが、ヒヤリハット活動です」とされている。

(3)適切である。「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードの指差呼称に「KY(危険予知)活動の一環として、作業対象、標識、信号、計器類に指差しを行い、その名称と状態を声に出して確認すること」とされている。

(4)適切であるとしておく。危険予知活動(※)の明確な定義があるわけではないが、「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードの危険予知訓練(KYT)には、「危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法」とされている。ヒューマンエラー事故を防止することを目的としていることは正しい。

※ 広兼道幸他「安全教育における危険予知訓練について」(土木学会論文集 Vol.66 No.1 2010年)によると「ベルギーで行われていたイラストを使った交通安全教育手法にヒントを得て製造業の分野で誕生した手法であり、様々な分野において活用されることになった。1978年に、中央労働災害防止協会は職場の問題を全員参加の話し合いを通じて解決するための手法である問題解決4ラウンド法と結び付け、現状把握・本質追及・対策樹立・目標設定の4つの段階から構成されるKYT基礎4ラウンド法を開発し、全国の企業への紹介を始めた」とされている。

その手法は、イラストシートを用いることが普通であるが、現場で作業をしてみせたりしながら、危険要因を抽出することもある。ただ、その対策を決めることはKYTの範囲であるが、実践することまでは含まれていないと考えられていることが多い。その意味では、やや疑問はあるが、誤りとは言い切れないだろう。

(5)適切ではない。「職場のあんぜんサイト」の安全衛生キーワードの4Sに「整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seiso)、清潔(Seiketsu)を行う事をいいます」とされている。職場の整理、整とん、清掃、しつけを徹底させる活動ではない。

また、整理とは「必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くこと」であり、整頓とは「必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくこと」である。整理と整頓の説明が逆になっている。

2021年12月08日執筆