労働衛生コンサルタント筆記試験(労働衛生一般)直前チェックシート

化学物質の有害性


協議するビジネスパーソン

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、労働衛生教育の対象者、教育内容、実施時期等について解説しています。

 労働衛生コンサルタント試験の筆記試験の直前チェックシートとして作成しました。

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【化学物質の有害性】

出題年 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 重要性
出題数 2 3 1 4 3 2 2 2 1 1 2 3 2

1 出題形式

化学物質の有害性を問う出題は多い。出題形式は次のようなものである。

【化学物質の有害性がらみの出題形式】

  • 変異原性、生殖毒性、発がん性、感作性などの定義を問うもの。
  • 変異原性試験と発がん性試験の関係を問うもの
  • 化学物質による健康障害の機序や、化学物質の生体内運命を問うもの
  • 個々の化学物質名と健康障害の組合せの正誤を問うもの
  • 個々の化学物質名と発がん性の有無を問うもの
  • 石綿の性状、規制、健康影響を問うもの
  • 最近発生した化学物質による職業性疾病について問うもの

2 重要なポイント

以下のポイントを押さえておくこと。

【重要事項】

  • 生殖毒性(reproductive toxicity)とは、雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質及び子の発生に対し悪影響を及ぼす性質である。
  • 変異原性(mutagenicity)とは、細胞の集団又は生物体における突然変異の発生率を増加させる性質をいい、変異原性のある物質の多くは発がん性を有している。
  • 生殖細胞変異原性(germ cell mutagenicity)とは、次世代に受け継がれる可能性のある突然変異を誘発する性質である。
  • 突然変異(mutation)とは、細胞内遺伝物質の量又は構造の恒久的変化である。表現型として認識される径世代的な遺伝的変化、及びその基となるデオキシリボ核酸(DNA)の両方に適用される。
  • 感作性(sensitizing)とは、厚労省の「有害性・GHS関係用語解説」によれば、「個体をある抗原(感作性物質)に対してはじめてばく露することで、その結果として免疫反応により抗体(免疫グロブリン)が体内に形成される。後にその抗原にばく露されると抗体が存在することにより、初回よりはるかに強い免疫反応(アレルギー反応)が生じる。このような反応の生じる素因を体内に形成させるばく露を感作という」とされている。
  • 神経毒性とは、読んで字のごとく神経細胞に作用する毒性のことであり、頭痛、腹痛、手や足のしびれや筋肉の麻痺による歩行困難、重篤になると呼吸困難などの症状が現れる。
  • 特定標的臓器毒性、単回ばく露(specific target organ toxicity,single exposure)とは、単回ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性である。なお、単回ばく露は、可逆的若しくは不可逆的、又は急性若しくは遅発性の機能を損なう可能性がある、すべての重大な健康への影響を含む。
  • 特定標的臓器毒性、反復ばく露(specific target organ toxicity, repeated exposure)とは、反復ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性である。なお、反復ばく露は、可逆的若しくは不可逆的、又は急性若しくは遅発性の機能を損なう可能性がある、全ての重大な健康への影響を含む。
  • 単純窒息性ガスとは、ACGIH では「高濃度で空気中に存在しても、単に窒息性であるだけで、ほかに明らかな生理的作用を呈しないガス」とされている。危険物輸送勧告(UNRTDG)では、「区分 2.2 非引火性・非毒性ガス①窒息性」が「大気中において通常酸素を希釈又は置換するガス」と規定されている。なお、GHS に窒息性ガスの規定はない。

3 発がん性区分

日本産業衛生学会は、ヒトへの発がん性を、第1群、第2群A、第2群Bに分類している。また、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は、ヒトへの発がん性を、A1からA5に分類している。

さらに、次の「各種公的機関の発がん性評価の読み方」にざっと目を通しておくことが望ましい。

各種公的機関の発がん性評価の読み方

なお、日本産業衛生学会が、許容濃度の数値を単純に、毒性の強さの相対的比較の尺度として用いてはならないとしていることも覚えておきたい。

4 個々の化学物質による健康影響

個々の化学物質による健康影響は、何が出題されるか分からないが、過去には次のようなものが出題されている。

表:化学物質とそれによる健康障害(金属)
化学物質 健康障害
マンガン及びその化合物 神経障害、 パーキンソン症候群
クロム及びその化合物 皮膚障害、鼻中隔穿孔
ニッケル及びその化合物 皮膚障害
鉛及びその化合物 造血器障害、腹部の疝痛、伸筋麻痺による垂れ手
ベリリウム及びその化合物 肺がん
金属水銀 手指の震え、精神障害
ヒ素 皮膚がん
表:化学物質とそれによる健康障害(最近の災害事例)
化学物質 健康障害
オルトートルイジン 膀胱がん
1,2-ジクロロプロパン 胆管がん
MOCA 膀胱がん
架橋型アクリル酸系水溶性高分子化合物 肺疾患
表:化学物質とそれによる健康障害(その他)
化学物質 健康障害
ベンジジン 尿路系腫蕩(膀胱がん等)
塩化ビニル 肝臓がん、肝血管肉腫
アスベスト 肺がん
ノルマルヘキサン 多発神経炎
四塩化炭素 肝障害
1-ブロモプロパン 末梢神経障害
2-ブロモプロパン 生殖機能障害
トルエン 中枢神経系抑制
ベンゼン 白血球減少、再生不良性貧血、白血病
メチルセロソルブ 貧血、血球障害
メタノール 視神経障害
シアン化水素 呼吸困難、痙攣
コールタール 皮膚がん

石綿及び有機溶剤に関しては、繰り返し出題されている。主要な事項は押さえておきたい。

【石綿の有害性等】

  • 石綿は、蛇紋岩や角閃石が霜柱状に結晶した繊維状の鉱物で、熱や摩擦などに強く、丈夫で変化しにくい。
  • 石綿には、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)などがある。クロシドライト、アモサイトはクリソタイルに比べてリスクが高い。
  • 石綿が肺組織や胸膜などに長く滞留することが原因となって、肺がんや中皮腫が発生すると考えられている。なお、石綿のばく露作業者が喫煙している場合、肺がんの罹患リスクは増大する。
  • 石綿を含有する製品は、試験研究のために用いられるものを別にすれば、例外的なものを除き新たな製造、使用等は禁止されている。法律違反がない限り、日本で製造等が行われていることはあり得ない。
  • 石綿の分析のための試料の用に供される石綿、石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿等の製造等は禁止されていない。なお、農業では、原料に蛇紋岩を用いた肥料が一般的に使用されているが、これは禁止される石綿製品ではないと考えられている。
  • 作業環境評価基準 別表2によれば、石綿の管理濃度は、5µm 以上の繊維として0.15f/cm3である。
  • 石綿ばく露によって生じる肺がんは、通常の肺がんと比較して、発生部位、病理組織型が異なるわけではない。
  • 肺がんの発症リスクが、石綿にばく露されていない場合の2倍になるのは、石綿25[繊維/ml×年]のばく露量とされている。この量に相当すると判断すべき石綿小体の指標は、以下のとおりである。
  • 乾燥肺重量1g当たりの石綿小体5,000本以上
  • 乾燥肺重量1g当たりの石綿繊維200万本以上(繊維長5μm超)
  • 乾燥肺重量1g当たりの石綿繊維500万本以上(繊維長1μm超)
  • 気管支肺胞洗浄液(BALF)1ml当たりの石綿小体5本以上
  • 肺組織切片中の石綿小体(「肺組織切片中の石綿小体」とは、肺組織の薄切り試料の中に石綿小体が光学顕微鏡で確認された場合をいい、複数の肺組織切片を作製した場合にはそのいずれにも石綿小体が認められる必要がある。)

石綿による健康障害の労災支給決定状況

図をクリックすると拡大します

石綿ばく露による健康障害には、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚がある。これらの労災保険給付の支給決定件数は、グラフのようになっている。

このグラフから分かるようにこれらの疾病の労災保険給付の支給決定件数は、1,000件前後で推移している。

【有機溶剤の有害性等】

  • 一般に有機溶剤の蒸気の比重は空気よりも重い。このため、有機溶剤蒸気のセンサーは、一般的には天井の近くよりも床の近くに設置する方がよいとされている。また、有機溶剤を取り扱う作業場の全体換気装置の排気装置なども、一般論としては天井よりも床に設置する方がよい。
  • 有機溶剤の経気道吸収は、肉体的に激しい労働強度の労働を行うと多くなる。職業暴露限界を定めるときは、経気道吸収は、呼吸量に比例すると考えて算出する。肉体的に激しい労働では、呼吸量が増加するので、経気道吸収の量も増加する。
  • 蒸気圧が低く、脂溶性が高い化学物質は、皮膚からの吸収に注意が必要である。蒸気圧が低い物質は空気中に発散しにくいため、一般的には危険性は低いといってよいが、液体として皮膚に付着すると、蒸発しにくいためかえって経皮吸収のおそれが高くなる。また、脂溶性が高い物質は、皮膚の角層実質を通過しやすく、また体内に蓄積されやすい。このため、そのような物質は、経皮吸収に注意しなければならない。
  • 特別有機溶剤は、すべて特別管理物質であり発がん性がある。
  • 混合有機溶剤から蒸発する蒸気の成分の割合は、必ずしもその有機溶剤の成分の混合割合とは一致しない。
  • 有機溶剤用隔離式防毒マスクは、有機溶剤の空気中の濃度が2%(アンモニアの場合は3%)を超えるおそれがある場合には使用してはならない。

また、「労働基準法施行規則の規定に基づき厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病を定める件」(以下、「職業性疾病大臣リスト」という。)やモデルSDSから出題されている。以下のようなことも過去の出題例があり、押さえておきたいところである。

【個々の化学物質による健康影響】

  • 肺がんを引き起こす物質としては、石綿、クロム酸塩、コールタール、ベンゾトリクロライド、コークス、ビス(クロロメチル)エーテル、ニッケル、砒素、ジアニジシンなどがある。
  • 鉛中毒の、三大症状は、貧血、腹部症状、神経症状である。このうち、腹部症状のひとつに激しい痛み(鉛疝痛)がある。また、神経症状としては、末梢神経の障害で運動神経が障害を受けて腕が垂れる、いわゆる垂れ手が起きる。幽霊絵で、腕を垂らした女性が描かれることがあるが、鉛中毒による垂れ手の女性にヒントを得ているとの説がある。
  • 砒素中毒には急性中毒と慢性中毒があるが、慢性中毒では、とくに皮膚に症状が現れ、角化症、黒皮症などの皮膚障害が発症する。また、ボーエン病、皮膚がん、膀胱がん、肺がんの他、鼻中隔穿孔や末梢神経障害などもみられる。
  • コバルト及びその化合物へのばく露により、感作性皮膚炎やぜん息が生じる。
  • ベリリウム及びその化合物へのばく露により、ベリリウム肺と呼ばれる慢性の症状が生じる。
  • 2-ブロモプロパン(CH3CHBrCH3について、日本産業衛生学会は生殖毒性を第1群に分類しており、その根拠として、2-ブロモプロパンを使用していた電子部品工場の女性労働者に月経停止、男性労働者に精子数減少ないし無精子症が認められたこと等を挙げている。
  • 芳香族化合物のアミノ誘導体のうち、アニリンやジメチルアニリンなどの多くの化学物質がメトヘモグロビン血症を生じさせることが判明している。メトヘモグロビンが多量にできる場合は、赤血球にハインツ小体が出現し、続いて赤血球の破壊亢進、すなわち、溶血性貧血が起こることが多い。
  • 2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(TCDD)は、環境省の「参考資料-2 塩素化ダイオキシン類の毒性について」によると、ダイオキシン類のうち最も毒性が強いとされ、他のダイオキシン類の毒性の基準となる。また、ほ乳類を用いた実験で発がん性が認められている。
  • ジクロロメタンは、金属部品の脱脂洗浄剤などとして使用され、モデルSDSでは、特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)は区分1(中枢神経系、肝臓)となっている。
  • ノルマルヘキサンは、溶剤や接着剤などで使用される。代謝物は尿中の 2,5-ヘキサンジオンである。また、「職業性疾病大臣リスト」において、末梢神経障害が症状又は障害として定められている。
  • N,N-ジメチルホルムアミドは、「職業性疾病大臣リスト」において、ジメチルホルムアミドとされており、本物質にさらされる業務による、特定の症状又は障害を主たる症状又は障害とする疾病(頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状、皮膚障害、前眼部障害、気道障害、肝障害又は胃腸障害)が、症状又は障害として定められている。
  • 二硫化炭素は、レーヨンの製造工程で液剤として使用される。「職業性疾病大臣リスト」では、本物質にさらされる業務による、せん妄、躁うつ等の精神障害、意識障害、末梢神経障害又は網膜変化を伴う脳血管障害若しくは腎障害が、症状又は障害として定められている。
  • フッ化水素の水溶液であるフッ酸は、金属の洗浄、半導体のエッチング等に用いられ、ミストの吸入により眼、鼻、気道に損傷を生じ、肺炎を生じることもある。
2026年08月20日執筆