問3 労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物であって、譲渡し、又は提供する者が、その相手方に対して、文書の交付等の方法により名称、成分及び含有量その他所定の事項を通知しなければならないもの(以下「通知対象物」という。)に関する次のイ~二の記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合ではないものとする。また、ロにおいて、有機溶剤とは、労働安全衛生法施行令別表第6の2に掲げる有機溶剤をいうものとする。
イ 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、その相手方に所定の事項を通知する方法として、当該相手方の承諾を得ることなく、文書の交付に代えて、当該事項が記載されたホームページのアドレス及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達とすることができる。
ロ 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、通知対象物のうち、有機溶剤の成分の含有量の通知を行うときは、重量パーセントの通知を、10 パーセント未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもって行うことができる。
ハ 通知対象物を譲渡し、又は需供する者は、当該通知対象物の人体に及ぼす作用について、直近の確認を行った日から起算して5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づき、変更を行う必要性の有無を確認し、変更を行う必要があると認めるときは、当該確認をした日から1年以内に、当該事項に変更を行わなければならない。
ニ 通知対象物を製造し、又は取り扱う設備(移動式以外のものに限る。)の改造、修理、清掃等で、当該設備の内部に立ち入る作業に係る仕事の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者に限る。)は、当該通知対象物の危険性及び有害性、当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項等所定の事項を記載した文書を作成し、これをその請負人に交付しなければならない。
(1) イ ロ ハ ニ
(2) イ ロ
(3) イ ハ ニ
(4) ロ ニ
(5) ハ

※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更する(号番号等を除く)などの修正を行いました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
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2024年度(令和6年度) | 問03 | 難易度 | 通知対象物に関する改正直後の条文問題。自律的管理の知識の有無で差がつく問題。 |
---|---|---|---|
通知対象物 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問3 労働者に危険又は健康障害を生ずるおそれのある物であって、譲渡し、又は提供する者が、その相手方に対して、文書の交付等の方法により名称、成分及び含有量その他所定の事項を通知しなければならないもの(以下「通知対象物」という。)に関する次のイ~二の記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合ではないものとする。また、ロにおいて、有機溶剤とは、労働安全衛生法施行令別表第6の2に掲げる有機溶剤をいうものとする。
イ 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、その相手方に所定の事項を通知する方法として、当該相手方の承諾を得ることなく、文書の交付に代えて、当該事項が記載されたホームページのアドレス及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達とすることができる。
ロ 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、通知対象物のうち、有機溶剤の成分の含有量の通知を行うときは、重量パーセントの通知を、10 パーセント未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもって行うことができる。
ハ 通知対象物を譲渡し、又は需供する者は、当該通知対象物の人体に及ぼす作用について、直近の確認を行った日から起算して5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づき、変更を行う必要性の有無を確認し、変更を行う必要があると認めるときは、当該確認をした日から1年以内に、当該事項に変更を行わなければならない。
ニ 通知対象物を製造し、又は取り扱う設備(移動式以外のものに限る。)の改造、修理、清掃等で、当該設備の内部に立ち入る作業に係る仕事の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者に限る。)は、当該通知対象物の危険性及び有害性、当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項等所定の事項を記載した文書を作成し、これをその請負人に交付しなければならない。
(1) イ ロ ハ ニ
(2) イ ロ
(3) イ ハ ニ
(4) ロ ニ
(5) ハ
正答(3)
【解説】
本問は、解答が(3)と(4)に分かれた。(3)と(4)の共通の肢は「ニ」だけだが、「ニ」は今回の改正に絡むものではないので、改正の内容を知らなかった受験者が多かったということのようだ。
選択肢のイ~ハは、2022 年5月 31 日に公布され、2024 年4月1日までの間に施行された条文が基礎となっている。化学物質の通知に関するものなので、関連する業務に従事しているか労働衛生の専門家でないと難しかったかもしれない。
なお、詳細は当サイトの「2022年安衛法令改正(ラベル・SDS)」を参照されたい。
イ 正しい。公布と同時に施行された改正安衛則第 34 条の2の3によれば、通知する方法として、必要事項が記載されたホームページのアドレス及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達とすることができるとされている。
従って、相手方の承諾を得る必要はないし、文書の交付を行う必要がないことも当然である。
【労働安全衛生法】
(文書の交付等)
第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第1項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。
一~七 (略)
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
(名称等の通知)
第34条の2の3 法第57条の2第1項及び第2項の厚生労働省令で定める方法は、磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体の交付、ファクシミリ装置を用いた送信若しくは電子メールの送信又は当該事項が記載されたホームページのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達とする。
※ 安衛則第34条の2の3は、自律的管理が公布された 2022 年5月 31 日に施行されているが、それまでは以下のようになっていた。このときまでは、書類以外の方法で通知するには、相手側の承諾が必要だったのである。
(名称等の通知)
第34条の2の3 法第57条の2第1項及び第2項の厚生労働省令で定める方法は、磁気ディスクの交付、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法であつて、その方法により通知することについて相手方が承諾したものとする。
ロ 誤り。(改正された)安衛則第 34 条の2の6第2項は、重量パーセントの通知を 10 パーセント単位で丸めた数値とすることができる対象物を制限しており、有機溶剤などを除いている。
【労働安全衛生法】
(文書の交付等)
第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第一項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。
一~七 (略)
2及び3 (略)
【労働安全衛生法施行令】
別表第六の二 有機溶剤(第六条、第二十一条、第二十二条関係)
一~五十五 (略)
【労働安全衛生規則】
第34条の2の6 法第57条の2第1項第二号の事項のうち、成分の含有量については、令別表第三第一号1から7までに掲げる物及び令別表第九に掲げる物ごとに重量パーセントを通知しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、一・四―ジクロロ―二―ブテン、鉛、一・三―ブタジエン、一・三―プロパンスルトン、硫酸ジエチル、令別表第三に掲げる物、令別表第四第六号に規定する鉛化合物、令別表第五第一号に規定する四アルキル鉛及び令別表第六の二に掲げる物以外の物であつて、当該物の成分の含有量について重量パーセントの通知をすることにより、契約又は交渉に関し、事業者の財産上の利益を不当に害するおそれがあるものについては、その旨を明らかにした上で、重量パーセントの通知を、10パーセント未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもつて行うことができる。この場合において、当該物を譲渡し、又は提供する相手方の事業者の求めがあるときは、成分の含有量に係る秘密が保全されることを条件に、当該相手方の事業場におけるリスクアセスメントの実施に必要な範囲内において、当該物の成分の含有量について、より詳細な内容を通知しなければならない。
※ 安衛則第34条の2の6は、2024 年4月1日に改正施行されているが、それまでは以下のようになっていた。このときまでは有機溶剤を含めて 10 パーセント単位で数値を丸めることができたのである。
第34条の2の6 法第57条の2第1項第二号の事項のうち、成分の含有量については、令別表第三第一号1から7までに掲げる物及び令別表第九に掲げる物ごとに重量パーセントを通知しなければならない。この場合における重量パーセントの通知は、10パーセント未満の端数を切り捨てた数値と当該端数を切り上げた数値との範囲をもつて行うことができる。
ハ 正しい。(改正された)安衛則第 34 条の2の5第2項によれば、通知対象物を譲渡し、又は需供する者は、当該通知対象物の人体に及ぼす作用について、直近の確認を行った日から起算して5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づき、変更を行う必要性の有無を確認し、変更を行う必要があると認めるときは、その確認をした日から1年以内に、その事項の変更を行わなければならない。
【労働安全衛生法】
(文書の交付等)
第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第1項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。
一~七 (略)
2及び3 (略)
【労働安全衛生規則】
第34条の2の5 (第1項 略)
2 法第57条の2第1項の通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、同項第四号の事項について、直近の確認を行つた日から起算して5年以内ごとに1回、最新の科学的知見に基づき、変更を行う必要性の有無を確認し、変更を行う必要があると認めるときは、当該確認をした日から1年以内に、当該事項に変更を行わなければならない。
3 (略)
※ 安衛則第 34 条の2の5は、2023 年4月1日に第2項及び第3項が追加されている。
ニ 正しい。本肢だけは、化学物質の自律的管理の導入のための法令改正とは無関係であり、2005 年に公布された改正で盛り込まれた条文である。安衛則第 662 条の3及び第 662 条の4により、通知対象物を製造し、又は取り扱う設備(移動式以外のものに限る。)の改造、修理、清掃等で、当該設備の内部に立ち入る作業に係る仕事の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者に限る。)は、その通知対象物の危険性及び有害性、当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項等所定の事項を記載した文書を作成し、これをその請負人に交付しなければならない。
【労働安全衛生法】
第31条の2 化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める作業に係る仕事の注文者は、当該物について、当該仕事に係る請負人の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
【労働安全衛生規則】
(法第三十一条の二の厚生労働省令で定める作業)
第662条の3 法第31条の2の厚生労働省令で定める作業は、同条に規定する設備の改造、修理、清掃等で、当該設備を分解する作業又は当該設備の内部に立ち入る作業とする。
(文書の交付等)
第662条の4 法第31条の2の注文者(その仕事を他の者から請け負わないで注文している者に限る。)は、次の事項を記載した文書(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項において同じ。)を作成し、これをその請負人に交付しなければならない。
一 法第31条の2に規定する物の危険性及び有害性
二 当該仕事の作業において注意すべき安全又は衛生に関する事項
三 当該仕事の作業について講じた安全又は衛生を確保するための措置
四 当該物の流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
2及び3 (略)