労働衛生コンサルタント試験 2024年 労働衛生一般 問22

化学物質等の有害性等




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2024年度(令和06年度) 問22 難易度 本問の内容は化学物質管理に必要な知識である。口述試験でも出題される。正答できるようにしておきたい。
化学物質の有害性  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問22 化学物質等の有害性等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)変異原性とは、有害要因が細胞の染色体や遺伝子に作用し、損傷したり変化などを起こさせる性質をいい、変異原性のある物質の多くは、発がん性を有している。

(2)生殖細胞変異原性とは、次世代に受け継がれる可能性がある突然変異を誘発する性質である。

(3)日本産業衛生学会及び米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は、ヒトへの発がん性を、グループ1、グループ2A、グループ2B及びグループ3に分類している。

(4)特定標的臓器毒性(単回ばく露)とは、単回ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性である。

(5)生殖毒性とは、雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質及び子の発生に対し悪影響を及ぼす性質である。

正答(3)

【解説】

問22試験結果

試験解答状況
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過去のこの種の問題は、いくつかの肢は、「GHS 分類ガイダンス」の有害性の定義から出題されていることが多い。過去問の解説でよいので、チェックしておくとよいだろう。

なお、現時点の政府向けガイダンスの最新版は「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」(以下「ガイダンス」という。)となっている。

(1)正しい。変異原性とは、有害要因が細胞の染色体や遺伝子に作用し、損傷したり不可逆的な変化などを起こさせる性質をいい、変異原性のある物質の多くは、発がん性を有している。

なお、環境省のWEBサイト「環境用語集」には次のように記されている。

【変異原性】

解説

  化学物質や物理的因子(放射線など)が細胞または細菌の遺伝形質情報を担う DNA や染色体に作用し、形質の不可逆的な変化(突然変異)を誘発させる性質のこと。また、DNA や染色体に作用し、何らかの可逆的な変化を誘発する性質のことを遺伝毒性(genotoxicity)と呼び、より広義の意味で用いられる。

  化学物質の遺伝毒性を調べる試験は、化学物質の発がん性をスクリーニングする検査方法として化学物質の毒性評価に広く利用されている。(2014年8月改訂)

※ 環境省のWEBサイト「環境用語集」の「変異原性」より

(2)正しい。ガイダンスによれば、生殖細胞変異原性とは、「次世代に受け継がれる可能性のある突然変異を誘発する性質」とされている。

【生殖細胞変異原性】

3 健康有害性分類ガイダンス

3.3 健康有害性の分類

3.3.5 生殖細胞変異原性

(1)定義

  分類 JIS では、国連 GHS に基づき以下のとおり定義されている。

3.29.11 生殖細胞変異原性(germ cell mutagenicity)

  次世代に受け継がれる可能性のある突然変異を誘発する性質。

3.29.12 変異原性(mutagenicity)

  細胞の集団又は生物体における突然変異の発生率を増加させる性質。

3.29.13 突然変異(mutation)

  細胞内遺伝物質の量又は構造の恒久的変化。“突然変異”は、表現型として認識される径世代的な遺伝的変化、及びその基となるデオキシリボ核酸(DNA)の両方に適用される。

※ 「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」より

(3)誤り。日本産業衛生学会は、ヒトへの発がん性を、第1群、第2群A、第2群Bに分類している。また、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は、ヒトへの発がん性を、A1からA5に分類している。

これは、口述試験でも定番の問題である。必ず、覚えておく必要がある。

なお、発がん性区分についての詳細は、当サイトの「各種公的機関の発がん性評価の読み方」を参照されたい。

(4)正しい。「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」によれば、「特定標的臓器毒性(単回ばく露)」とは、「単回ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性」とされている。

【生殖細胞変異原性】

3 健康有害性分類ガイダンス

3.3 健康有害性の分類

3.3.8 特定標的臓器毒性(単回ばく露)

(1)定義

  分類 JIS では、国連 GHS に基づき以下のとおり定義されている。

3.29.17 特定標的臓器毒性、単回ばく露(specific target organ toxicity,single exposure)

  単回ばく露によって起こる特定臓器に対する特異的な非致死性の毒性。

  なお、単回ばく露は、可逆的若しくは不可逆的、又は急性若しくは遅発性の機能を損なう可能性がある、すべての重大な健康への影響を含む。

※ 「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」より

(5)正しい。「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」によれば、生殖毒性とは、「雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質及び子の発生に対し悪影響を及ぼす性質」とされている。

【生殖細胞変異原性】

3 健康有害性分類ガイダンス

3.3 健康有害性の分類

3.3.7 生殖毒性

(1)定義

  分類 JIS では、国連 GHS に基づき以下のとおり定義されている。

3.29.16 生殖毒性(reproductive toxicity)

  雌雄の成体の生殖機能及び受精能力に対し悪影響を及ぼす性質の子の発生に対し悪影響を及ぼす性質。

※ 「政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.2))」より