労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2023年 問2

作業態様、負傷に起因する疾病




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

 各小問をクリックすると解説と解答例が表示されます。もう一度クリックするか「閉じる」ボタンで閉じることができます。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行いました。

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 柳川に著作権があることにご留意ください。

2023年度(令和5年度) 問 2 作業態様等に起因する疾病に関する知識問題である。過去問とはやや趣が異なるが、基本的なレベルである。
作業態様等に起因の疾病
2023年10月29日執筆

問2 作業態様や負傷に起因する代表的な疾病として、手根管症候群、手腕振動障害及び腰痛がある。それぞれの疾病に関する以下の設問に答えよ。

  • (1)上肢等に負担のかかる作業態様を四つ挙げよ。

    • 【解説】

      平成9年2月3日基発第65号「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準について」に次の記述がある。本小問は、ここからの出題であろう。
      【上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準について】
      第2 認定要件の運用基準
       「上肢等に負担のかかる作業」とは、次のいずれかに該当する上肢等を過度に使用する必要のある作業をいう。
      (1)上肢の反復動作の多い作業
      (2)上肢を上げた状態で行う作業
      (3)頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
      (4)上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
      2及び3 (略)
      現実には、この通達を知らない方が多いだろうが、同様なことが書かれていれば、加点はされるだろう。
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    • 【解答例】
      上肢等に負担のかかる作業態様としては以下のものがある。
      ○ 上肢の反復動作の多い作業
      ○ 上肢を上げた状態で行う作業
      ○ 頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業
      ○ 上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業
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  • (2)手根管症候群の ① 障害部位と発生機序、② 症状について説明せよ。

    • 【解説】
      手根管しゅこんかんとは、手根骨と横手根靱帯(屈筋支帯)で囲まれた手首にあるトンネルのことである。このトンネルには、正中神経や腱などが通っており、正中神経は指先の感覚や手の運動において重要な役割を果たしている。
      手根管症候群とは、手根管で正中神経が圧迫(障害)されることで、初期には指先のしびれや痛みが発生し、重篤になると手の筋肉の萎縮が起きて運動に支障をきたす疾病である。
      ① 障害部位と発生機序
      障害部位は、親指の内側から薬指の親指側までである。発生機序は様々で、明確に分かっているとは言い難い。
      しかし、職業病の場合は、次の2点だと言ってよい。
      ⓐ 手首の曲げ伸ばしなど手首に負担のかかる動作を繰り返すことで、手根管の中を通る腱を覆う膜などが炎症を起こして腫れることで発症する。
      ⓑ 労働災害による骨折などの怪我が原因となって発症する。
      ② 症状
      横浜労災病院のサイト「手根管症候群について」に次のような記述がある。
      【主な症状】
      主な症状は、母指~環指橈側かんしとうそく(母指側)半分のしびれ感や痛みです。手指全体のしびれ感を訴える方もいますが、小指には感覚障害はありません。初めは中環指のしびれ感を自覚することが多く、夜間や明け方にしびれ感や痛みが増悪し、痛みで目が醒めることもあります。このしびれ感は、手を振ると楽になることもあります(flick sign)。症状が進行すると、母指の付け根の筋肉(母指球筋)の筋力低下が生じ、高度になると痩せ(筋萎縮)が顕著となり、つまみ動作(OKサイン)が困難になります(図右:矢印)。それに伴い、縫い物やボタンかけ、小銭を摘むなどの細かい動作ができにくくなります。
      ※ 横浜労災病院のサイト「手根管症候群について
      ※ 図は略したので、オリジナルのサイトを参照して欲しい。また、一部にルビを振った。なお、橈側とうそくとは、前腕骨の親指側が橈骨とうこつと呼ばれることから、親指側を意味する。また、母指とは親指のことで、環指とは薬指のことである。
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    • 【解答例】
      ① 障害部位と発生機序
      障害部位は、親指の内側から薬指の親指側までである。
      職業病の場合の発生機序としては以下のものがある。
      ⓐ 手首の曲げ伸ばしなど手首に負担のかかる動作を繰り返すことで、手根管の中を通る腱を覆う膜などが炎症を起こして腫れることで発症する。
      ⓑ 労働災害による骨折などの怪我が原因となって発症する。
      ② 症状
      主な症状は、親指の内側から薬指の親指側までのしびれ感や痛みである。初期には薬指のしびれ感を自覚することが多く、夜間や明け方にしびれ感や痛みが増悪する。症状が進行すると、母指の付け根の筋肉の筋力低下が生じ、重篤になると痩せが顕著となり、つまみ動作が困難になる。
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  • (3)手腕振動障害の発生が多い作業とはどのようなものか、具体的な例を挙げて説明せよ。

    • 【解説】
      厚生労働省職場のあんぜんサイト「振動障害」に次のような記述がある。
      1 振動障害とは
      振動障害は、チェーンソー、グラインダー、刈払機などの振動工具の使用により発生する手指等の末梢循環障害、末梢神経障害及び運動器(骨、関節系)障害の3つの障害の総称です。
      振動障害は、手や腕を通して伝播されるいわゆる局所振動による障害のことを指し、足や臀部から伝播される全身振動とは区別されています。具体的な症状は、手指や腕にしびれ、冷え、こわばりなどが間欠的、又は持続的に現れ、さらに、これらの影響が重なり生じてくるレイノー現象(蒼白発作)を特徴的症状としています。
      従来は、林業などチェーンソー取扱い者にレイノー現象などが多く見られていましたが、最近は製造業や建設業などの振動工具取扱い者にも発生しています。
      ※ 厚生労働省職場のあんぜんサイト「振動障害」(安全衛生キーワード)
      これを参考に、解答例のように答えればよいであろう。やや、当たり前すぎて、これで良いのかという気がするかもしれないが、コンサルタント試験の記述問題は基本を押さえることが重要である。
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    • 【解答例】
      手腕振動障害の発生が多い作業としては、従来は、林業などチェーンソー取扱い者に多く見られた。最近は製造業や建設業などの振動工具取扱い者にも発生している。
      なお、振動工具の例としては、ピストンによる打撃機構を有する工具、内燃機関を内蔵する工具(可搬式のもの)、携帯用皮はぎ機等の回転工具、携帯用タイタンパー等の振動体内蔵工具などがある。
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  • (4)手腕振動障害に該当する障害を三つ挙げよ。

    • 【解説】
      昭和52年5月28日基発第307号「振動障害の認定基準について」に次の記述がある。おそらく、本小問の出題者は、この通達の2の(1)が念頭にあって出題したのであろう。
      【振動障害の認定基準について】
      さく岩機、鋲打機、チェンソー等の振動工具を取り扱うことにより身体局所に振動ばく露を受ける業務(以下「振動業務」という。)に従事する労働者に発生した疾病であって、次の1及び2の要件を満たし、療養を要すると認められるものは、労働基準法施行規則別表第1の2第3号3に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
      (中略)
       振動業務に相当期間従事した後に発生した疾病であること。
       次に掲げる要件のいずれかに該当する疾病であること。
      (1)手指、前腕等にしびれ、痛み、冷え、こわばり等の自覚症状が持続的又は間けつ的に現われ、かつ、次のイからハまでに掲げる障害のすべてが認められるか、又はそのいずれかが著明に認められる疾病であること。
       手指、前腕等の末梢循環障害
       手指、前腕等の末梢神経障害
       手指、前腕等の骨、関節、筋肉、腱等の異常による運動機能障害
      (2)レイノー現象の発現が認められた疾病であること。
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    • 【解答例】
      手腕振動障害に該当する障害には以下のものがある。
      ○ 手指、前腕等の末梢循環障害
      ○ 手指、前腕等の末梢神経障害
      ○ 手指、前腕等の骨、関節、筋肉、腱等の異常による運動機能障害
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  • (5)作業態様に起因する腰痛と負傷に起因する腰痛の違いについて説明せよ。

    • 【解説】
      出題の意図が把握しづらい問題である。原因の違いを問うのか、それとも症状等の違いを問うのか、いずれなのだろうか。
      しかし、そもそも作業態様に起因する腰痛のほとんどと負傷に起因する腰痛の双方が、非特異的腰痛の範疇に含まれるだろう。症状や治療法が、この両者で異なるとも思えない。
      一方、原因の違いは、あまりにも当たり前すぎるので、これが求められている解答だとも思えない。
      解答例には常識的なことを書いたが、掲示板やメールフォームからご意見を頂ければと思う。
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    • 【解答例】
      作業態様に起因する腰痛とは、重量物を取り扱う業務等腰部に過度の負担のかかる業務に長期間従事していたために発症する腰痛である。
      臨床医学の場で、個別にその発症経過、自覚症状、他覚的所見から原因を判別することが困難であるという特徴がある。
      これに対し、負傷に起因する腰痛とは、いうまでもなく負傷(急激な力の作用による内部組織の損傷を含む。)に起因して発症する腰痛である。
      何によって痛みが始まったかを特定することが、作業態様に起因する腰痛に比して容易であるという特徴がある。
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  • (6)職場における腰痛の発生が多いとされる作業を五つ挙げよ。

    • 【解説】
      厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」で腰痛の発生が比較的多いとされている5つの作業を答えればよい。
      【職場における腰痛予防対策指針】
       はじめに
        (前略)
        なお、本指針では、一般的な腰痛の予防対策を示した上で、腰痛の発生が比較的多い次に掲げる(1)から(5)までの5つの作業における腰痛の予防対策を別紙に示した。
      (1)重量物取扱い作業
      (2)立ち作業
      (3)座り作業
      (4)福祉・医療分野等における介護・看護作業
      (5)車両運転等の作業
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    • 【解答例】
      職場における腰痛の発生が多いとされる作業には以下のものがある。
      ○ 重量物取扱い作業
      ○ 立ち作業
      ○ 座り作業
      ○ 福祉・医療分野等における介護・看護作業
      ○ 車両運転等の作業
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  • (7)職場における腰痛の発生状況について、業種や作業現場からみた最近の傾向を説明せよ。

    • 【解説】

      業種別腰痛の発生状況の推移

      図をクリックすると拡大します

      負傷に起因する腰痛の発生状況は図の通りである。
      全体の件数は、2012年以降は増加傾向がある。業種的には保健衛生業が最も多く、2012年以降大きく増加して2023年には全体の35%程度を占めている。これに次いで多いのが商業・金融・広告業であり、こちらも2012年以降大きく増加して全体の21%程度を占めている。これに製造業、運輸交通業と続いているが、ともに全体の十数%程度となっている。
      また、作業現場からみた発生状況としては、厚生労働省職場のあんぜんサイト「腰痛予防」に「腰痛は、重量物の取り扱い作業、腰部に過度の負担がかかる立ち作業、座作業、福祉・医療分野における介護・看護、長時間の車両運転等、前屈・ひねり等の有害な姿勢で行う作業、静的な拘束姿勢が多い作業、前進振動・衝撃・動揺を受ける作業等、あらゆる職種で発症しています」とあり、これを要約しておけばよいだろう。
      問題は作業態様に起因する腰痛であるが、これは「業務上疾病発生状況等調査」を見る限りでは、ほとんど発生していない。
      発生年 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
      発生件数 43 50 41 29 29 27 27 33 34 29 31
      ※ 厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」から作成。
      厚生労働省が公表している腰痛の災害発生状況に対する記述も、ほぼすべて負傷に起因する腰痛に関するものである。作業態様に起因する腰痛は記述しなくても減点対象にはならないと思うが、全体の件数だけ記述してもよいだろう。
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    • 【解答例】
      負傷に起因する腰痛については、全体の件数は、2012年以降は増加傾向にある。業種的には保健衛生業が最も多く、2012年以降大きく増加して2023年には全体の35%程度を占めている。これに次いで多いのが商業・金融・広告業であり、こちらも2012年以降大きく増加して全体の21%程度を占めている。これに製造業、運輸交通業と続いているが、ともに全体の十数%程度となっている。
      また、作業現場からみた発生状況としては、重量物の取り扱い作業、腰部に過度の負担がかかる立ち作業、座作業、福祉・医療分野における介護・看護、長時間の車両運転等、前屈・ひねり等の有害な姿勢で行う作業、静的な拘束姿勢が多い作業、前進振動・衝撃・動揺を受ける作業等、あらゆる職種で発症している。
      一方、作業態様に起因する腰痛は、「業務上疾病発生状況等調査」によると、2012年以降、毎年30~50件程度発生しており、2021年以降は減少傾向にある。
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  • (8)職場における腰痛の発生には、動作要因のほかにも ① 環境要因と ② 個人的要因が関係する。各要因について、それぞれ四つずつ具体的な項目を挙げよ。

    • 【解説】
      厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」に次のような記述がある。
      1 はじめに
      腰痛の発生要因には、腰部に動的あるいは静的に過度の負担を加える動作要因、腰部への振動、温度、転倒の原因となる床・階段の状態等の環境要因、年齢、性、体格、筋力、椎間板ヘルニア、骨粗しょう症等の既往症又は基礎疾患の有無等の個人的要因、職場の対人ストレス等に代表される心理・社会的要因がある。
      ※ 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針
      そして、厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説」には、上記の解説として次のように詳細に記述されている。
      【解説】
      「1 はじめに」について
      (1) (略)
      (2)腰痛の発生要因
        腰痛の発生要因は、次のイ~ニのように分類され、動作要因、環境要因、個人的要因のほか、心理・社会的要因も注目されている。職場で労働者が実際に腰痛を発生させたり、その症状を悪化させたりする場面において、単独の要因だけが関与することは希で、いくつかの要因が複合的に関与している。
      イ 動作要因
        動作要因には、主として次のようなものがある。
      (イ)重量物の取扱い
        重量物の持上げや運搬等において強度の負荷を腰部に受けること。
      (ロ)人力による人の抱上げ作業
        介護・看護作業等の人力による人の抱上げ作業において腰部に大きな負荷を受けること。
      (ハ)長時間の静的作業姿勢(拘束姿勢)
        立位、椅座位等の静的作業姿勢を長時間とること。
      (ニ)不自然な姿勢
        前屈(おじぎ姿勢)、ひねり及び後屈ねん転(うっちゃり姿勢)等の不自然な作業姿勢をしばしばとること(ロの環境要因が原因で、こうした姿勢が強いられることもある。)。
      (ホ)急激又は不用意な動作
        物を急に持ち上げるなど急激又は不用意な動作をすること(予期しない負荷が腰部にかかるときに、腰筋等の収縮が遅れるため身体が大きく動揺して腰椎に負担がかかる。)
      ロ 環境要因
        環境要因には、主として次のようなものがある。
      (イ)振動
        車両系建設機械等の操作・運転により腰部と全身に著しく粗大な振動を受けることや、車両運転等により腰部と全身に長時間振動を受けること。
      (ロ)温度等
        寒冷な環境(寒冷反射による血管収縮が生じ、筋肉が緊張することで十分な血流が保たれず、筋収縮及び反射が高まる)や多湿な環境(湿度が高く、汗の発散が妨げられると疲労しやすく、心理的負担も大きくなる。)に身体を置くこと。
      (ハ)床面の状態
        滑りやすい床面、段差等があること(床面、階段でスリップし、又は転倒すると、労働者の腰部に瞬間的に過大な負荷がかかり、腰痛が発生することがある。)。
      (ニ)照明
        暗い場所で作業すること(足元の安全の確認が不十分な状況では転倒や踏み外しのリスクが高まる。)
      (ホ)作業空間・設備の配置
        狭く、乱雑な作業空間、作業台等が不適切な配置となっていること(作業空間が狭く、配置が不適切で整っていないと、不自然な姿勢が強いられたり、それらが原因で転倒するなど、イの動作要因が生じる。)
      (ヘ)勤務条件等
        小休止や十分な仮眠が取りにくい、勤務編成が過重である、施設・設備が上手く使えない、一人で勤務することが多い、就労に必要な教育・訓練を十分に受けていないことなど(強い精神的な緊張度を強いられ、ニの心理・社会的要因が生じる。)。
      ハ 個人的要因
        個人的要因には、主として次のようなものがある。
      (イ)年齢及び性
        年齢差や性差(一般的に、女性は男性よりも筋肉量が少なく体重も軽いことから、作業負担が大きくなる。)。
      (ロ)体格
        体格と、作業台の高さ、作業空間等とが適合していないこと。
      (ハ)筋力等
        握力、腹筋力、バランス能力等(年齢によって変化する。一般的に、女性は男性よりも筋肉量が少ない。)
      (ニ)既往症及び基礎疾患
        椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折等の腰痛の既往症、血管性疾患、婦人科疾患、泌尿器系疾患等の基礎疾患があること。
      ニ 心理・社会的要因
        仕事への満足感や働きがいが得にくい、上司や同僚からの支援不足、職場での対人トラブル、仕事上の相手先や対人サービスの対象者とのトラブル等。また、労働者の能力と適性に応じた職務内容となっておらず、過度な長時間労働、過重な疲労、心理的負荷、責任等が生じている等(ロも影響することがある。)
      (3) (略)
      ※ 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針の解説
      おそらく、本小問の出題者は、これを参考に出題したものであろう。
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    • 【解答例】
      環境要因としては、腰部への振動、寒冷な温度・多湿、転倒の原因となる床・階段の状態、不十分な照明、狭く乱雑な作業空間・設備の配置、小休止が取れない・仮眠が取りにくい等の職無条件等がある。
      個人的要因としては、年齢、性、体格、筋力、椎間板ヘルニア・骨粗しょう症等の既往症又は基礎疾患の有無等がある。
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  • (9)職場における腰痛予防対策における「作業管理」をどのように行うか、具体的な項目を六つ挙げ、それぞれについて説明せよ。なお、労働衛生の三管理のうち「作業管理」以外の管理については記述しないこと。

    • 【解説】
       作業管理については、厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」に次のように詳細に記述されている。
      【職場における腰痛予防対策指針】
      2 作業管理
      (1)自動化、省力化
        腰部に負担のかかる重量物を取り扱う作業、人を抱え上げる作業、不自然な姿勢を伴う作業では、作業の全部又は一部を自動化することが望ましい。それが困難な場合には、負担を減らす台車等の適切な補助機器や道具、介護・看護等においては福祉用具を導入するなどの省力化を行い、労働者の腰部への負担を軽減すること。
      (2)作業姿勢、動作
        労働者に対し、次の事項に留意させること。
       前屈、中腰、ひねり、後屈ねん転等の不自然な姿勢を取らないようにすること。適宜、前屈や中腰姿勢は膝を着いた姿勢に置き換え、ひねりや後屈ねんてんは体ごと向きを変え、正面を向いて作業することで不自然な姿勢を避けるように心がける。また、作業時は、作業対象にできるだけ身体を近づけて作業すること。
       不自然な姿勢を取らざるを得ない場合には、前屈やひねり等の程度をできるだけ小さくし、その頻度と時間を減らすようにすること。また、適宜、台に寄りかかり、壁に手を着き、床に膝を着く等をして身体を支えること。
       作業台や椅子は適切な高さに調節すること。具体的には、立位、椅座位に関わらず、作業台の高さは肘の曲げ角度がおよそ 90 度になる高さとすること。また、椅子座面の高さは、足裏全体が着く高さとすること。
       立位、椅座位等において、同一姿勢を長時間取らないようにすること。具体的には、長時間の立位作業では、片足を乗せておくことのできる足台や立位のまま腰部を乗せておくことのできる座面の高い椅子等を利用し、長時間の座位作業では、適宜、立位姿勢を取るように心がける。
       腰部に負担のかかる動作では、姿勢を整え、かつ、腰部の不意なひねり等の急激な動作を避けること。また、持ち上げる、引く、押す等の動作では、膝を軽く曲げ、呼吸を整え、下腹部に力を入れながら行うこと。
       転倒やすべり等の防止のために、足もとや周囲の安全を確認するとともに、不安定な姿勢や動作は取らないようにすること。また、大きな物や重い物を持っての移動距離は短くし、人力での階段昇降は避け、省力化を図ること。
      (3)作業の実施体制
       作業時間、作業量等の設定に際しては、作業に従事する労働者の数、作業内容、作業時間、取り扱う重量、自動化等の状況、補助機器や道具の有無等が適切に割り当てられているか検討すること。
       特に、腰部に過度の負担のかかる作業では、無理に1人で作業するのではなく、複数人で作業できるようにすること。また、人員配置は、労働者個人の健康状態(腰痛の有無を含む。)、特性(年齢、性別、体格、体力、等)、技能・経験等を考慮して行うこと。健康状態は、例えば、4の(1)の健康診断等により把握すること。
      (4)作業標準
      イ 作業標準の策定
        腰痛の発生要因を排除又は低減できるよう、作業動作、作業姿勢、作業手順、作業時間等について、作業標準を策定すること。
      ロ作業標準の見直し
        作業標準は、個々の労働者の健康状態・特性・技能レベル等を考慮して個別の作業内容に応じたものにしていく必要があるため、定期的に確認し、また新しい機器、設備等を導入した場合にも、その都度見直すこと。
      (5)休憩・作業量、作業の組合せ等
       適宜、休憩時間を設け、その時間には姿勢を変えるようにすること。作業時間中にも、小休止・休息が取れるようにすること。また、横になって安静を保てるよう十分な広さを有し、適切な温度に調節できる休憩設備を設けるよう努めること。
       不自然な姿勢を取らざるを得ない作業や反復作業等を行う場合には、他の作業と組み合わせる等により、当該作業ができるだけ連続しないようにすること。
       夜勤、交代勤務及び不規則勤務にあっては、作業量が昼間時における同一作業の作業量を下回るよう配慮し、適宜、休憩や仮眠が取れるようにすること。
       過労を引き起こすような長時間勤務は避けること。
      (6)靴、服装等
       作業時の靴は、足に適合したものを使用すること。腰部に著しい負担のかかる作業を行う場合には、ハイヒールやサンダルを使用しないこと。
       作業服は、重量物の取扱い動作や適切な姿勢の保持を妨げないよう、伸縮性、保温性、吸湿性のあるものとすること。
       腰部保護ベルトは、個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人毎に効果を確認してから使用の適否を判断すること。
      ※ 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針
      おそらく、本小問の出題者は、これを念頭において出題したものであろう。ただ、作業管理は、腰痛に限らず、労働衛生分野においてある程度定型的なものなので、腰痛対策指針を知らなくても一定のことは書くことができるだろう。その意味で、作業環境管理について出題しなかったのは、出題者のサービスかもしれない。
      一般論としては、作業管理として実施するべきことは、身体への健康影響を低減する作業方法の採用、そのための作業標準の作成、安全衛生教育の実施、保護具の使用、作業時間の削減などがある。これらが挙げてあれば合格点には達するだろう。なお、化学物質取扱いや電離放射線作業における作業管理の重要な項目として、作業者個人への身体影響の測定と対策、立入禁止措置等があるが、腰痛対策では書く必要はないだろう。
      なお、問題文の「労働衛生の三管理のうち「作業管理」以外の管理については記述しないこと」の趣旨であるが、作業管理外のことを書いても加点しないということなのか、書かれていたら減点とするということなのかは分からない。書かない方が無難である。
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    • 【解答例】
      腰痛予防対策における「作業管理」としては、以下の6項目が挙げられる。
      ① 自動化、省力化
      腰部に負担のかかる重量物を取り扱う作業、人を抱え上げる作業、不自然な姿勢を伴う作業では、作業の全部又は一部を自動化する。自動化が困難な場合は、負担を減らす台車等の適切な補助機器や道具、介護・看護等においては福祉用具を導入するなどの省力化を行う。
      ② 作業姿勢、動作
      安全衛生教育等を通して、労働者に対して次の事項に留意させる。
      ア 前屈、中腰、ひねり、後屈ねん転等の不自然な姿勢を取らないようにすること。また、作業時は、作業対象にできるだけ身体を近づけて作業すること。
      イ 不自然な姿勢を取らざるを得ない場合は、不自然な姿勢をできるだけ小さくし、その頻度と時間を減らすようにする。また、適宜、台に寄りかかり、壁に手を着き、床に膝を着く等をして身体を支えること。
      ウ 作業台や椅子は適切な高さに調節すること。
      エ 立位、椅座位等において、同一姿勢を長時間取らないようにすること。
      オ 腰部に負担のかかる動作では、姿勢を整え、かつ、腰部の不意なひねり等の急激な動作を避けること。また、持ち上げる、引く、押す等の動作では、膝を軽く曲げ、呼吸を整え、下腹部に力を入れながら行うこと。
      カ 転倒やすべり等の防止のために、足もとや周囲の安全を確認するとともに、不安定な姿勢や動作は取らないようにすること。また、大きな物や重い物を持っての移動距離は短くし、人力での階段昇降は避け、省力化を図ること。
      ③ 作業の実施体制
      ア 作業時間、作業量等の設定に際しては、作業に従事する労働者の数、作業内容、作業時間、取り扱う重量、自動化等の状況、補助機器や道具の有無等が適切に割り当てられているか検討すること。
      イ 特に、腰部に過度の負担のかかる作業では、無理に1人で作業するのではなく、複数人で作業できるようにすること。また、人員配置は、労働者個人の健康状態(腰痛の有無を含む。)、特性(年齢、性別、体格、体力、等)、技能・経験等を考慮して行うこと。
      ④ 作業標準
      ア 腰痛の発生要因を排除又は低減できるよう、作業動作、作業姿勢、作業手順、作業時間等について、作業標準を策定すること。
      イ 作業標準は、個々の労働者の健康状態・特性・技能レベル等を考慮して個別の作業内容に応じたものにしていく必要があるため、定期的に確認し、また新しい機器、設備等を導入した場合にも、その都度見直すこと。
      ⑤ 休憩・作業量、作業の組合せ等
      ア 適宜、休憩時間を設け、その時間には姿勢を変えるようにすること。作業時間中にも、小休止・休息が取れるようにすること。また、横になって安静を保てるよう十分な広さを有し、適切な温度に調節できる休憩設備を設けるよう努めること。
      イ 不自然な姿勢を取らざるを得ない作業や反復作業等を行う場合には、他の作業と組み合わせる等により、その作業ができるだけ連続しないようにすること。
      ウ 夜勤、交代勤務及び不規則勤務にあっては、作業量が昼間時における同一作業の作業量を下回るよう配慮し、適宜、休憩や仮眠が取れるようにすること。
      エ 過労を引き起こすような長時間勤務は避けること。
      ⑥ 靴、服装等
      ア 作業時の靴は、足に適合したものを使用すること。腰部に著しい負担のかかる作業を行う場合には、ハイヒールやサンダルを使用しないこと。
      イ 作業服は、重量物の取扱い動作や適切な姿勢の保持を妨げないよう、伸縮性、保温性、吸湿性のあるものとすること。
      ウ 腰部保護ベルトは、個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人毎に効果を確認してから使用の適否を判断すること。
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