労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2023年 問1

化学物質のリスクアセスメントと評価




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 このページは、2023年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行いました。

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2023年度(令和5年度) 問 1 化学物質管理の問題だが、従来は制度的な内容が多かったのに対し、実務に直結する内容に遷移している。
化学物質管理
2023年10月27日執筆

問1 我が国には職場の化学物質管理に関する様々な基準値や指標がある。これらに関して以下の設問に答えよ。

  • (1)日本産業衛生学会が勧告する化学物質の許容濃度はどのように定義されているか、時間、労働強度、ばく露濃度及び健康影響のリスクの四つの観点から述べよ。

    • 【解説】

      わが国では、労働者の職業ばく露限界値として、日本産業衛生学会の「許容濃度」と ACGIH の 「TLV」 がよく参照される。作業環境測定結果の評価に用いられる管理濃度も、これらの数値を引き写していることが多い。
      日本産業衛生学会は、許容濃度の勧告(※)の中で許容濃度の定義を示している。この内容に従って解答すれば、合格点はとれるだろう。
      ※ 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2023年度)(産衛誌 2023年 Vol.65)
      【定義】
      許容濃度とは,労働者が1日8時間,週間 40 時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である.曝露時間が短い,あるいは労働強度が弱い場合でも,許容濃度を越える曝露は避けるべきである.なお,曝露濃度とは,呼吸保護具を装着していない状態で,労働者が作業中に吸入するであろう空気中の当該物質の濃度である.労働時間が,作業内容,作業場所,あるいは曝露の程度に従って,いくつかの部分に分割され,それぞれの部分における平均曝露濃度あるいはその推定値がわかっている場合には,それらに時間の重みをかけた平均値をもって,全体の平均曝露濃度あるいはその推定値とすることができる.
      ※ 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2023年度)(産衛誌 2023年 Vol.65)
      この定義から【解答例】のように記述すればよい。
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    • 【解答例】
      許容濃度は、下記の時間、下記の労働強度の下で、下記の濃度でばく露したとしても、下記の影響しか現れないと判断される最大の濃度であると定義されている。
      ○ 時間:1日8時間、週間 40 時間程度
      ○ 労働強度:肉体的に激しくない労働強度
      ○ ばく露濃度:呼吸保護具を装着していない状態で、労働者が作業中に吸入するであろう空気中の当該物質の濃度(作業内容、作業場所、あるいは曝露の程度に従って、いくつかの部分に分割され、それぞれの部分における平均曝露濃度あるいはその推定値がわかっている場合には。それらに時間の重みをかけた平均値をもって、全体の平均曝露濃度あるいはその推定値とすることができる)
      ○ 健康影響のリスク:ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られない
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  • (2)日本産業衛生学会が勧告する最大許容濃度とはどのようなものか説明せよ。また、最大許容濃度が設定される理由を述べよ。

    • 【解説】
      日本産業衛生学会は、(1)で述べた許容濃度の定義に引き続き、最大許容濃度の定義を次のように述べている。
      【定義】
      最大許容濃度とは,作業中のどの時間をとっても曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である.一部の物質の許容濃度を最大許容濃度として勧告する理由は,その物質の毒性が,短時間で発現する刺激,中枢神経抑制等の生体影響を主とするためである.最大許容濃度を超える瞬間的な曝露があるかどうかを判断するための測定は,厳密には非常に困難である.実際には最大曝露濃度を含むと考えられる5分程度までの短時間の測定によって得られる最大の値を考えればよい.
      ※ 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告(2023年度)(産衛誌 2023年 Vol.65)
      この前段の通りに解答すればよいこととなる。
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    • 【解答例】
      最大許容濃度とは、作業中のどの時間をとっても曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である。
      最大許容濃度が設定される理由は、その物質の毒性が、短時間で発現する刺激、中枢神経抑制等の生体影響を主とするためである。
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  • (3)化学物質の許容濃度を比較して、許容濃度の小さい物質は許容濃度の大きい物質より毒性が強いと考えてよいか、その理由とともに述べよ。

    • 【解説】
      日本産業衛生学会は先述した許容濃度の勧告の中で「許容濃度等を決定する場合に考慮された生体影響の種類は物質等によって異なり,ある種のものでは,明瞭な健康障害に,また他のものでは,不快,刺激,中枢神経抑制などの生体影響に根拠が求められている.従って,許容濃度等の数値は,単純に,毒性の強さの相対的比較の尺度として用いてはならない」としている。
      すなわち、許容濃度は労働者に健康上の悪い影響が見られない濃度であり、毒性の強さとはその健康影響の重篤度(※)である。この2つは異なる概念である。
      ※ ただ、「毒性の強さ」とは何を表すのかということになると、明確な基準があるわけではない。nite((独法)製品評価技術基盤機構)の「化学物質のリスク評価について-よりよく理解するために-2」で、「毒性の強い(無毒性量が小さい)化学物質」「毒性の弱い(無毒性量が大きい)化学物質」と記載されている。ここにいう無毒性量と許容濃度は同じ概念ではないが、nite のこのサイトでは無毒性量によって毒性の強弱を評価しているのである。
      また、環境省の「化学物質の毒性試験と生態リスク評価」には、「毒性試験によって算定される,毒性の強さの指標には次のようなものがあります:(a)試験生物の半数が死亡する濃度である半数致死濃度(LC50:50% Lethal Concentration),(b)試験生物の半数に成長,遊泳,繁殖などに影響が出る濃度である半数影響濃度(EC50:50% Effective Concentration),(c)成長などに影響が出る最小の濃度である最小影響濃度(LOEC:Lowest Observed Effect Concentration),(d)試験生物に影響が出ない最大濃度である無影響濃度(NOEC:No Observed Effect Concentration)。半数致死濃度は,複数の異なる濃度の実験条件における試験生物の死亡率を,暴露濃度に対する回帰曲線を当てはめて,致死率が50%となる濃度として算定することができます(図を参照)。半数致死濃度が低いほど,少ない化学物質でも半数の試験生物を死亡させる事になるので,毒性が強いことを意味します」とされている。ここでも、生体影響を与える濃度が、毒性の強さの指標となっているのである。
      このように、「毒性の強さ」の指標を生体影響を与える濃度で表すことは、絶対的な誤りとされているわけではない。同じ種類の毒性であれば、許容濃度の小さい物質は許容濃度の大きい物質より毒性が強いと考えてよいこととなろう。
      解答は、産業衛生学会の記述に従って書けばよいだろう。
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    • 【解答例】
      許容濃度等の数値は、単純に、毒性の強さの相対的比較の尺度として用いてはならない。
      その理由は、許容濃度等を決定する場合に考慮された生体影響の種類は物質等によって異なるからである。例えば、ある種のものでは、明瞭な健康障害に、また他のものでは、不快、刺激、中枢神経抑制などの生体影響に根拠が求められている。
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  • (4)化学物質A及び化学物質Bを取り扱う作業場において、個人ばく露濃度測定を行ったところ、化学物質 A は 5 ppm、化学物質 B は30 ppm であった。化学物質 A の許容濃度が 10 ppm、化学物質 B の許容濃度が 50 ppm とすると、このばく露状態で許容濃度に相当する値を超えているか、その判断の根拠となる計算式を示して説明せよ。ただし、化学物質 A と化学物質 B の健康影響は相加的であるものとする。

    • 【解説】
      必ずしも個人ばく露測定に限られないが、複数の化学物質への健康影響が相加的であることが確実な場合は、日本産業衛生学会の「化学物質の個人ばく露測定のガイドライン(補足資料 15)」に従って、全体の健康影響を評価すればよい。
      混合有機溶剤など,同じ標的臓器や器官に対する類似の毒性影響を持つ化学物質が複数存在する場合には,それらを合わせた影響を考慮する必要がある.この場合,次の式により,各化学物質の濃度とばく露限界値との比を加算した値Cを混合物の濃度とし,ばく露限界値を「1.0」としてこれを基準に結果の評価を行う.
      C=C1T1+C2T2+C3T3
      Ci : 化学物質 i の濃度
      Ti : 化学物質 i のばく露限界値
      C : 混合物の濃度(無単位)
      混合物に対するばく露限界値1.0
      ※ 日本産業衛生学会 産業衛生技術部会「化学物質の個人ばく露測定のガイドライン 補足資料 15 8時間のばく露限界値についての追加的な説明」(産衛誌 2015年 Vol.57)
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    • 【解答例】
      複数の化学物質が作業環境中に存在し、その健康影響が相加的であると分かっていれば、次式に従って全体の健康影響を評価することができる。この式でCが 1.0 を超えていなければ、許容濃度に相当する値を超えていないといえる。
      C=C1T1+C2T2+C3T3
      Ci : 化学物質 i の濃度
      Ti : 化学物質 i のばく露限界値
      C : 混合物の濃度(無単位)
      混合物に対するばく露限界値1.0
      従って、このケースでは、
      C=CATA+CBTB=510+3050=1.1
      と 1.1 となり、1.0 を超えているので、許容濃度に相当する値を超えている。
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  • (5)労働衛生分野における生物学的(バイオロジカル)モニタリングとは何か、簡潔に述べよ。

    • 【解説】
      労働衛生分野における生物学的(バイオロジカル)モニタリングについては、職場のあんぜんサイトの安全衛生キーワードの「生物学的モニタリング」のページに次のような記述がある。
      【定義】
      有機溶剤などの有害物にばく露すると、体内に取り込まれ、体内で化学的な変化(代謝)を受けてほとんどが尿などになって排泄されますが、一部が体内に蓄積されます。したがって、体内に摂取された有害物の量と、排泄された量との関係が明らかな場合は、排泄された物質の量を分析することにより、体内に蓄積された有害物の量をある程度推定することができます。このような方法により、有害物へのばく露の程度を把握する手法を生物学的モニタリングといいます。
      生物学的モニタリングは、体内に摂取された有害物の量と排泄された物質の量との関係が分かっている物質であれば行うことができますが、特殊健康診断においては有機溶剤8物質、金属1物質についてその検査が義務付けられています。
      なお、生物学的モニタリングは、作業者の血液、尿などに含まれる化学物質の代謝物等を分析し、その値によってばく露量の程度を評価することなので、作業者が健康かどうか直接評価するものではありません。
      ※ 厚生労働省「生物学的モニタリング(安全衛生キーワード)
      これをまとめて解答すればよいであろう。
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    • 【解答例】
      労働の場において作業者が有害物にばく露して、これが体内に取り込まれると、一部は代謝により化学的な変化をして排尿などにより体外に排泄される。しかし、一部は体内に蓄積されて健康に影響を与えることとなる。
      このとき、体内に摂取される有害物の量と、代謝によって排泄される物質の量との関係が明らかであれば、排泄される物質の量を分析することにより、体内に蓄積された有害物の量をある程度推定することができる。このような方法により、有害物へのばく露の程度を把握する手法を生物学的モニタリングという。
      労働安全衛生法令においては、体内に摂取される有害物の量と排泄される化学物質の量との関係が分かっている物質のうち、有機溶剤8物質、金属1物質について、特殊健康診断において生物学的モニタリングの検査が義務付けられている。
      なお、生物学的モニタリングは、作業者の血液、尿などに含まれる化学物質の代謝物等を分析し、その値によってばく露量の程度を評価することが目的であり、作業者への健康影響を直接評価するものではない。
  • (6)ある職場で化学物質Cを扱っており、作業環境中の化学物質Cの気中濃度や化学物質Cに係る生物学的モニタリングの指標物質を測定したところ、化学物質Cの気中濃度はどのように測定しても十分低く、一方で、化学物質Cに係る生物学的モニタリングの指標物質の濃度は高かった。この原因としてどのようなことが考えられるか、二つ挙げよ。ただし、測定対象物の採取・分析に問題はないものとする。

    • 【解説】
      労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分の口述試験の定番の問題である。口述試験の保健衛生の過去問を読み込んでいれば正答できる問題である。生物学的モニタリングの指標物質の濃度が高かったのが、特定の個人(又は複数の個人)のみなのか、職場の作業者の全体の値が高いのかにもよるだろうが、そのことはここでは考えなくてもよいだろう。
      この理由としては、以下のようなことが考えられよう。
      ① 作業者が化学物質Cに直接触れていたため、経皮ばく露していた。
      ② 化学物質C以外の原因で、生物学的モニタリングの指標物質が増加していた。
      ③ 作業者が職場以外(模型作りなどの趣味)で、化学物質Cにばく露していた。
      ④ 作業者の中に、遺伝的要素や体格(脂肪量)などの個人差により、とくに生物学的モニタリングの指標物質が増加する者がいた。
      この中から2つを選べばよいが、どれを選んでも考え方が間違っていなければ、減点されることはないだろう。また、②も測定対象物の採取・分析とは無関係なので、間違いではない。
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    • 【解答例】
      ① 作業者が化学物質Cに直接触れていたため、経皮ばく露していた。
      ② 化学物質C以外の原因で、生物学的モニタリングの指標物質が増加していた。
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  • (7)作業環境管理のために管理濃度が設定されている。士石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの管理濃度は、次の式により算定される。この式のE及びQは何を表すか、それらの単位も含めて答えよ。
     E=3.0/(1.19 Q+1)

    • 【解説】
      作業環境の管理濃度は「作業環境評価基準の別表」に定められている。
      【作業環境評価基準】

      別表 (第二条関係)

      物の種類 管理濃度
      一 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じん
      次の式により算定される値
       E=3.0/(1.19 Q+1)
      この式において、E及びQは、それぞれ次の値を表すものとする。
      E 管理濃度(単位 mg/m3
      Q 当該粉じんの遊離けい酸含有率(単位 パーセント)
      (以下略) (以下略)
      この通りに回答すればよい。
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    • 【解答例】
      Eは管理濃度(単位 mg/m3)であり、Qはその粉じんの遊離けい酸含有率(単位 パーセント)である。
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  • (8)作業環境管理技術の観点から管理濃度が設定されない場合がある。それはどのような場合か述べよ。

    • 【解説】
      本小問はおそらく、インジウム・スズ酸化物(ITO)が念頭にあって出題されたものであろう。平成22年12月22日基安発1222第2号「インジウム・スズ酸化物等取扱い作業による健康障害防止対策の徹底について」の別添1「インジウム・スズ酸化物等の取扱い作業による健康障害防止に関する技術指針」には許容される濃度(1×10-2 mg/m3)と目標濃度(3×10-4 mg/m3)が定められている。
      厚生労働省の「化学物質の健康障害防止措置に係る検討会(インジウムの健康障害防止に係る小検討会)の議論によると、長期がん原性試験結果(22年6月報告)では、NOAEL(無毒性量) は得られなかったが、LOAEL(最小毒性量)が 0.01 mg/m3という結果が得られたのである。そこで、NOAEL への変換係数を10とし、種間差 10、労働補正 6/8として、許容ばく露濃度を 7.5×10-5mg/m3とし、さらに、がんの重大性を10、労働年数補正を 75/45 とすると、一次評価値が 1.3×10-5mg/m3という数値となったのである。
      これでは、レベルが低すぎて、事業者が基準値として遵守できないのではないかと考えられたのである(※)
      ※ なお、当時でも測定・分析法の定量下限は、個人ばく露測定で 6.0×10-6mg/m3、作業環境管理における定量下限は 3.0×10-5mg/m3、であり、測定・分析法上の問題はみられなかった。あくまでも作業環境管理技術の観点からの問題だったのである。
      そのため、最終的に、目標濃度 0.01 mg/m3(吸入性粉じんとして)、許容される濃度 0.0003 mg/m3(吸入性粉じんとして)という数値を定めることとしたのである。
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    • 【解答例】
      インジウム・スズ酸化物(ITO)の場合、長期がん原性試験結果、LOAEL(最小毒性量)が 0.01 mg/m3という結果が得られた。ここから許容される濃度は 0.0003 mg/m3となると考えられた。
      これでは、レベルが低すぎて、事業者が基準値として遵守できないのではないかと考えられた。このため、管理濃度は設定せず、目標濃度 0.01 mg/m3(吸入性粉じんとして)、許容される濃度 0.0003 mg/m3(吸入性粉じんとして)という数値が定められた。
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  • (9)有機溶剤X及び有機溶剤Yからなる 「混合有機溶剤」から蒸気が気中に発散するとき、ある測定点における有機溶剤Xと有機溶剤Yの気中濃度は、それぞれ、20 ppm、100 ppmであった。有機溶剤Xと有機溶剤Yの管理濃度がそれぞれ 50 ppm、200 ppmであるとすると、この測定点における当該「混合有機溶剤」蒸気の気中濃度は管理濃度に相当する値を超えているといえるか、その理由とともに述べよ。

    • 【解説】
      小問(4)と同様な設問であるが、(4)で示した考え方は、「作業環境評価基準」においても同様である。
      【作業環境評価基準】
      (測定結果の評価)
      第2条 (第1項~第3項 略)
       労働安全衛生法施行令別表第6の2第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤(特定化学物質障害予防規則(中略)第36条の5において準用する有機溶剤中毒予防規則(中略)第28条の2第1項の規定による作業環境測定の結果の評価にあっては、特定化学物質障害予防規則第2条第1項第三号の二に規定する特別有機溶剤を含む。以下この項において同じ。)を二種類以上含有する混合物に係る単位作業場所にあっては、測定点ごとに、次の式により計算して得た換算値を当該測定点における測定値とみなして、第1項の区分を行うものとする。この場合において、管理濃度に相当する値は、一とするものとする。
      C=C1E1+C2E2
       この式において、CC1C2及びE1E2は、それぞれ次の値を表すものとする。
      C   換算値
      C1C2 有機溶剤の種類ごとの測定値
      E1E2 有機溶剤の種類ごとの管理濃度
      なおこの考え方は、中央労働災害防止協会の「康障害防止のための 化学物質リスクアセスメントのすすめ方」にも採用されている。
      混合物の場合において、作業者が複数の化学物質にばく露しており、それらの化学物質が互いに独立して作用しているか否かが不明なときには、それらは相加的に作用するものとして扱い、「加算管理濃度等 = 1.0 」を用いる。
      混合物の管理濃度等 = C1 / 管理濃度等 1 + C2 / 管理濃度等 2 + ・・・Cn / 管理濃度等
      ※ 中央労働災害防止協会「康障害防止のための 化学物質リスクアセスメントのすすめ方(2009年3月)
      解答例には、作業環境評価基準の条文まで示したが、式だけ書いておけば減点されることはないだろう。
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    • 【解答例】
      混合有機溶剤の評価については、作業環境評価基準第2条第4項により、次式によって評価する。
      C=C1E1+C2E2
       この式において、CC1C2及びE1E2は、それぞれ次の値を表すものとする。
      C   換算値
      C1C2 有機溶剤の種類ごとの測定値
      E1E2 有機溶剤の種類ごとの管理濃度
      従って、このケースでは、
      C=CXEX+CYEY=2050+100200=0.9
      と 0.9 となり、1.0 を超えていないので、管理濃度に相当する値を超えているとはいえない。
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  • (10)作業環境測定において A 測定のみを実施して管理区分を決める場合、第一評価値、第二評価値、管理濃度からどのようにして第一管理区分、第二管理区分、第三管理区分が決められるか、述べよ。

    • 【解説】
      作業環境測定において A 測定のみを実施して管理区分を決める場合の方法は、作業環境測定基準第2条第1項第一号に示されている。従って、同号に示されている通りに解答すればよい。
      【作業環境評価基準】
      (測定結果の評価)
      第2条 労働安全衛生法第六十五条の二第一項の作業環境測定の結果の評価は、単位作業場所(作業環境測定基準(昭和五十一年労働省告示第四十六号)第二条第一項第一号に規定する単位作業場所をいう。以下同じ。)ごとに、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該各号の表の下欄に掲げるところにより、第一管理区分から第三管理区分までに区分することにより行うものとする。
       A測定(作業環境測定基準第二条第一項第一号から第二号までの規定により行う測定(作業環境測定基準第十条第四項、第十条の二第二項、第十一条第二項及び第十三条第四項において準用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)のみを行った場合
      管理区分 評価値と測定対象物に係る別表に掲げる管理濃度との比較の結果
      第一管理区分 第一評価値が管理濃度に満たない場合
      第二管理区分 第一評価値が管理濃度以上であり、かつ、第二評価値が管理濃度以下である場合
      第三管理区分 第二評価値が管理濃度を超える場合
       (略)
      2~4 (略)
      解答例は表の形で示したが、文章で表してもかまわない。
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    • 【解答例】
      以下の表により、管理区分を決定する。
      管理区分 評価値と測定対象物に係る別表に掲げる管理濃度との比較の結果
      第一管理区分 第一評価値が管理濃度に満たない場合
      第二管理区分 第一評価値が管理濃度以上であり、かつ、第二評価値が管理濃度以下である場合
      第三管理区分 第二評価値が管理濃度を超える場合
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