労働衛生コンサルタント試験 2023年 労働衛生一般 問20

事務所の採光、照明等




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2023年の労働衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」の問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2023年度(令和05年度) 問20 難易度 採光・照明などは過去問にあまり類例はないが、常識的な内容の問題。確実に正答しておきたい。
採光・照明など

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問20 事務室の採光、照明などに関する次のイ~ニの記述について、適切なもののみを全て挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

イ 照度は高いほど書類の文字はよく見えるが、明る過ぎると疲労度が増す。

ロ 全般照明の照度は、局部照明による照度の少なくとも約 10 分の1以上が望ましい。

ハ 室内の明るさにムラがないようにする。

ニ 前方から明かりをとるときは、まぶしさを防ぐため、光源と眼を結ぶ線と視線がなす角度は30°以下となるようにする。

(1)イ  ロ  ハ  ニ

(2)イ  ロ  ハ

(3)イ  ハ  ニ

(4)ロ  ハ

(5)ロ  ニ

正答(2)

【解説】

問20試験結果

試験解答状況
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採光・照明に関する問題は、労働衛生コンサルタント試験では過去にあまり類例がないが、第2種衛生管理者には出題例が多い。

イ 正しい。照度は高いほど書類の文字がよく見えることについては、極端に明るすぎる場合は別とすれば、誤りとは言えないだろう。疲労度との関係については、例えば、蒲山(※)が、照度と疲労についていくつかの文献を紹介しているが、一般に、明る過ぎると疲労度が増すとされている。

※ 蒲山久夫「照度と眼疲労について」(照明学会難誌 Vol.37 No.1 1952年)

ロ 正しいとしておく。近年、省エネのために、全般照明の明るさを落として、作業面に局部照明を併用することで、電力を節約するタスクアンドアンビエント照明方式が広く用いられている。ただ、作業面における水平面照度の変化は、出来るだけ小さいことが望ましい。

これについて、JIS Z 9110:2010(照明基準総則)は、部屋全般に平均100(lx)、作業面(情報端末ディスプレイを除く)に局部的に750(lx)を推奨している。この場合、作業面周辺は200~300(lx)程度の明るさになると想定され、作業面周辺と作業面の照度比はおよそ1:3になる。

また、明石他(※)によると、「伝票処理などの一般的な事務作業の場合、周辺照度/作業面照度の比が1.0、0.33、0.1のうち、1.0の照明条件下で最も集中でき、企画などの思考を伴う作業の場合、0.1の照明条件で最も集中できることを明らかにした」とされている。

※ 明石行生他「作業者の集中度と周辺照度/作業面照度の比との関係」(照明学会誌 第80巻 第8A号 1996年)

なお、この種の問題は第2種衛生管理者でよく出題されてきた。最近では2022年10月公表問題問12がある。かつては、衛生管理者の試験では、「全般照明の明るさは局部照明の10分の1以上が望ましい」として正しい肢であるとすることが多かったが、10分の1ではやや比率が大きすぎる。2020年4月公表問題以降は5分の1以上という数字となり、2022年10月公表問題では5分の1程度となって正しいとされている。これでもやや低いように思えるが、いずれも誤りとは言えないだろう。

ハ 正しい。事務所衛生基準のあり方に関する検討会の第3回委員会の資料3の6ページの、JIS Z 9110:2010 の表5に基本的な屋内作業の照明要件が示されているが、その他明るさにムラがないかという照度均斉度(Uo)についての記述がある。

照度均斉度は、「最小照度/最大照度」又は「最小照度/平均照度」で定義され、1に近いほど均斉度が高い。照度均斉度が低い空間では、目の疲労度が増すとされている。

ニ 誤り。視野の中に輝度の高い光源があれば、目が疲労し不快感を感じるばかりか、物が見えにくくなる。これがグレア(まぶしさ)である。視線を中心として上下30°の範囲はグレアゾーンと呼ばれ、この範囲には輝度の高い光源をなくすのが照明の基本とされている。

なお、これも第2種衛生管理者でよく出題されてきた。最近ではロと同じ2022年10月公表問題問12がある。ここでは、40°程度になるように光源の位置を決めたという肢が正しいとされている。

2024年01月26日執筆