問8 有機溶剤業務に労働者を従事させるときに事業者が講じた措置に関する次のイ~ニの記述について、有機溶剤中毒予防規則上、違反となるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、同規則による適用の除外及び設備の特例はなく、作業場所に設置された設備はいずれも有効に稼働しているものとする。
イ 地下室の内部において、第一種有機溶剤等を用いて行う払しょくの業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に局所排気装置を設けているが、労働者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
ロ 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において、第二種有機溶剤等の製造工程における混合又は攪拌の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に全体換気装置を設け、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
ハ 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において、第三種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置のいずれの設備も設けず、労働者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
ニ 地下室の内部において、第三種有機溶剤等を用いて行う吹き付けによる塗装の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に全体換気装置を設け、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(1)イ ロ
(2)イ ニ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2022年度(令和4年度) | 問08 | 難易度 | 有機則の基本的な考え方の理解を試す問題。正答して欲しいが、かなりの難問だったようだ。 |
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有機溶剤中毒予防規則 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問8 有機溶剤業務に労働者を従事させるときに事業者が講じた措置に関する次のイ~ニの記述について、有機溶剤中毒予防規則上、違反となるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、同規則による適用の除外及び設備の特例はなく、作業場所に設置された設備はいずれも有効に稼働しているものとする。
イ 地下室の内部において、第一種有機溶剤等を用いて行う払しょくの業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に局所排気装置を設けているが、労働者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
ロ 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において、第二種有機溶剤等の製造工程における混合又は攪拌の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に全体換気装置を設け、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
ハ 屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において、第三種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置のいずれの設備も設けず、労働者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
ニ 地下室の内部において、第三種有機溶剤等を用いて行う吹き付けによる塗装の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に全体換気装置を設け、労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(1)イ ロ
(2)イ ニ
(3)ロ ハ
(4)ロ ニ
(5)ハ ニ
正答(4)
【解説】
イ 違反とはならない。有機則第 32 条第1項、同第 33 条第1項は、地下室の内部であっても局所排気装置を設けていれば、労働者に送気マスクや有機ガス用防毒マスクを使用させることを義務付けていない。
なお、払しょくの業務は有機則第1条第1項(第六号チ)により有機溶剤業務である。労働衛生コンサルタント試験の有機則関連の問題で出題される業務は、有機溶剤業務であると考えてほぼ間違いはない。また、地下室の内部は、有機則第2条第1項第一号の定義により、タンク等の内部に含まれる。
本問は除外及び設備の特例はないので考慮する必要はないが、タンク等の内部であっても、臨時に有機溶剤業務を行う場合(有機則第8条第2項)、短時間有機溶剤業務を行う場合(有機則第9条第2項)、局所排気装置等の設置が困難な場合(第10条)について、局所排気装置の設置の特例が定められている。そして、その場合は有機則第32条、第33条の規定による保護具が必要となる。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ト (略)
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
リ~ヲ (略)
2 (略)
(適用の除外)
第2条 (柱書 略)
一 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第2項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)(以下略)
二 (略)
2 (略)
(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)
第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第1条第1項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第13条の2第1項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(臨時に有機溶剤業務を行う場合の適用除外等)
第8条 (第1項 略)
2 臨時に有機溶剤業務を行う事業者がタンク等の内部における当該有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、全体換気装置を設けたときは、第五条又は第六条第二項の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
(短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例)
第9条 (第1項 略)
2 事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、送気マスクを備えたとき(当該場所における有機溶剤業務の一部を請負人に請け負わせる場合にあつては、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、送気マスクを備え、かつ、当該請負人に対し、送気マスクを備える必要がある旨を周知させるとき)は、第5条又は第6条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないことができる。
(局所排気装置等の設置が困難な場合における設備の特例)
第10条 事業者は、屋内作業場等の壁、床又は天井について行う有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、有機溶剤の蒸気の発散面が広いため第5条又は第6条第2項の規定による設備の設置が困難であり、かつ、全体換気装置を設けたときは、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
(送気マスクの使用)
第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。
一 (略)
二 第9条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務
2 (略)
(送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用)
第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。
一 (略)
二 第8条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務
三 (略)
四 第10条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場等における業務
五~七 (略)
2及び3 (略)
※ 有機則第9条第2項は出題当時は下記のようになっていた。現在は上記のようになっているが、本問の正誤には影響はない。なお、これは個人事業主の保護に係る改正である(上記には示していないが、同規則第 33 条第2項も同じ)。個人事業主の保護に関する改正については「一人親方等の保護に関する安衛法令改正」を参照されたい。
(短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例)
第9条 (第1項 略)
2 事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、送気マスクを備えたときは、第5条又は第6条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないことができる。
ロ 違反となる。有機則第5条は、第二種有機溶剤等の製造工程における混合又は攪拌の業務に労働者を従事させる場合について、全体換気装置を認めていない。
なお、タンク等の内部以外の場所について、臨時に有機溶剤業務を行う場合(有機則第8条第1項)、短時間有機溶剤業務を行う場合(有機則第9条第1項)、局所排気装置等の設置が困難な場合(第10条)について、局所排気装置の設置の特例が定められているが、本問はそのような特例がない場合である。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
ロ~ヲ (略)
2 (略)
(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)
第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第1条第1項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第13条の2第1項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(臨時に有機溶剤業務を行う場合の適用除外等)
第8条 臨時に有機溶剤業務を行う事業者が屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における当該有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、第五条の規定は、適用しない。
2 (略)
(短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例)
第9条 事業者は、屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、全体換気装置を設けたときは、第5条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
2 (略)
(局所排気装置等の設置が困難な場合における設備の特例)
第10条 事業者は、屋内作業場等の壁、床又は天井について行う有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、有機溶剤の蒸気の発散面が広いため第5条又は第6条第2項の規定による設備の設置が困難であり、かつ、全体換気装置を設けたときは、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
(送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用)
第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。
一及び二 (略)
三 第9条第1項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における業務
四 第10条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場等における業務
五~七 (略)
2 (略)
ハ 違反とはならない。有機則第6条第1項により、第三種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させる場合に、その作業場所に有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置のいずれか設備を設けなければならないのは、屋内作業場等のうちタンク等の内部のみである。
そして、同規則第 33 条第1項第一号の規定により送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならないのは、タンク等の内部における業務のみである。
第三種有機溶剤は、大量漏洩による災害を想定したものであり、タンク等の内部や吹き付け業務を除き、ほとんど規制されていないことは覚えておいた方がよい。もっとも、法令の試験においてはそれでもよいが、実務においてもそれでよいかは別な問題である。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~リ (略)
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
ル及びヲ (略)
2 (略)
(第三種有機溶剤等に係る設備)
第6条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第1条第1項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
2 (略)
(送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用)
第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。
一 第6条第1項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務
五~七 (略)
2及び3 (略)
ニ 違反となる。本肢は、有機則第6条第2項に該当する(地下室の内部はタンク等の内部に該当する。)ため、全体換気装置は認められない。
なお、本肢の場合、臨時に有機溶剤業務を行う場合(有機則第8条第1項)、短時間有機溶剤業務を行う場合(有機則第9条第1項)、局所排気装置等の設置が困難な場合(第 10 条)について、局所排気装置の設置の特例が定められているが、本問はそのような特例がない場合である。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~チ (略)
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
ヌ~ヲ (略)
2 (略)
(第三種有機溶剤等に係る設備)
第6条 (第1項 略)
2 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(臨時に有機溶剤業務を行う場合の適用除外等)
第8条 (第1項 略)
2 臨時に有機溶剤業務を行う事業者がタンク等の内部における当該有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、全体換気装置を設けたときは、第5条又は第6条第2項の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
(短時間有機溶剤業務を行う場合の設備の特例)
第9条 (第1項 略)
2 事業者は、タンク等の内部において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、当該場所における有機溶剤業務に要する時間が短時間であり、かつ、送気マスクを備えたときは、第5条又は第6条の規定にかかわらず、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないことができる。
(局所排気装置等の設置が困難な場合における設備の特例)
第10条 事業者は、屋内作業場等の壁、床又は天井について行う有機溶剤業務に労働者を従事させる場合において、有機溶剤の蒸気の発散面が広いため第5条又は第6条第2項の規定による設備の設置が困難であり、かつ、全体換気装置を設けたときは、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないことができる。
(送気マスク又は有機ガス用防毒マスクの使用)
第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させなければならない。
一 (略)
二 第8条第2項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務
三 (略)
四 第10条の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行う屋内作業場等における業務
五~七 (略)
2及び3 (略)