労働衛生コンサルタント試験 2022年 労働衛生関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2022年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2022年度(令和4年度) 問01 難易度 総括安全衛生管理者及び産業医は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。
労働安全衛生管理体制

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、正しいものはどれか。

(1)事業者は、常時使用する労働者数が300人の造船業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任するほか、元方事業者である当該事業者の労働者とその請負人の労働者が同一の場所で作業を行い、これらの労働者数が常時30人以上となる場合は、統括安全衛生責任者を選任しなければならない。

(2)事業者は、常時100人以上の労働者を使用する運送業の事業場においては、総括安全衛生管理者を衛生委員会の議長として委員に指名するほか、議長以外の委員の半数については、その指名に当たって、あらかじめ、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴取しなければならない。

(3)産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努め、事業者の指示に基づいて誠実にその職務を行わなければならない。

(4)産業医は、労働者の健康を確保するため事業者に対し勧告する必要があると認めるときは、あらかじめ、勧告の内容について事業者の意見を求めて、労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことができる。

(5)事業者は、産業医の選任を要する事業場において、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を記載した報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

正答(4)

【解説】

問1試験結果

試験解答状況
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本年の労働衛生法令は、最初の問題から正答数が他の肢より少ないものとなってしまった。しかし、産業医と事業者の関係を理解できていれば正答できる問題である。

(1)誤り。統括安全衛生責任者の選任は、安衛法第15条及び安衛令第7条によって義務付けられている。造船業は、安衛令第7条第2項第二号に該当し、関係労働者数が常時50人以上となる場合に、統括安全衛生責任者を選任しなければならないこととなる。30人ではない。

なお、常時使用する労働者数が300人の造船業の事業場においては、総括安全衛生管理者を選任しなければならないことは正しい。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

2及び3 (略)

(統括安全衛生責任者)

第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

2~5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)

第7条 法第十五条第一項の政令で定める業種は、造船業とする。

 法第十五条第一項ただし書及び第三項の政令で定める労働者の数は、次の各号に掲げる仕事の区分に応じ、当該各号に定める数とする。

 ずい道等の建設の仕事、橋りようの建設の仕事(作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所として厚生労働省令で定める場所において行われるものに限る。)又は圧気工法による作業を行う仕事 常時三十人

 前号に掲げる仕事以外の仕事 常時五十人

(2)誤り。常時100人以上の労働者を使用する運送業の事業場においては、安衛法第10条及び安衛令第2条(第一号)により、その事業の実施を統括管理する者総括安全衛生管理者を選任しなければならない。しかし、衛生委員会の議長は、同法第18条第2項(第一号)及び同条第4項が準用する同法第17条第3項により、総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者を選任すればよく、必ずしも総括安全衛生管理者を選任しなければならないわけではない。

また、同法第18条第4項が準用する第17条第4項により、議長以外の委員の半数については、その指名は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者の推薦によって行わなければならない。あらかじめ意見を聞くだけでは足りない。また、同法第18条第4項が準用する第17条第5項による例外も、本肢には記載されていない。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

 (略)

(安全委員会)

第17条 (第1項~第2項 略)

 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。

 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。

(衛生委員会)

第18条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。

 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者

二及び三 (略)

 (略)

 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

(3)誤り。安衛則第14条第7項により、産業医が、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならないことは正しい。

しかし、産業医は事業者から独立した存在であり、事業者の指示に基づいて誠実にその職務を行わなければならないとする規定はない。そのような規定は安衛則第14条第3項の規定と矛盾する。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。

4~6 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第14条 (第1項及び第2項 略)

 産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

4及び6 (略)

 産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

(4)正しいとしてよい。産業医は、安衛法第13条第5項により、労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことができる。そして、安衛則第14条の3第1項により、労働者の健康を確保するため事業者に対し勧告する必要があると認めるときは、あらかじめ、勧告の内容について事業者の意見を求めることとされている。

法的に、勧告を行う前に必ず事業者の意見を求める必要があるのか、言葉を換えれば意見を求めずに勧告した場合に、その勧告が無効になるのかはひとつの問題である。これについて、行政解釈は示されていないが、無効とはならないとするのが文理からは自然な解釈であろう。

しかし、コンサルタント試験のレベルでは、正しいとしてよい。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 (第1項~第4項 略)

 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(産業医による勧告等)

第14条の3 産業医は、法第十三条第五項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の内容について、事業者の意見を求めるものとする。

2~4 (略)

(5)誤り。このような規定はない。産業医が辞任したとき又は産業医を解任したとき、その時点で産業医を選任しなければならない要件を満たしていれば、14日以内に新しい産業医を選任しなければならず、選任した場合は遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。そのため退任等について報告を義務付ける規定は必要がないのである。

なお、産業医の選任を要する事業場において、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、衛生委員会又は安全衛生委員会に遅滞なく報告しなければならない。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の選任)

第2条 (第1項 略)

 事業者は、総括安全衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、様式第三号による報告書を、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という。)に提出しなければならない。

(産業医の選任等)

第13条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。

二~四 (略)

 第二条第二項の規定は、産業医について準用する。ただし、(以下略)

 (略)

 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

2022年11月26日執筆