労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生関係法令 問10

特定化学物質障害予防規則




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問10 難易度 特化則は、ほぼ毎年出題されている。昨年以降、詳細な内容の出題が続いている。
特定化学物質

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問10 特定化学物質に関する次の記述のうち、特定化学物質障害予防規則上、誤っているものはどれか。

(1)クロム酸及びその塩の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける除じん装置については、粉じんの粒径にかかわらず、ろ過除じん方式とすることができる。

(2)シアン化カリウムを含有する排液については、酸化・還元方式若しくは活性汚泥方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。

(3)インジウム化合物を製造する作業に労働者を従事させるときは、厚生労働大臣の定めるところにより、作業環境測定の結果に応じて有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。

(4)金属をアーク溶接する作業を継続して行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならない。

(5)スチレンを取り扱う業務に常時従事する労働者に対して定期に行う健康診断においては、尿中のマンデル酸及びフェニルグリオキシル酸の総量を測定する必要がある。

正答(4)

【解説】

問10試験結果

試験解答状況
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(1) 正しい。クロム酸及びその塩は、特化則第2条第1項(第二号/安衛令別表第3第二号11)により、第二類物質である。

従って、特化則第9条第1項により、その粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける除じん装置については、粉じんの粒径にかかわらず、ろ過除じん方式とすることができる。

【労働安全衛生法施行令】

別表第3条 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 (略)

 第二類物質

1~10 (略)

11 クロム酸及びその塩

11の2~37 (略)

 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

(定義等)

第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 (略)

 第二類物質 令別表第三第二号に掲げる物をいう。

三~七 (略)

2及び3 (略)

(健康診断)

第9条 事業者は、第二類物質の粉じんを含有する気体を排出する製造設備の排気筒又は第一類物質若しくは第二類物質の粉じんを含有する気体を排出する第三条、第四条第三項若しくは第五条第一項の規定により設ける局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置には、次の表の上欄に掲げる粉じんの粒径に応じ、同表の下欄に掲げるいずれかの除じん方式による除じん装置又はこれらと同等以上の性能を有する除じん装置を設けなければならない。

粉じんの粒径
(単位 マイクロメートル)
除じん方式
五未満 ろ過除じん方式
電気除じん方式
五以上二十未満 スクラバによる除じん方式
ろ過除じん方式
電気除じん方式
二十以上 マルチサイクロン(処理風量が毎分二十立方メートル以内ごとに一つのサイクロンを設けたものをいう。)による除じん方式
スクラバによる除じん方式
ろ過除じん方式
電気除じん方式
備考 この表における粉じんの粒径は、重量法で測定した粒径分布において最大ひん度を示す粒径をいう。

2及び3 (略)

(2) 正しい。特化則第11条第1項により、シアン化カリウムを含有する排液については、酸化・還元方式若しくは活性汚泥方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。

【特定化学物質障害予防規則】

(排液処理)

第11条 事業者は、次の表の上欄に掲げる物を含有する排液(第一類物質を製造する設備からの排液を除く。)については、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。

処理方式
(略) (略)
シアン化カリウム 酸化・還元方式
活性汚でい方式
(略) (略)

2及び3 (略)

(3) 正しい。特化則第38条の7第1項(第二号)により、インジウム化合物を製造する作業に労働者を従事させるときは、厚生労働大臣の定めるところにより、作業環境測定の結果に応じて有効な呼吸用保護具を使用させなければならない。

【安全衛生法施行令】

別表第3条 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 (略)

 第二類物質

1~3 (略)

3の2 インジウム化合物

3の3~37 (略)

 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

(インジウム化合物等に係る措置)

第38条の7 事業者は、令別表第三第二号3の2に掲げる物又は別表第一第三号の二に掲げる物(第三号において「インジウム化合物等」という。)を製造し、又は取り扱う作業に労働者を従事させるときは、次に定めるところによらなければならない。

 (略)

 厚生労働大臣の定めるところにより、当該作業場についての第三十六条第一項又は法第六十五条第五項の規定による測定の結果に応じて、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。

 (略)

 (略)

別表第1条 (第二条、第二条の二、第五条、第十二条の二、第二十四条、第二十五条、第二十七条、第三十六条、第三十八条の三、第三十八条の七、第三十九条関係)

一~三 (略)

三の二 インジウム化合物を含有する製剤その他の物。ただし、インジウム化合物の含有量が重量の一パーセント以下のものを除く。

三の三~二十七 (略)

アーク溶接

(4) 誤り。特化則第38条の21第2項により、溶接ヒュームの濃度を測定しなければならないのは、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときである。詳細は本サイトの「溶接ヒューム関連、安衛法令改正」を参照して頂きたい。

なお、これは作業環境測定ではない。アーク溶接を行う屋内作業場では(マンガン等の作業環境測定の対象物を含有する母材、溶接材等を用いるような場合を除き)作業環境測定の義務はない。

【特定化学物質障害予防規則】

(金属アーク溶接等作業に係る措置)

第38条の21 (第1項 略)

 事業者は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣の定めるところにより、当該金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならない。

3~10 (略)

(5) 正しい。特化則第39条第1項(別表第3第四十二号)により、スチレンを取り扱う業務に常時従事する労働者に対して定期に行う健康診断においては、尿中のマンデル酸及びフェニルグリオキシル酸の総量を測定する必要がある。

なお、尿中のフェニルグリオキシル酸の総量の検査は、2020年(令和2年)3月公布(7月施行)の特殊健康診断項目等の見直しによって追加された項目である。

【特定化学物質障害予防規則】

(健康診断の実施)

第39条 事業者は、令第二十二条第一項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等(石綿則第二条第四項に規定する石綿分析用試料等をいう。)の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者に対し、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに一回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

2~6 (略)

別表第3 (第三十九条関係)

業務 期間 項目
(略) (略) (略) (略)
(四十二) スチレン(これをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務 六月

一 業務の経歴の調査

二 作業条件の簡易な調査

三 スチレンによる頭重、頭痛、めまい、悪心、おう吐、眼の刺激症状、皮膚又は粘膜の異常、けい部等のリンパ節の腫大の有無等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査

四 頭重、頭痛、めまい、悪心、おう吐、眼の刺激症状、皮膚又は粘膜の異常、けい部等のリンパ節の腫大の有無等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査

五 尿中のマンデル酸及びフェニルグリオキシル酸の総量の測定

六 白血球数及び白血球分画の検査

七 血清グルタミツクオキサロアセチツクトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミツクピルビツクトランスアミナーゼ(GPT)及び血清ガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査

(略) (略) (略) (略)
2021年11月05日執筆