労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生一般 問15

臓器及びその機能の加齢変化




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問15 難易度 臓器及びその機能の加齢変化という過去問にあまり例のない知識問題。しかし、正答率は高い。
臓器の加齢変化

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問15 臓器及びその機能の加齢変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)高齢者の肝重量、肝血流は加齢により変化しないが、酵素活性やアルブミン産生能は低下する。

(2)呼吸器系の加齢による変化の特徴は、肺弾性収縮力の低下、胸郭コンプライアンスの低下、横隔膜筋力の低下である。

(3)心筋拡張能は、心筋壁の肥厚や間質の線維化により、加齢とともに低下する。

(4)腎臓において硬化糸球体の割合は加齢とともに増加する。

(5)運動器では、加齢に伴い骨量及び筋肉量は減少する。

正答(1)

【解説】

問15試験結果

試験解答状況
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(1)誤り。片山他は、高齢者連続剖検 2,000 例を粗対象とし肝重量に影響を及ぼす病的因子のある例を除外した数 582 例の調査で、「肝重量は例数の少ない 60 歳台女性を除き、男女共に 60 歳台から 90 歳台へと逐齢的に肝重量は減少した」としている。

※ 片山素美他「加齢に伴う肝重量の推移」(日本老年医学会雑誌 Vol.27 No.5 1990年)

また、高齢者の肝血流は65歳で25歳の40~45%に減少する(※)。なお、酵素活性やアルブミン産生能は低下することは正しい。

※ 例えば、稲松孝思「老年者の感染症と投薬」(老年歯学 第4巻 1号 1990年)、大西明弘「高齢者による薬物動態の特徴」(臨床薬理(39(1)) 2008年)など

(2)正しい。呼吸器系の加齢による変化の特徴は、肺弾性収縮力の低下、胸郭コンプライアンスの低下、横隔膜筋力の低下である。

※  工藤翔二 監修・編集「呼吸器疾患診療マニュアル」(2008年)。なお、東京都医師会「2 高齢者の身体と疾病の特徴」のP42「加齢による生理的変化(呼吸)」参照

(3)正しい。心筋拡張能は、心筋壁の肥厚や間質の線維化により、加齢とともに低下する。

※ 例えば、長谷川洋他「P53加齢・老化を含めて」(心臓 Vol.43 No.5 2001年)など

(4)正しい。腎臓において硬化糸球体の割合は加齢とともに増加する。柏原他(※)は、生体腎移植のドナー腎の組織学的解析結果において「硬化糸球体数は加齢に伴い直線的に増加し、若年者(18~29 歳)では 2.7% であったが,高齢者(70~77 歳)では 73% に認められた」としている。

※ 柏原直樹他「腎臓と老化」(日本内科学会雑誌 Vol.101 No.5 2012年)。なお、「対象者はいずれもGFR正常で微量アルブミン尿を有しない。すなわちCKD非合併例である」とされている。

(5)正しい。これは解説するまでもないであろう。運動器では、加齢に伴い骨量及び筋肉量は減少する。

2021年11月26日執筆