労働衛生コンサルタント試験 2021年 労働衛生一般 問12

派遣労働者の健康診断




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 このページは、2021年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2021年度(令和3年度) 問12 難易度 事後措置指針に基づく派遣労働者の健康診断に関する問題。これまでに類問がなくやや難問だったか。
派遣労働者の健康診断

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問12 厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に基づく派造労働者の健康診断に関する次のイ~ニの記述について、正しいもののみを全て挙げたものは(1)から(5)のうちどれか。

イ 派遣労働者の一般健康診断は、派遺元事業者が実施し、特殊健康診断は派遺先事業者が実施する。

ロ 派造先事業者は、特殊健康診斷の結果に基づく就業上の措置を実施したときは、派遺元事業者に対し、措置の内容に関する情報を提供する。

ハ 一般健康診断の結果に基づく派造労働者の就業上の措置について、派遺元事業者からその実施に協力するよう要請があった場合、派遺先事業者は、当該労働者の変更(交代)を求めることができる。

ニ 派遺先事業者は、特殊健康診断の結果の記録の写しを派遣元事業者に送付し、派遣元事業者は、その写しを保存する。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ロ  ハ  ニ

(3)イ  ロ  ニ

(4)イ  ハ  ニ

(5)ロ  ニ

正答(3)

【解説】

問12試験結果

試験解答状況
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問題文にもあるように、本問は、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年10月1日 健康診断結果措置指針公示第1号)(以下、「指針」という。)の「3 派遣労働者に対する健康診断に係る留意事項」からの出題である。

イ 正しい。指針というよりも法令事項であるが、指針にも「派遣労働者については、労働安全衛生法第 66 条第1項の規定に基づく健康診断(以下「一般健康診断」という。)は派遣元事業者が実施し、同条第2項又は第3項に基づく健康診断(以下「特殊健康診断」という。)は派遣先事業者が実施しなければならない。」とされている。

ロ 正しい。指針には、「派遣先事業者は、特殊健康診断の結果に基づく就業上の措置を講ずるに当たっては、派遣元事業者と連絡調整を行った上でこれを実施することとし、就業上の措置を実施したときは、派遣元事業者に対し、当該措置の内容に関する情報を提供することとする」とされている。

ハ 誤り。指針は、派遣先事業者が禁止される「不利益な取扱い」の例として「一般健康診断の結果に基づく派遣労働者の就業上の措置について、派遣元事業者からその実施に協力するよう要請があったことを理由として、派遣先事業者が、当該派遣労働者の変更を求めること」を挙げている。

ここで迷った受験生が多かったようだ。しかし、健康診断の事後措置は国民(労働者)の健康を確保するという公的な目的によって行われているものである。それはたんに個々の国民の幸福(健康)を守るという福祉的な目的にとどまらず、まして事業者と労働者の利益の衡量によるものでもない。国家の医療費の削減、国家の活力の向上を目指すものなのである。

もし、本肢が正しいとすれば、派遣労働者は、職を守ろうとすれば自らの健康を確保する手段(健康診断)を受けないという判断をせざるを得なくなる。しかし、それは健全な国家経営という公的な目的に反するのである。本肢の不利益取扱いの禁止は、事業者と労働者の利益の調整という私的レベルの観点によって行っているのではないのである。

また、派遣労働の推進は政府が進めているものなのである。このような健康診断の事後措置に関して、正社員については不利益取扱いを禁止し、派遣労働者には認めるということになれば、国会で野党が猛反発をするだろうし、政府としてもその様なことをするわけがないのである。

ニ 正しい。指針には、「特殊健康診断の結果の記録の保存は、派遣先事業者が行わなければならないが、派遣労働者については、派遣先が変更になった場合にも、当該派遣労働者の健康管理が継続的に行われるよう、労働者派遣法第 45 条第 10 項及び第 11 項の規定に基づき、派遣先事業者は、特殊健康診断の結果の記録の写しを派遣元事業者に送付しなければならず、派遣元事業者は、派遣先事業者から送付を受けた当該記録の写しを保存しなければならない」とされている。

2021年11月23日執筆