問2 粉じん作業を行う事業場における設備、作業の管理等に関する次の記述のうち、粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。
(1)屋内作業場において、研磨材を用いて動力により金属を研磨し、又はばり取りする場所における作業を、設備による注水又は注油をしながら行う場合には、局所排気装置等の発散抑制設備の設置は不要であり、また作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用させなくてもよい。
(2)屋内作業場において、金属をアーク溶接する作業の粉じん発生源については、フードの型式等の要件に適合する局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設置しなければならない。
(3)屋内作業場における特定粉じん発生源に対する粉じんの発散抑制設備として、密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置が定められており、特定粉じん発生源にはこれらのいずれかの設備を設置しなければならない。
(4)特定粉じん発生源に設置するプッシュプル型換気装置で除じん装置を付設するものは、吸引された粉じんによる爆発のおそれがないときに限り、その排風機を除じんする前の空気が通る位置に設けることができる。
(5)ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業に常時従事させる労働者には、有効な呼吸用保護具として送気マスク又は空気呼吸器を使用させなければならない。
このページは、2020年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2020年度(令和2年度) | 問02 | 難易度 | 粉じん関連の問題は、例年、難易度が高い。本年度もやや難問だったか。 |
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粉じん作業と設備の管理 | 5 |
問2 粉じん作業を行う事業場における設備、作業の管理等に関する次の記述のうち、粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。
(1)屋内作業場において、研磨材を用いて動力により金属を研磨し、又はばり取りする場所における作業を、設備による注水又は注油をしながら行う場合には、局所排気装置等の発散抑制設備の設置は不要であり、また作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用させなくてもよい。
(2)屋内作業場において、金属をアーク溶接する作業の粉じん発生源については、フードの型式等の要件に適合する局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設置しなければならない。
(3)屋内作業場における特定粉じん発生源に対する粉じんの発散抑制設備として、密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置が定められており、特定粉じん発生源にはこれらのいずれかの設備を設置しなければならない。
(4)特定粉じん発生源に設置するプッシュプル型換気装置で除じん装置を付設するものは、吸引された粉じんによる爆発のおそれがないときに限り、その排風機を除じんする前の空気が通る位置に設けることができる。
(5)ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業に常時従事させる労働者には、有効な呼吸用保護具として送気マスク又は空気呼吸器を使用させなければならない。
正答(1)
【解説】
(1)正しいとしておくが疑問。確かに、屋内作業場において、研磨材を用いて動力により金属を研磨し、又はばり取りする場所における作業を、設備による注水又は注油をしながら行う場合には、粉じん則第3条(第三号)の規定により、局所排気装置等の発散抑制設備の設置や、作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用させることは義務付けられない。
しかし、このことは「局所排気装置等の発散抑制設備の設置や、作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用」させなくても、粉じん則違反にならないというだけのことである。「不要」だの「しなくてよい」だのということではないのである。仮に、「設備による注水又は注油をしながら行」ったとしても、労働災害発生のおそれがあるような状況があったとしよう。その場合、「局所排気装置等の発散抑制設備の設置や、作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用」させないことは法的にみて違法性がある(※)と言うべきである。本問には強い疑問を感じる。
※ きわめて有害性が高いが、化学物質規制の特別規則(特化則、有機則等)の対象になっていない化学物質の粉じんがあるとしよう。そして、注水や注油によってはその空気中の粉じんの濃度を十分に下げられないことが予測できたにもかかわらず、「局所排気装置等の発散抑制設備の設置や、作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用」させるなどの対策を行わずに作業をさせ、多数の労働者に健康被害や死亡災害が発生したとしよう。
この場合に、労働者や遺族が民事賠償請求を行ったり、業務上過失致死傷罪で告訴したらどうなるであろうか。
おそらく、事業者の側に過失がある(違法性がある)とされて、民事賠償が認められるであろうし、場合によっては業務上過失致死傷によって処断されることもあり得よう。
ところが、そのとき仮に、安衛法令に「局所排気装置等の発散抑制設備の設置は不要であり、また作業を行う労働者に呼吸用保護具を使用させなくてもよい」と定めてあったとしたらどうであろうか。
その場合は、発散抑制設備を設置しないことや労働者に呼吸用保護具を使用させないことは、事業者の法的な権利ということになる。事業者はそのような対策をとらずに作業をさせる法的な権利があるのだから、事業者の側には民事賠償の責任や刑事上の責任(業務上過失致死傷罪)を問われるいわれはないはずである。
もちろん、そのようなことはあり得ない。安衛法令は、本文中に示したように、「不要」だの「しなくてもよい」などと「許可」を与えてはいないのである。本肢を正しいとすることは、安衛法の基本的な考え方を誤ったものと言うべきである。なお、本サイトの「安衛法が禁止していなければOK?」を参照されたい。
【粉じん障害防止規則】
(設備による注水又は注油をする場合の特例)
第3条 次に掲げる作業を設備による注水又は注油をしながら行う場合には、当該作業については、次章から第六章までの規定は適用しない。
一及び二 (略)
三 別表第一第七号に掲げる作業のうち、研磨材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する場所における作業
四及び五 (略)
別表第一(第二条、第三条関係)
一~六 (略)
七 研磨材の吹き付けにより研磨し、又は研磨材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、若しくは金属を裁断する場所における作業(前号に掲げる作業を除く。)
八~二十三 (略)
(2)誤り。粉じん則第5条により、特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内作業場については、全体換気装置による換気以上の措置が義務付けられており、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設置しなければならないとはされていない。
そして、特定粉じん作業とは、同規則第2条第1項第三号により、別表第二に掲げる箇所にかかる粉じん作業とされている。屋内作業場において、金属をアーク溶接する作業の粉じん発生源については、別表第二には定められておらず特定粉じん発生源ではない。
【粉じん障害防止規則】
(定義等)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 粉じん作業 別表第一に掲げる作業のいずれかに該当するものをいう。ただし、当該作業場における粉じんの発散の程度及び作業の工程その他からみて、この省令に規定する措置を講ずる必要がないと当該作業場の属する事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)が認定した作業を除く。
二 特定粉じん発生源 別表第二に掲げる箇所をいう。
三 特定粉じん作業 粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるものをいう。
2~6 (略)
(換気の実施等)
第5条 事業者は、特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内作業場については、当該粉じん作業に係る粉じんを減少させるため、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
別表第一(第二条、第三条関係)
一~二十 (略)
二十の二 金属をアーク溶接する作業
二十一~二十三 (略)
(3)誤り。屋内作業場における特定粉じん発生源に対する粉じんの発散抑制設備として、発生源ごとに粉じん則第4条に定められているが、必ずしも密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置に限定されているわけではない。
(4)誤り。特定粉じん発生源に設置するプッシュプル型換気装置で除じん装置を付設するものは、粉じん則第11条第2項の規定により、吸引された粉じんによる爆発のおそれがなく、かつ、ファンの腐食又は摩耗のおそれがないときに限り、その排風機を除じんする前の空気が通る位置に設けることができる。吸引された粉じんによる爆発のおそれがないだけでは足りない。
【粉じん障害防止規則】
(特定粉じん発生源に係る措置)
第4条 事業者は、特定粉じん発生源における粉じんの発散を防止するため、次の表の上欄に掲げる特定粉じん発生源について、それぞれ同表の下欄に掲げるいずれかの措置又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。(表 略)
(局所排気装置等の要件)
第10条 (第1項 略)
2 事業者は、第四条の規定により設けるプッシュプル型換気装置のうち、別表第二第七号、第九号、第十四号及び第十五号に掲げる特定粉じん発生源(別表第二第七号に掲げる特定粉じん発生源にあつては、一事業場当たり十以上の特定粉じん発生源(前三条の規定により、第四条の規定が適用されない特定粉じん作業に係る特定粉じん発生源を除く。)を有する場合に限る。)に係るものには、除じん装置を設けなければならない。
(局所排気装置等の要件)
第11条 (第1項 略)
2 事業者は、第四条又は第二十七条第一項ただし書の規定により設けるプッシュプル型換気装置については、次に定めるところに適合するものとしなければならない。
一 (略)
二 前条第二項の規定により除じん装置を付設するプッシュプル型換気装置の排風機は、除じんをした後の空気が通る位置に設けられていること。ただし、吸引された粉じんによる爆発のおそれがなく、かつ、ファンの腐食又は摩耗のおそれがないときは、この限りでない。
三~四 (略)
(5)誤り。ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業に常時従事させる労働者に対して、有効な呼吸用保護具として送気マスク又は空気呼吸器を使用させなければならないとは義務付けられていない。
なお、粉じん則で「送気マスク又は空気呼吸器」に限定して呼吸用保護具の使用を義務付けているのは、第27条第1項のカッコ書きのみである。これは、粉じん則別表第3第五号に定める業務に限られる。この第五号は、すさまじく分かりにくい条文だが、分かりやすく言えば次の2つの作業である。
- 屋外で、研磨剤の吹き付けにより、岩石又は鉱物を彫る場所における作業
- 屋外で、研磨剤の吹き付けにより、岩石、鉱物又は金属を研磨する場所における作業
【粉じん障害防止規則】
(呼吸用保護具の使用)
第27条 事業者は、別表第三に掲げる作業(次項に規定する作業を除く。)に労働者を従事させる場合(第七条第一項各号又は第二項各号に該当する場合を除く。)にあつては、当該作業に従事する労働者に有効な呼吸用保護具(別表第三第五号に掲げる作業に労働者を従事させる場合にあつては、送気マスク又は空気呼吸器に限る。)を使用させなければならない。ただし、粉じんの発生源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置、粉じんの発生源を湿潤な状態に保つための設備の設置等の措置であつて、当該作業に係る粉じんの発散を防止するために有効なものを講じたときは、この限りでない。
2及び3 (略)
別表第一(第二条、第三条関係)
一~五 (略)
五の二 ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業
五の三 (略)
六 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業を除く。
七 研磨材の吹き付けにより研磨し、又は研磨材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、若しくは金属を裁断する場所における作業(前号に掲げる作業を除く。)
八~二十三 (略)
別表第三(第七条、第二十七条関係)
一~四 (略)
五 別表第一第六号又は第七号に掲げる作業のうち、屋外の、研磨材の吹き付けにより、研磨し、又は岩石若しくは鉱物を彫る場所における作業
六~十七 (略)