労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生一般 問07

酸素欠乏症及び硫化水素中毒




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問07 難易度 かなり高度なことを問う問題である。本年の問題の中では難問の部類に属するだろう。
酸素欠乏症等

問07 酸素欠乏症及び硫化水素中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)吸入気中の酸素が不足すると、脊髄にある呼吸中枢などが刺激されて、呼吸数や心拍数が増加する。

(2)脳への酸素の供給が停止されても、無酸素下の状態が2分以内であれば脳は活動を停止しない。

(3)空気中の硫化水素により網膜の表面が侵されて、視野が不明瞭になり、まぶしさが増す。

(4)吸入気中の硫化水素の濃度が100ppmを超える連続ばく露では、肺気腫が生じる。

(5)吸入気中の硫化水素の濃度が1000ppmに達すると、呼吸が停止する。

正答(5)

【解説】

(1)誤り。呼吸中枢(呼吸運動を支配する神経中枢)は、脳幹の橋から延髄にかけての部分にある。血液中の二酸化炭素濃度によって、呼吸数や心拍数を調節している。

(2)誤り。脳への酸素の供給が絶たれ無酸素下の状態が生じると、数秒から10秒程度で意識が消失し、約1分で自立呼吸ができなくなる。

(3)誤り。硫化水素は10ppm程度であっても、角膜や目の粘膜を刺激することがある。50ppmを超えると、目のかゆみ、痛みなどを感じ、視野が不明瞭、まぶしさが増して「ガス眼」の症状となることがある。

これは、硫化水素が眼の粘膜の水分に溶けて硫化アルカリに変化して角膜、粘膜の組織破壊を引き起こすためである。網膜の表面が侵されることによるのではない。

(4)誤り。吸入気中の硫化水素の濃度が100ppmを超える連続ばく露では、気管支炎、肺炎、肺水腫による窒息が生じて死亡することがある。肺気腫によるのではない(※)

※ 肺水腫とは、肺胞周囲の毛細血管から血液中の液体成分が液体成分が肺胞内へ滲み出した状態である。息切れ、喘鳴ぜんめい、咳、痰、呼吸困難等を引き起こす。

一方、肺気腫は肺胞壁が破壊されて空気の出入りが悪くなる疾患であり、病状は不可逆的にゆっくり進行する。主な原因は喫煙であり、まれに大気汚染物質などによっても発症するが、単一原因というより multiple hit と考えられている。日常の軽い活動でも息切れを感じたり、慢性的な咳や痰がでたり、陥没かんぼつ呼吸、肩呼吸、喘鳴が起きることもある。

じん肺、炭坑夫肺、金鉱夫肺等について、職業性疾病に関する論文も存在しているが、必ずしも明確ではない。

(5)正しい。吸入気中の硫化水素の濃度が1000ppmに達すると、昏倒、呼吸停止し死亡に至ることがある。

【酸素欠乏症】
酸素
濃度
症状等
21% 通常の空気の状態
18% 安全限界だが連続換気が必要
16%
12%
8%
6%
頭痛、吐き気
目まい、筋力低下
失神昏睡、7~8分以内に死亡
瞬時に昏倒、呼吸停止、死亡
【硫化水素中毒】
硫化水素
濃  度
症状等
5ppm程度 不快臭
10ppm 許容濃度(眼の粘膜の刺激下限界)
20ppm

350ppm

700ppm
気管支炎、肺炎、肺水腫
 
生命の危険
 
呼吸麻痺、昏倒、呼吸停止、死亡

※ 厚生労働省「なくそう 酸素欠乏症・硫化水素中毒

2019年12月02日執筆