労働衛生コンサルタント試験 2019年 労働衛生一般 問03

有害物質の健康影響




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合格

 このページは、2019年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年度(令和元年度) 問03 難易度 やや高度な内容を問うている。コンサルタントとしては必要な知識である。正答したい問題である。
有害物の健康影響

問03 有害物質の健康影響などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)職場における有機溶剤の人体への侵入経路については、気道を介するものに加えて皮膚を介するものにも注意すべきである。

(2)鉛を含む粉じんにばく露されることにより、へモグロビン合成障害や神経症状が起こる。

(3)発がん性のある有害物質にばく露されてから職業がんが発症するまで、おおむね10~40年かかる。

(4)発がん性のある芳香族アミンによる膀胱がん発生には、体内での代謝が大きく寄与する。

(5)健康影響が知られる芳香族アミンとして、o-トルイジンやベンゼンが挙げられる。

正答(5)

【解説】

福井県の化学工業の事業場のo-トルイジンによる膀胱がん発生事案をモチーフにした問題のようである。今年の口述試験でも問われるかもしれないので、受験生は注意した方がよさそうだ。

(1)正しい。これは当然であろう。福井県の事案でも経皮吸収が問題となったのではないかとされている。

(2)正しい。鉛は、ヘモグロビンの構成要素であるヘムの生合成に関与する酵素を阻害する。また、中枢神経障害や腎障害の症状がみられる。

(3)誤っているとは言えない。発がん性のある有害物質にばく露されてから職業がんが発症するまで、おおむね10~40年かかる。

(4)誤っているとは言えない。o-トルイジンによる膀胱がんの発がんメカニズムには、多くの種類の酵素による代謝活性化が関与しているものと考えられている。

(5)誤り。アミンとは、アンモニア(NH3)の水素が、いくつかアルキル基で置換された化合物の総称である。そして、芳香族アミンとは、ベンゼン環をもつアミンのことである。

本肢のo-トルイジンは芳香族アミンであるが、ベンゼン(C6H6)はそもそもアミンではない。

2019年12月01日執筆