労働衛生コンサルタント試験 2018年 労働衛生関係法令 問09

健康管理手帳




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 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問09 難易度 かなり詳細な内容を問う問題である。かなりの難問と言えよう。
健康管理手帳

問9 健康管理手帳に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)石綿等が吹き付けられた建築物の解体の作業に伴い、石綿の粉じんが発散する場所において、当該作業に1年以上従事した経験を有し、かつ、初めて石綿等の粉じんにばく露した日から10年以上を経過している者は、離職の際に又は離職の後に、健康管理手帳の交付対象となる。

(2)粉じん作業に係る業務に従事していた者であって、じん肺法の規定により決定されたじん肺管理区分が管理3であるものは、離職の際に又は離職の後に、健康管理手帳の交付対象となる。

(3)ベリリウムを製造する業務に従事していた者であって、両肺野にベリリウムによるび慢性の結節性陰影があるものは、離職の際に又は離職の後に、健康管理手帳の交付対象となる。

(4)離職の際に、法令に定める交付要件に該当する者からの申請に基づき健康管理手帳を交付する者は、申請する者の住所を管轄する都道府県労働局長である。

(5)健康管理手帳所持者が死亡したときは、当該手帳所持者の相続人又は法定代理人は、遅滞なく、健康管理手帳をその者の住所を管轄する都道府県労働局長に返還しなければならない。

正答(4)

【解説】

(1)安衛法第67条及び安衛則第53条第1項により、石綿等が吹き付けられた建築物の解体の作業に1年以上従事し、かつ、初めて石綿等の粉じんにばく露した日から10年以上を経過している者は、離職の際に又は離職の後に、健康管理手帳の交付対象となる。

なお、石綿等が吹き付けられた建築物の解体の作業に伴い、石綿の粉じんが発散する場所における作業がすべて対象となるわけではない。解体の作業そのものに従事していることが必要である。本肢は「場所において」と書かれていることが、ややひっかけ問的な要素を持っている。

【労働安全衛生法】

(健康管理手帳)

第67条 都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。ただし、現に当該業務に係る健康管理手帳を所持している者については、この限りでない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(健康管理手帳を交付する業務)

第23条 法第67条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一~十 (略)

十一 石綿等の製造又は取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務

十二 (以下略)

【労働安全衛生規則】

(健康管理手帳の交付)

第53条 法第67条第1項の厚生労働省令で定める要件に該当する者は、労働基準法(略)の施行の日以降において、次の表の上欄に掲げる業務に従事し、その従事した業務に応じて、離職の際に又は離職の後に、それぞれ、同表の下欄に掲げる要件に該当する者その他厚生労働大臣が定める要件に該当する者とする。

業務 要件
(略) (略)
令第23条第十一号の業務(石綿等(令第六条第二十三号に規定する石綿等をいう。以下同じ。)を製造し、又は取り扱う業務に限る。)

次のいずれかに該当すること。

一 (略)

二 石綿等の製造作業、石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等の張付け、補修若しくは除去の作業、石綿等の吹付けの作業又は石綿等が吹き付けられた建築物、工作物等の解体、破砕等の作業(吹き付けられた石綿等の除去の作業を含む。)に一年以上従事した経験を有し、かつ、初めて石綿等の粉じんにばく露した日から十年以上を経過していること。

三 (以下略)

(略) (略)

 (以下略)

(2)正しい。安衛法第67条第1項、安衛令第23条第3号及び安衛則第53条第1項の規定により正しい。因みに管理2の者も対象となるが、管理3の者が対象となるのであるから、本肢は正しいといえる。

なお、管理4の者が対象とならないのは、療養の対象となるため、健康管理手帳を交付する必要性がないからである。

【労働安全衛生法】

(健康管理手帳)

第67条 都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。ただし、現に当該業務に係る健康管理手帳を所持している者については、この限りでない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(健康管理手帳を交付する業務)

第23条 法第67条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一~二 (略)

 粉じん作業(じん肺法(略)第2条第1項第三号に規定する粉じん作業をいう。)に係る業務

 (以下略)

【労働安全衛生規則】

(健康管理手帳の交付)

第53条 法第67条第1項の厚生労働省令で定める要件に該当する者は、労働基準法(略)の施行の日以降において、次の表の上欄に掲げる業務に従事し、その従事した業務に応じて、離職の際に又は離職の後に、それぞれ、同表の下欄に掲げる要件に該当する者その他厚生労働大臣が定める要件に該当する者とする。

業務 要件
(略) (略)
令第23条第三号の業務 じん肺法(略)第13条第2項(同法第15条第3項、第16条第2項及び第16条の2第2項において準用する場合を含む。)の規定により決定されたじん肺管理区分が管理二又は管理三であること。
(略) (略)

 (以下略)

(3)正しい。安衛法第67条第1項、安衛令第23条第3号及び安衛則第53条第1項の規定により正しい。

【労働安全衛生法】

(健康管理手帳)

第67条 都道府県労働局長は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で、政令で定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令で定める要件に該当する者に対し、離職の際に又は離職の後に、当該業務に係る健康管理手帳を交付するものとする。ただし、現に当該業務に係る健康管理手帳を所持している者については、この限りでない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(健康管理手帳を交付する業務)

第23条 法第67条第1項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

一~七 (略)

 ベリリウム及びその化合物(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあっては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。)を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(これらの物のうち粉状の物以外の物を取り扱う業務を除く。)

 (以下略)

【労働安全衛生規則】

(健康管理手帳の交付)

第53条 法第67条第1項の厚生労働省令で定める要件に該当する者は、労働基準法(略)の施行の日以降において、次の表の上欄に掲げる業務に従事し、その従事した業務に応じて、離職の際に又は離職の後に、それぞれ、同表の下欄に掲げる要件に該当する者その他厚生労働大臣が定める要件に該当する者とする。

業務 要件
(略) (略)
令第23条第八号の業務 両肺野にベリリウムによるび慢性の結節性陰影があること。
(略) (略)

 (以下略)

(4)誤り。安衛則第53条第2項の規定により、離職の際には「所轄都道府県労働局長」が交付する。ここに、所轄都道府県労働局長とは、同規則第4条第1項第3号により「当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長」の意味である。従って、その者の住所を管轄する都道府県労働局長が交付するとしている本肢は誤りである。

なお、離職の後には、その者の住所を管轄する都道府県労働局長が交付することとなる。

【労働安全衛生規則】

(健康管理手帳の交付)

第53条 (略)

 健康管理手帳(以下「手帳」という。)の交付は、前項に規定する要件に該当する者の申請に基づいて、所轄都道府県労働局長(離職の後に同項に規定する要件に該当する者にあっては、その者の住所を管轄する都道府県労働局長)が行うものとする。

※ 「所轄都道府県労働局長」の意味は同規則第4条第1項第3号を参照

【労働安全衛生規則】

(安全管理者の選任)

第4条 (略)

一及び二 (略)

 (略)当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)(略)

(5)正しい。安衛則第60条の規定により、健康管理手帳所持者が死亡したときは、当該手帳所持者の相続人又は法定代理人は、遅滞なく、健康管理手帳をその者の住所を管轄する都道府県労働局長に返還しなければならない。本肢は正しい。

相続人や法定代理人が複数いれば、その全員に義務が発生するが、返還はそのうちの一人が行えばよく、共同して行う必要はない。

なお、法定代理人とは、健康管理手帳の所持人が未成年者であるときは親権者、成年被後見人であるときは後見人である。代理権付与の審判があれば保佐人や補助人も法定代理人となる。

【労働安全衛生規則】

(手帳の返還)

第60条 手帳所持者が死亡したときは、当該手帳所持者の相続人又は法定代理人は、遅滞なく、手帳をその者の住所を管轄する都道府県労働局長に返還しなければならない。

2018年10月20日執筆 2020年01月11日修正