労働衛生コンサルタント試験 健康管理 2018年 問3

手腕振動による振動障害とその予防対策




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 このページは、2018年の労働安全衛生コンサルタント試験の「健康管理(記述式)」問題の解説と解答例を示しています。

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 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年度(平成30年度) 問 3 局所振動による振動障害に関する全般的な知識を問う問題である。
手腕振動による障害
2018年10月21日執筆 2020年01月25日修正

問3 手腕振動による振動障害とその予防対策に関する以下の設問に答えよ。

  • (1)振動工具を五つ挙げよ。

    • 【解説】
      振動病については、厚生労働省のパンフレット「振動障害の予防のために」を熟読すること。本問はそれだけで合格ラインはとれる。
      解答例では、振動工具を5種類に分けてそれぞれの種類ごとに例を記したが、個別の振動工具類を記しても正答になると思う。
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    • 【解答例】
      1 削岩機、ピックハンマーなどピストン内蔵工具
      2 チエンソー、刈払機など内燃機関内蔵工具
      3 タイタンパー、コンクリートバイブレータなど振動体内蔵工具
      4 インパクトレンチ、エアドライバーなど締付工具
      5 グラインダー、振動ドリルなど回転工具
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  • (2)振動障害には、循環障害、神経障害及び運動器障害がある。それぞれどんな症状か説明せよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      1 循環障害
      (末梢)循環障害の症状は軽度では、寒冷期に手指がよく冷える、冷えた時に手指に痺れを感じるといった症状が出る。さらに重篤になるとレイノー現象が出現する。レイノー現象の初発部位は振動ばく露を最も強く受けた指であり、症状が進行するにつれて出現する部位がより中枢側に広がり、さらには指本数も増える。
      2 神経障害
      (末梢)神経障害は指のしびれや触覚、痛覚、温度覚の知覚の低下などの症状がみられる。これらは寒冷により増悪する。(末梢)循環障害の症状と一部重なるので、明確な区分は困難な例もある。
      3 運動器障害
      運動機能の能力に低下をきたす症状である。加齢現象で起る変化と区別をすることが困難なことが多い。振動工具使用者だけに特徴的にみられる変化というものではない。現在では肘関節までの障害を振動障害として認め、肩関節の障害は認めていない。
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  • (3)振動障害を診断するための検査法にはどのようなものがあるか。循環障害、神経障害及び運動器障害の種別ごとにそれぞれ挙げよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      1 循環障害
      一次健康診断としては、常温下での手指の皮膚温検査や爪圧迫テストがある。
      また、第二次健康診断では、安静時の検査に加え、手指を10℃の冷水に10分間、片手を漬けてから皮膚温測定や爪圧迫テストを行う。二次健康診断では医師が必要と認めた検査を行なうことになっているので、指尖容積脈波、サーモグラフィー、皮膚血流量の測定などが追加して行われることもある。
      動脈造影も必要に応じて行われている。このほか寒冷刺激による指動脈血圧(FSBP)の変化の測定、冷風負荷皮膚温測定、レーザードップラー血流測定などが行なわれている。
      2 神経障害
      一次健康診断としては、常温下での手指等の痛覚や振動覚テストがある。
      二次健康診断としては、手指を10℃の冷水に10分間、浸漬してから痛覚や振動覚テストの回復過程を調べる。他に温・冷覚、末梢神経伝導速度検査も行われる。
      3 運動器障害
      運動機能の一次健康診断としては、最大握力(瞬発握力)、5回法による維持握力が行われる。二次健康診断としては、60%法による維持握力、つまみ力、タッピングを行う。また、必要に応じてエックス線写真撮影も行う。
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  • (4)振動ばく露時間の管理に関する以下の問に答えよ。なお、aは周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値、A(8)は日振動ばく露量を表すものとする。
    ① 振動障害を防止するにはA(8)の値に応じてどのように指導するか述べよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      A(8)が「日振動ばく露限界値」である5.0m/s2を超えることがないよう振動ばく露時間の抑制、低振動の振動工具の選定等を行う。さらに、5.0m/s2を超えない場合であっても、日振動ばく露対策値である2.5m/s2を超える場合は、振動ばく露時間の抑制、低振動の振動工具の選定等に努める必要がある。
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  •   ② 振動工具X(a=3.0m/s2)を1日2時間使用する場合にA(8)はいくらになるか答えよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      A8=a×T8m/s2](T=1日の振動ばく露時間)であるから、A(8)は1.5 m/s2 となる。
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  •   ③ 上記②に加えて振動工具Y(a=8.0m/s2)を1日30分間使用するとした場合にA(8)はいくらになるか答えよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      複数の振動工具を用いる場合、A(8)は個々の振動工具のA(8)の二乗和の平方根となる。
      従ってXのA(8)は1.5 m/s2、YのA(8)は2.0 m/s2 なので、双方の振動工具を用いた場合のA(8)は
      A(8)=1.522.02=2.5 m/s2 となる。
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  •   ④ 上記③の条件で振動工具を使用する計画に対して、作業時間についてどのように指導するか説明せよ。

    • 【解説】
      冒頭に示したパンフレットの通りにするとすれば、解答例のように指導することになろう。
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    • 【解答例】
      ③の場合、A(8)は日振動ばく露対策値の2.5[m/s2]を超えてはいないが、原則として1日の振動ばく露時間を2時間以下とするべきである。
      ただし、振動工具の点検・整備を、製造者又は輸入者が取扱説明書等で示した時期及び方法で実施するとともに、使用する個々の振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を、点検・整備の前後を含めて測定・算出している場合において、振動ばく露時間が当該測定・算出値の最大値に対応したものとなるときは、この限りではない。ただし、この場合であっても1日の振動ばく露時間を4時間以下にするようにする。
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  • (5)振動障害を生じるリスクを低減するための対策として考えられるものを五つ挙げよ。
    ただし、振動ばく露時間を制限する対策は、除くものとする。

    • 【解説】
      振動ばく露時間管理は、すでにこれまでの小問で出題されているので、重ねて答える必要はないということであろう。
      であれば、作業環境管理(温度)、作業管理(振動の少ない工具の選択、保護具の着用、作業方法の改善)、健康管理(健康診断の実施)、その他(休憩設備)など、思いついたものを整理して書くようにする。
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    • 【解答例】
      1 できるだけ振動の少ない振動工具を選定すること
      2 適切な作業標準の設定、適切な作業に関する教育等により、適切な作業方法を徹底すること
      3 健康診断の実施及びその結果に基づく措置を図ること
      4 休憩設備、衣服等の乾燥設備、暖房設備などの整備を図ること
      5 軟質の厚い防振手袋等を支給し、作業者に使用させること
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  • (6)振動障害を予防するために、日常生活についてどのような保健指導を行うか三つ挙げよ。

    • 【解説】
      解答例の通り。
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    • 【解答例】
      (1)防寒・保温等に配慮すること
      (2)体操、入浴、乾布摩擦、マッサージ等を励行すること
      (3)栄養に配慮するとともに、喫煙を控えること
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