労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生関係法令 問14

化学物質等のリスクアセスメント




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問14 難易度 化学物質等のリスクアセスメントに関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
化学物質等のRA

問14 化学物質等のリスクアセスメント等に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみをすべて挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、「リスクアセスメント対象物」とは、労働安全衛生法令により、リスクアセスメント等を行わなければならないものをいう。

イ リスクアセスメント対象物として定められている物は、危険物、有機溶剤及び特定化学物質並びにこれらを一定割合以上含む混合物である。

ロ 事業者は、リスクアセスメント対象物のリスクアセスメントを実施し、その結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

ハ リスクアセスメント対象物のリスクアセスメントは、当該調査対象物を原材料等として新規に採用するとき及びその後1年以内ごとに1回、定期に実施しなければならない。

ニ 事業者は、リスクアセスメント対象物のリスクアセスメントを行ったときは、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に対し、当該リスクアセスメント対象物の名称、リスクアセスメントの結果等の所定の事項を周知させなければならない。

(1)イ

(2)イ  ロ

(3)ロ  ハ

(4)ハ  ニ

(5)ニ

※ 本問は、出題後の法令改正に合わせて用語を修正してある。

正答(5)

【解説】

以下により、本問の正答は(5)となる。

イ 誤り。安衛法は第 57 条の3において、「第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物」の危険性又は有害性等を調査しなければならないと定めている。そして、「安衛法第 57 条第1項の政令で定めるもの」と「通知対象物」の範囲はほぼ同じ(化学物質の種類としては同じ)である。そして、これらの中には、「危険物、有機溶剤及び特定化学物質並びにこれらを一定割合以上含む混合物」以外の物も含まれている。

なお、詳細は本サイトの化学物質のリスクアセスメントの対象の見分け方を参照していただきたい。

【労働安全衛生法】

(文書の交付等)

第56条 ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるものを製造しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2~6 (略)

(表示等)

第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第1項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

一及び二 (略)

 (略)

(文書の交付等)

第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第56条第1項の物(以下この条及び次条第1項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第2項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。

一~七 (略)

2及び3 (略)

(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)

第57条の3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(名称等を表示すべき危険物及び有害物)

第18条 法第57条第1項の政令で定める物は、次のとおりとする。

 別表第九に掲げる物(アルミニウム、イットリウム、インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、タングステン、タンタル、銅、鉛、ニッケル、白金、ハフニウム、フェロバナジウム、マンガン、モリブデン又はロジウムにあつては、粉状のものに限る。)

 別表第九に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

 別表第三第一号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの

(名称等を通知すべき危険物及び有害物)

第18条の2 法第五十七条の二第一項の政令で定める物は、次のとおりとする。

 別表第九に掲げる物

 別表第九に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

 別表第三第一号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの

ロ 誤り。労働安全衛生法令に、調査対象物による危険性又は有害性等の調査結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければならないとする規定はない。

そもそもリスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)の方法を規定していないにもかかわらず、その結果を監督署長に報告してみても意味はないだろう。

ハ 誤り。安衛則第 34 条の2の7は、リスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)の実施時期を定めている。新規に採用した後、1年以内ごとに1回、定期に実施しなければならないとする規定はない。

そもそも、化学物質の用いる方法に変化がなければ、リスクにも変化がないはずであり、法令でリスクアセスメントを義務付ける根拠が薄いのである。

【労働安全衛生規則】

(化学物質管理者が管理する事項等)

第12条の5 事業者は、法第57条の3第1項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。以下「リスクアセスメント」という。)(以下略)

2~5 (略)

(リスクアセスメントの実施時期等)

第34条の2の7 リスクアセスメントは、次に掲げる時期に行うものとする。

 リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。

 リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。

 前二号に掲げるもののほか、リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。

 (略)

※ 安衛則第 34 条の2の7は、出題当時は以下のようになっていたが、2024 年4月1日施行の改正で上記のように改正された。なお、同規則第 12 条の5もこのとき新設された条文である。

(調査対象物の危険性又は有害性等の調査の実施時期等)

第34条の2の7 法第57条の3第1項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く。次項及び次条第1項において「調査」という。)は、次に掲げる時期に行うものとする。

 令第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する通知対象物(以下この条及び次条において「調査対象物」という。)を原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。

 調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき。

 前二号に掲げるもののほか、調査対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。

 (略)

ニ 正しい。安衛則第 34 条の2の8は、リスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)を実施したときは、当該リスクアセスメント対象物の名称、当該業務の内容、当該リスクアセスメントの結果及び当該リスクアセスメントの結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容を労働者に周知しなければならないとする。

【労働安全衛生規則】

(リスクアセスメントの結果等の記録及び保存並びに周知)

第34条の2の8 事業者は、リスクアセスメントを行つたときは、次に掲げる事項について、記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行つた日から起算して三年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行つたときは、三年間)保存するとともに、当該事項を、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

 当該リスクアセスメント対象物の名称

 当該業務の内容

 当該リスクアセスメントの結果

 当該リスクアセスメントの結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容

 (略)

※ 安衛則第 34 条の2の8は、出題当時は以下のようになっていたが、2024 年4月1日施行の改正で上記のように改正された。

(調査の結果等の周知)

第34条の2の8 事業者は、調査を行つたときは、次に掲げる事項を、前条第2項の調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

 当該調査対象物の名称

 当該業務の内容

 当該調査の結果

 当該調査の結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容

 (略)

※ 本問は出題当時は、以下のようになっている。その後の法令改正に合わせて用語を修正したものである。

問14 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみをすべて挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、「調査対象物」とは、労働安全衛生法令により、危険性又は有害性等を調査しなければならないものをいう。

イ 調査対象物として定められている物は、危険物、有機溶剤及び特定化学物質並びにこれらを一定割合以上含む混合物である。

ロ 事業者は、調査対象物による危険性又は有害性等を調査し、その結果を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

ハ 調査対象物の危険性又は有害性等の調査は、当該調査対象物を原材料等として新規に採用するとき及びその後1年以内ごとに1回、定期に実施しなければならない。

ニ 事業者は、調査対象物による危険性又は有害性等の調査を行ったときは、当該調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に対し、当該調査対象物の名称、調査の結果等の所定の事項を周知させなければならない。

(1)イ

(2)イ  ロ

(3)ロ  ハ

(4)ハ  ニ

(5)ニ

2017年11月03日執筆 2024年11月21日最終改訂