労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生関係法令 問13

化学物質の容器等への表示およびSDS




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問13 難易度 表示及びSDSに関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない問題である。
容器等への表示/SDS

問13 労働安全衛生法に定める危険物及び有害物の表示及び通知に関する次のイ~ニの記述について、労働安全衛生法令上、正しいもののみをすべて挙げたものは(1)~(5)のうちどれか。

ただし、「表示対象物」とは、危険物及び有害物を譲渡し、又は提供するときに、労働安全衛生法令に基づき、その名称等を容器又は包装に表示しなければならないものをいい、「通知対象物」とは、相手方に当該物の名称等を通知しなければならないものをいい、いずれも、主として一般消費者の生活の用に供するためのものを除くものとする。

イ 表示対象物として、特定化学物質の第一類物質及び第二類物質を含め、約100物質が定められている。

ロ 表示対象物を容器に入れて提供する者は、当該物の名称、人体に及ぼす作用等所定の事項をその容器に表示し、又は同事項を記載した文書を相手方に交付しなければならない。

ハ 通知対象物に関する名称等の所定の事項の相手方への通知は、文書の交付の方法によるほか、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法によることができる。

ニ 通知対象物に関する名称等の所定の事項の相手方への通知は、当該相手へ初めて譲渡し、又は提供する場合、通知対象物を提供した後、速やかに行わなければならない。

(1)イ  ロ  ハ

(2)イ  ニ

(3)ロ  ハ

(4)ロ  ニ

(5)ハ

※ 2022年5月31日公布(同日施行)の省令改正により、問題文を一部修正している。

正答(5)

【解説】

以下により、本問の正答は(5)となる。

イ 誤り。本肢の表示に関しては、安衛法第57条によって義務付けられており、その対象は安衛令第18に定められている。この数は、どのように数えるかによって全く異なるが、通常は安衛令別表第9の号の数(667=欠番や枝番があるので、最終の番号である633に等しくない)に別表第3の7物質を合わせて674物質(2023年9月時点)とされている(安衛法56条第1項の化学物質は、別表第3の7物質及びその混合物)。

ただし、その後の省令改正により、今後約2,900物質まで増加することとされている。

なお、安衛令別表第9や同第3の中には化学物質のグループを定めているものもかなりある(別表第9第38号アンチモン及びその化合物など)ため、実際の物質の数は674よりもかなり多い。また、それらを一定量含む混合物についても、定義上は「通知対象物」であるから、数だけを言えば無限にあることとなる。

また、第2類物質は、第2類物質であるという理由によっては表示対象物とはされていない。もっとも、第2類物質のすべてが別表第9中に挙げられているので、必ずしも誤りとは言えないかもしれない。

いずれにせよ100物質などということはなく、誤りである。

【労働安全衛生法施行令】

(名称等を表示すべき危険物及び有害物)

第18条 法第五十七条第一項の政令で定める物は、次のとおりとする。

 別表第九に掲げる物(アルミニウム、イットリウム、インジウム、カドミウム、銀、クロム、コバルト、すず、タリウム、タングステン、タンタル、銅、鉛、ニッケル、白金、ハフニウム、フェロバナジウム、マンガン、モリブデン又はロジウムにあっては、粉状のものに限る。)

 別表第九に掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

 別表第三第一号1から7までに掲げる物を含有する製剤その他の物(同号8に掲げる物を除く。)で、厚生労働省令で定めるもの

 (略)

ロ 誤り。安衛法第57条は、表示対象物を容器に入れて提供する者は、当該物の名称、人体に及ぼす作用等所定の事項をその容器に表示しなければならないとしている。表示の方法は、容器等が小さい場合は票箋を容器に固定する等の方法も認められているが、文書を交付することは認められていない。同条第2項で文書の提供を求めているのは、表示対象物を容器に入れずかつ包装せずに提供する場合である。

そもそも、通知対象物は同法第57条の2による文書を併せて交付しなければならないのである。仮に、問題文の記述が正しいとすれば、容器等への表示等を義務付けた意味がないであろう。

【労働安全衛生法】

(表示等)

第57条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。

 次に掲げる事項

 名称

 人体に及ぼす作用

 貯蔵又は取扱い上の注意

 イからハまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの

 前項の政令で定める物又は前条第一項の物を前項に規定する方法以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない。

ハ 正しい。安衛法第57条の2第1項及び第2項は、「文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により」一定の事項を、通知対象物を譲渡・提供する相手側に通知しなければならないとしている。そして、この「労働省令で定める方法」は安衛則第34条の2の3に「磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体の交付、ファクシミリ装置を用いた送信若しくは電子メールの送信又は当該事項が記載されたホームページのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達」とされている。

※ 本肢は出題当時は「通知対象物に関する名称等の所定の事項の相手方への通知は、文書の交付の方法によるほか、相手方が承諾した方法であれば、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法によることができる」とされており、当時の安衛則に則していた。2022変5月31日の安衛則改正により、相手側の承諾は不要とされたので問題文を修正している。

【労働安全衛生法】

(文書の交付等)

第57条の2 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第五十六条第一項の物(以下この条及び次条第一項において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第二項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。

一~七 (略)

 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(名称等の通知)

第34条の2の3 法第五十七条の二第一項及び第二項の厚生労働省令で定める方法は、磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体の交付、ファクシミリ装置を用いた送信若しくは電子メールの送信又は当該事項が記載されたホームページのアドレス(二次元コードその他のこれに代わるものを含む。)及び当該アドレスに係るホームページの閲覧を求める旨の伝達とする。

※ 安衛則第34条の2の3は、出題当時は以下のようになっていたが、2022年(令和4年)5月31日に上記のように改正された。

(名称等の通知)

第34条の2の3 法第五十七条の二第一項及び第二項の厚生労働省令で定める方法は、磁気ディスクの交付、ファクシミリ装置を用いた送信その他の方法であつて、その方法により通知することについて相手方が承諾したものとする。

ニ 誤り。安衛則第34条の2の5は「法第五十七条の二第一項の規定による通知は、同項の通知対象物を譲渡し、又は提供する時までに行わなければならない。ただし、継続的に又は反復して譲渡し、又は提供する場合において、既に当該通知が行われているときは、この限りでない」とする。従って、初めて譲渡し、又は提供する場合に、「通知対象物を提供した後」に通知せよとしているところが誤りである。

【労働安全衛生規則】

第34条の2の5 法第五十七条の二第一項の規定による通知は、同項の通知対象物を譲渡し、又は提供する時までに行わなければならない。ただし、継続的に又は反復して譲渡し、又は提供する場合において、既に当該通知が行われているときは、この限りでない。

2017年11月03日執筆 2020年03月07日修正