労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生関係法令 問11

作業環境測定士による必要のない測定




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 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問11 難易度 作業環境に関する基本問題である。確実に正答できなければならない問題。
作業環境測定

問11 次の作業環境測定のうち、法令上、作業環境測定士による測定が義務付けられていないものはどれか。

(1)常時特定粉じん作業を行う屋内作業場について、6か月以内ごとに1回、定期に行う空気中の粉じんの濃度の測定

(2)放射性物質取扱作業室について、1か月以内ごとに1回、定期に行う空気中の放射性物質の濃度の測定

(3)塩素を取り扱う屋内作業場について、6か月以内ごとに1回、定期に行う空気中の塩素の濃度の測定

(4)鉛ライニングの業務を行う屋内作業場について、1年以内ごとに1回、定期に行う空気中の鉛の濃度の測定

(5)中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるものについて、2か月以内ごとに1回、定期に行う空気中の一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率の測定

正答(5)

【解説】

作業環境測定法第3条第1項は、「事業者は、労働安全衛生法第65条第1項の規定により、指定作業場について作業環境測定を行うときは、厚生労働省令で定めるところにより、その使用する作業環境測定士にこれを実施させなければならない」とする。

さらに同条第2項本文は、「事業者は、前項の規定による作業環境測定を行うことができないときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業環境測定を作業環境測定機関に委託しなければならない」とする。そしてこの規定によって委託を受けた作業環境測定機関は、作業環境測定法施行規則第61条の規定により、その作業環境測定を作業環境測定士に実施させなければならない。

【作業環境測定法】

(作業環境測定の実施)

第3条 事業者は、労働安全衛生法第六十五条第一項の規定により、指定作業場について作業環境測定を行うときは、厚生労働省令で定めるところにより、その使用する作業環境測定士にこれを実施させなければならない。

 事業者は、前項の規定による作業環境測定を行うことができないときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業環境測定を作業環境測定機関に委託しなければならない。ただし、国又は地方公共団体の機関その他の機関で、厚生労働大臣が指定するものに委託するときは、この限りでない。

【作業環境測定法施行規則】

(作業環境測定の実施)

第61条 作業環境測定機関は、第三条第二項の規定により事業者の委託を受けて作業環境測定を行うときは、次に定めるところによらなければならない。

 簡易測定機器以外の機器を用いて行う分析は、当該事業者の指定作業場の属する別表に掲げる作業場の種類について登録を受けている第一種作業環境測定士に実施させること。

 前号に規定する分析以外の作業環境測定は、作業環境測定士に実施させること。

従って、指定作業場について作業環境測定を行うときは、事業者が自ら行う場合であっても作業環境測定機関が行う場合であっても、作業環境測定士に実施させなければならない。また、指定作業場以外の作業場所について、作業環境測定士によらなければならないとする規定はない。

   ※   ※   ※

そして、指定作業場は作業環境測定法第2条(第3号)により、「労働安全衛生法第65条第1項の作業場のうち政令で定める作業場」とされており、この規定を受けて作業環境測定法施行令第1条は、指定作業場を次のように定める。

① 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第21条第1号、第7号、第8号及び第10号に掲げる作業場

② 労働安全衛生法施行令第21条第6号に掲げる作業場のうち厚生労働省令で定める作業場

【作業環境測定法】

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一及び二 (略)

 指定作業場 労働安全衛生法第六十五条第一項の作業場のうち政令で定める作業場をいう。

四~七 (略)

【作業環境測定法施行令】

(指定作業場)

第1条 作業環境測定法(以下「法」という。)第二条第三号の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第二十一条第一号、第七号、第八号及び第十号に掲げる作業場

 労働安全衛生法施行令第二十一条第六号に掲げる作業場のうち厚生労働省令で定める作業場

   ※   ※   ※

このうち①で定めるものは、安衛令第21条でみると、次のとおりである。

一 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの

七 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場(同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを行うものを除く。)、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場

八 別表第四第一号から第八号まで、第十号又は第十六号に掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場

十 別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 (略)

 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの

二~六 (略)

 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場(同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の2に係るものを製造し、又は取り扱う作業で厚生労働省令で定めるものを行うものを除く。)、石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する屋内作業場若しくは石綿分析用試料等を製造する屋内作業場又はコークス炉上において若しくはコークス炉に接してコークス製造の作業を行う場合の当該作業場

 別表第四第一号から第八号まで、第十号又は第十六号に掲げる鉛業務(遠隔操作によつて行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場

 (略)

 別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場

また、②で定めるものは、作業環境測定法施行規則第1条(及び電離則第53条第二号及び第二号の二)により、次のように定められている。

二 放射性物質取扱作業室

二の二 事故由来廃棄物等取扱施設

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 (略)

一~五 (略)

 別表第二に掲げる放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの

七~十 (略)

【作業環境測定法施行規則】

(令第一条第二号の厚生労働省令で定める作業場)

第1条 作業環境測定法施行令(以下「令」という。)第一条第二号の厚生労働省令で定める作業場は、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)第五十三条第二号又は第二号の二に掲げる作業場とする。

【電離放射線障害防止規則】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第53条 令第二十一条第六号の厚生労働省令で定める作業場は、次のとおりとする。

 放射線業務を行う作業場のうち管理区域に該当する部分

 放射性物質取扱作業室

二の二 事故由来廃棄物等取扱施設

 令別表第二第七号に掲げる業務を行う作業場

   ※   ※   ※

これをまとめると別表のようになる。ここには、選択肢(5)の空気中の一酸化炭素及び二酸化炭素の含有率の測定は含まれていない。従って、正答は(5)となる。

受験対策上は、指定作業場は、鉱物粉じん、特定化学物質(第1類及び第2類)、石綿、コークス製造作業、鉛、有機溶剤(第1種及び第2種)、空気中の放射性物質と覚えておけばよい。

また、本問の場合、選択肢の中から最も有害性の低そうなものを選んだとしても正答に達することはできたのではなかろうか。比較的、正答率の高い問題だったのではないかと思える。

   ※   ※   ※

なお、各選択肢の「作業環境測定の義務」そのものについての規定は以下のようになっている。

   ※   ※   ※

(1)安衛令第21条は、作業環境を行うべき作業場を定めているが、その第1号に「土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの」とある。そして、この労働省令で定めるものを粉じん則第25条で「令第21条第1号の厚生労働省令で定める土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場は、常時特定粉じん作業が行われる屋内作業場とする」としている。

一方、粉じん則第26条第1項は、「事業者は、前条の屋内作業場について、6月以内ごとに1回、定期に、当該作業場における空気中の粉じんの濃度を測定しなければならない」とする。

従って、本肢の測定は義務付けられている。

(2)安衛令第21条は、作業環境を行うべき作業場を定めているが、その第6号に「別表第2に掲げる放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの」とある。

まず、本肢の「放射性物質取扱作業室」が、安衛令第21条第6号にいう「別表第2に掲げる放射線業務を行う作業場」に該当するかについて検討しよう。同別表第2第5号には「前号に規定する放射性物質・・(中略)・・の取扱いの業務」とあり、その前号(第4号)には「厚生労働省令で定める放射性物質・・・」とある。第4号の「厚生労働省令の定め」は電離則第2条第4項に「第二項に規定する放射性物質」と定められており、本肢の「放射性物質取扱作業室」の「放射性物質」とは、これを指すものと思われる。また「放射性物質取扱作業室」と「取扱」と記されているので、この作業室で行われている業務は、同別表第2第5号にいう「取扱い」なのであろう。従って本肢の「放射性物質取扱作業室」は安衛令第21条第6号にいう「別表第2に掲げる放射線業務を行う作業場」に該当するものと思われる。

次に安衛令第21条第6号にいう「厚生労働省令で定めるもの」に該当するかどうかであるが、この「「厚生労働省令の定め」は電離則第53条に定められており、その第2号に「放射性物質取扱作業室」とある。おそらく本肢で「放射性物質取扱作業室」としているのは、これと同じものなのであろう。

最後に測定の頻度であるが、これは電離則第55条に、「事業者は、第53条第2号から第3号までに掲げる作業場について、その空気中の放射性物質の濃度を1月以内ごとに1回、定期に、放射線測定器を用いて測定」しなければならないと定められている。

従って、本肢の「放射性物質取扱作業室」は作業環境測定を行うべき作業場であると考えられる。

(3)特化則第36条は、「事業者は、令第21条第7号の作業場(石綿等(中略)に係るもの及び別表第1第37号に掲げる物を製造し、又は取り扱うものを除く。)について、6月以内ごとに1回、定期に、第一類物質(令別表第三第一号8に掲げる物を除く。)又は第二類物質(別表第1に掲げる物を除く。)の空気中における濃度を測定しなければならない」としている。そして塩素は特化則別表第3第2号7に定められている第二対物質であり、同別表第1に掲げられてはいない。従って、本肢の測定は義務付けられている。

(4)安衛令第21条は、作業環境を行うべき作業場を定めているが、その第8号に「別表第4第1号から第8号まで、第10号又は第16号に掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)を行う屋内作業場」とある。そして、本肢の「鉛ライニングの業務」は安衛令別表第4の第7号の業務「鉛ライニングの業務(仕上げの業務を含む)。」である。

一方、鉛則第52条第1項は「事業者は、令第二十一条第八号に掲げる屋内作業場について、一年以内ごとに一回、定期に、空気中における鉛の濃度を測定しなければならない。」とする。

従って、本肢の測定は義務付けられている。

(5)安衛令第21条は、作業環境を行うべき作業場を定めているが、その第5号に「中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの」とある。

そして、事務所則第7条は「事業者は、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第21条第5号の室について、2月以内ごとに一回、定期に、次の事項を測定しなければならない」とする。

2017年11月03日執筆 2020年03月01日修正