労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生関係法令 問10

定期自主検査の対象となるもの




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問10 難易度 安衛法上の機械の規制に関する知識問題。合否レベルを決めた問題だろう。確実に正答したい問題。
定期自主検査の対象

問10 次の機械等のうち、労働安全衛生法令上、定期に自主検査を行わなければならないものに該当しないものはどれか。

(1)第一種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行う屋内作業場に設ける局所排気装置

(2)弗化水素を含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける排ガス処理装置

(3)特定化学設備及びその付属設備

(4)電動ファン付き呼吸用保護具

(5)透過写真撮影用ガンマ線照射装置

正答(4)

【解説】

定期自主検査の対象となる機械等は、安衛令第15条第1項によって定められている。そして、本肢の(1)及び(2)は同項第9号に定められており、(3)は第10号、(5)は第11号にそれぞれ定められている。

このうち、同項第9号は「局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの」とされており、ここにいう厚生労働省令には下記(1)及び(2)で説明しているものなどがある。

【労働安全衛生法】

(定期自主検査)

第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

 (以下略)

【労働安全衛生法施行令】

(定期に自主検査を行うべき機械等)

第15条 法第四十五条第一項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。

一~八 (略)

 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの

 特定化学設備及びその附属設備

十一 ガンマ線照射装置で、透過写真の撮影に用いられるもの

 (略)

(1)該当する。機則第20条に「令第15条第1項第9号の厚生労働省令で定める局所排気装置(有機溶剤業務に係るものに限る。)は、第5条又は第6条の規定により設ける局所排気装置とする」と定められている。そして、有機則第5条には「事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等・・(中略)・・に係る有機溶剤業務・・(中略)・・に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、・・(中略)・・局所排気装置・・(中略)・・を設けなければならない」と定められている。さらに本肢の「屋内における洗浄作業」は、有機則第1条第1項第6号チにより有機溶剤業務であると定められ(なお、屋内における作業なのでヲにも該当しない)ている。

従って本肢の「第一種有機溶剤等を用いて洗浄の業務を行う屋内作業場に設ける局所排気装置」は安衛令第15条第1項の定期自主検査を要する機械等に該当する。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~ト (略)

 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務

リ~ル (略)

 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務

 (以下略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の定期自主検査)

第20条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置(有機溶剤業務に係るものに限る。)は、第五条又は第六条の規定により設ける局所排気装置とする。

 (以下略)

(2)該当する。特化則第29条には「令第15条第1項第9号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置(特定化学物質(特別有機溶剤等を除く。)その他この省令に規定する物に係るものに限る。)は、次のとおりとする」とあり、その第4号に「第10条第1項の規定により設けられる排ガス処理装置」が定められている。そして、特化則第10条第1項には「弗化水素を含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける排ガス処理装置」が定められている。

従って本肢の「弗化水素を含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設ける排ガス処理装置」は安衛令第15条第1項の定期自主検査を要する機械等に該当する。

【特定化学物質障害予防規則】

(排ガス処理)

第10条 事業者は、次の表の上欄に掲げる物のガス又は蒸気を含有する気体を排出する製造設備の排気筒又は第四条第三項若しくは第五条第一項の規定により設ける局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置には、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排ガス処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排ガス処理装置を設けなければならない。

処理方式
(略) (略)
弗化水素 吸収方式
吸着方式
(略) (略)

 (略)

(定期自主検査を行うべき機械等)

第29条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置(特定化学物質(特別有機溶剤等を除く。)その他この省令に規定する物に係るものに限る。)は、次のとおりとする。

一~三 (略)

 第十条第一項の規定により設けられる排ガス処理装置

 (略)

(3)該当する。安衛令第15条第1項には、定期自主検査を行うべき機械等を定めているが、その第10号に「特定化学設備及びその附属設備」が定められている。従って本肢は定期に自主検査を行わなければならないものに該当する。

(4)該当しない。電動ファン付き呼吸用保護具は、安衛令第14条の2(第13号)により型式検定を受けるべき機械等である。定期自主検査の対象を定める同第15条は、同第14条の2第13号を指定していない。従って、従って本肢は定期に自主検査を行わなければならないものに該当しない。

(5)該当する。安衛令第15条第1項の定期自主検査を行うべき機械等の第11号に「ガンマ線照射装置で、透過写真の撮影に用いられるもの」が定められている。従って本肢は定期に自主検査を行わなければならないものに該当する。

2017年11月03日執筆 2020年03月01日修正