労働衛生コンサルタント試験 2017年 労働衛生一般 問11

有害要因についての健康診断の所見




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合格

 このページは、2017年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年度(平成29年度) 問11 難易度 健康診断の所見に関する高度な内容が含まれる知識問題である。合否を分けた問題だろう。
健康診断の所見

問11 有害要因についての健康診断の所見に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)騒音による聴力低下は、3,000Hz以上の高音域の聴力低下を特徴とすることが多い。

(2)紫外線による眼障害では、眼痛、結膜充血、流涙などを主訴とするびまん性表層角膜炎が認められる。

(3)米杉、ネズコ、リョウブ及びラワンの粉じんによる健康障害は、主にじん肺であるので、胸部エックス線直接撮影が健康診断において有効である。

(4)引金付工具による健康障害の自覚症状は、主に肩こりなどの頸肩腕症状、けい背痛、手指のしびれ、痛み、こわばりなどである。

(5)有機りん剤による健康障害の自覚症状は、多汗、縮瞳などであり、血清コリンエステラーゼ活性値の低下が起こる。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。労働衛生のテキストなどでは、騒音による聴力低下は4,000Hz域から始まるとされているものが多く、問題文には3,000Hzとあるので、迷った受験者もいたようである。

しかし、これは、かつての聴力検査が1,000Hz、2,000Hz、4,000Hz及び8,000Hzの4つの音叉を使用しており、騒音性難聴の初期には4,000Hzの音叉の聴力が低下したためである。必ずしも正確に4,000Hz付近から聴力が低下するというわけではない。3,000Hz以上の高音域の聴力低下を特徴とするという本肢は誤りとは言えない。

(2)正しい。紫外線は透過能力が強くないため、障害は目の表面付近にある角膜に障害を起こすことがほとんどである。

なお、紫外線によって白内障や網膜の中心部に黄斑変性症を起こすこともあり、必ずしも角膜のみに障害を起こすわけではないことには留意する必要がある。

(3)誤り。米杉、ねずこ、ラワン、リョウブ、桑、ほう、白樺等の木材粉じんばく露による業務上疾病としては、アレルギー性呼吸器疾患(アレルギー性鼻炎、気管支喘息、喉頭炎等)がある。また、木材粉じんによるがんとしては、鼻腔や副鼻腔のがんが知られている。なお、木粉によってじん肺になることがあるかについては争いがないわけではないが、ならないとする判例もあり、科学的にもないとされている。本肢は、木粉による健康障害を主にじん肺であるとしているところが誤りである。

なお、米杉、ネズコ、リョウブ及びラワンの粉じん等を発散する場所における業務は、行政指導による健康診断の対象となっており(昭和45年8月7日基発第572号)、二次検診として医師が必要と認めた場合に胸部エックス線直接撮影を行うこととされている。

(4)正しい。昭和50年2月19日基発第94号「引金付工具による手指障害等の予防について」によると、健康診断の問診として「肩こり、背痛、腕痛、項部の張り、手のしびれ、手指の痛み、こわばり、はれ及びしこり、手の脱力感、指の弾発現象等の継続する自覚症状の有無」を調べることとされている。

(5)正しい。有機りん剤は殺虫剤として用いられる農薬であるが、中毒の症状は縮瞳、発汗、流涎、筋れん縮などの症状に加え、コリンエステラーゼ活性が著しく低下する。

2019年12月01日執筆 2020年03月14日修正