労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生関係法令 問11

構造規格の対象となる呼吸用保護具




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 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問11 難易度 これは衛生管理者試験の定番の問題である。確実に正答できなければならない。
構造規格の対象

問11 次の呼吸用保護具のうち、労働安全衛生法令上、厚生労働大臣によって規格が定められていないものはどれか。

(1)酸素呼吸器

(2)アンモニア用防毒マスク

(3)電動ファン付き呼吸用保護具

(4)ろ過材及び面体を有する防じんマスク

(5)亜硫酸ガス用防毒マスク

正答(1)

【解説】

1 構造規格を満たすべきもの

安衛法第42条は、「別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものについては、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない」としている。

従って、①安衛法別表第2に掲げる物すべて、及び②政令で定めるものが、「厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない」こととなる。

なお、①は「別表第2に定めるもののうち政令で定めるもの」ではない。労働安全衛生法会い42条は「別表第二に掲げるものその他(略)政令で定めるもの」であって、「別表第二に掲げるものその他(略)政令で定めるもの」とはなっていないからである。

従って、条文上は、この①及び②について、厚生労働大臣が定める規格を具備していなければならないはずなのである。

2 除外規定

ところが、安衛令第13条第5項が、安衛法別表第2そのものを限定するという、非常に分かりにくい規定をしているのである。

(1)防じんマスク

そして、安衛令第13条第5項は、安衛法別表第2第8号に掲げる「防じんマスク」から、「ろ過材又は面体を有していない防じんマスク」を除いているのである。このため、防じんマスクは「ろ過材及び面体を有する防じんマスク」に限られることとなる。

(2)防毒マスク

また、安衛令第13条第5項は、安衛法別表第2第9号に掲げる「防毒マスク」は、「ハロゲンガス用又は有機ガス用防毒マスクその他厚生労働省令で定めるもの」に限られるとしている。そしてこの規定を受けて、安衛則第26条は、「その他厚生労働省令で定めるもの」を一酸化炭素用防毒マスク、アンモニア用防毒マスク及び亜硫酸ガス用防毒マスクと定めている。

従って「厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき」防毒マスクは以下のものに限定されることとなる。

 ① ハロゲンガス用防毒マスク

 ② 有機ガス用防毒マスク

 ③ 一酸化炭素用防毒マスク

 ④ アンモニア用防毒マスク

 ⑤ 亜硫酸ガス用防毒マスク

【労働安全衛生法】

(譲渡等の制限等)

第42条 特定機械等以外の機械等で、別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。

別表第2 別表第二(第四十二条関係)

一~七 (略)

 防じんマスク

 防毒マスク

十~十五 (略)

十六 電動ファン付き呼吸用保護具

【労働安全衛生法施行令】

(厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき機械等)

第13条 (第1項~第4項 略)

 次の表の上欄に掲げる機械等には、それぞれ同表の下欄に掲げる機械等を含まないものとする。

(略) (略)
法別表第二第八号に掲げる防じんマスク ろ過材又は面体を有していない防じんマスク
法別表第二第九号に掲げる防毒マスク ハロゲンガス用又は有機ガス用防毒マスクその他厚生労働省令で定めるもの以外の防毒マスク
(略) (略)

【労働安全衛生規則】

(規格を具備すべき防毒マスク)

第26条 令第13条第5項の厚生労働省令で定める防毒マスクは、次のとおりとする。

 一酸化炭素用防毒マスク

 アンモニア用防毒マスク

 亜硫酸ガス用防毒マスク

(1)定められていない。酸素呼吸器の規格は定められていない。

(2)定められている。防毒マスクの規格(平成2年9月26日労働省告示第68号)は、その第1条により、ハロゲンガス用防毒マスク、有機ガス用防毒マスク、一酸化炭素用防毒マスク、アンモニア用防毒マスク及び亜硫酸ガス用防毒マスクに適用される。なお、この5つは覚えておく方が良い。

(3)定められている。電動ファン付き呼吸用保護具の規格(平成26年11月28日厚生労働省告示第455号)が定められている。

(4)定められている。防じんマスクの規格(昭和63年3月30日労働省告示第19号)が定められている。ろ過材及び面体を有する防じんマスクに適用される(同規格第1条参照)。

(5)定められている。上記(2)の解説参照

2017年11月03日執筆 2020年04月14日修正