労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問16

発がん性の認められない物質




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合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2016年度(平成28年度) 問16 難易度 個々の化学物質の健康影響は頻出事項である。取りこぼしをしないようにするべき問題。
物質の発がん性

問16 次の物質のうち、発がん性が認められていないものはどれか。

(1)トリクロロエチレン

(2)ベンジジン

(3)イプシロン− カプロラクタム

(4)石綿

(5)1 , 2 − ジクロロプロパン

正答(3)

【解説】

本問は、消去法で正答に達するべき問題だ。労働省に入省して化学物質対策課に配属されたとき、当時の課長(故人)から「すべての化学物質に発がん性がある。ただ強いか弱いかだけの違いだ。(ばく露限界以下でしかばく露しないように、正しく使えば発がん性物質も怖くない。)」と言われたことを想いだした。

個々の物質に発がん性がないかといわれても答えることは難しい。明らかに発がん性があるものを外して残った肢を正答とする方法しかないだろう。

(1)認められる。トリクロロエチレンは特別有機溶剤等であり、モデルSDSの発がん区分は1Aである。従って、発がん性が認められているといえる。

(2)認められる。ベンジジンは芳香族アミンの一種である。過去に、膀胱がんによる職業性疾病が多発したことから、現時点では安衛法によって製造・使用等が禁止されている。明確に発がん性が認められている。

(3)認められない。イプシロン− カプロラクタムは、名称等を表示・通知すべき物質ではあるが、モデルSDSでは発がんについて区分外とされている。発がん性等は確認されていない。

(4)認められる。石綿の発がん性については説明するまでもないだろう。明らかに発がん性が認められている。

(5)認められる。1 , 2 − ジクロロプロパンは、大阪府の印刷業で発生した胆管がんの原因物質のひとつとされているものである。発がん性は認められている。

IARC NTP ACGIH モデルSDS
トリクロロエチレン K A2 1A
ベンジジン K A1 1A
イプシロン− カプロラクタム A5 区分外
石綿 K A1 1A
1 , 2 − ジクロロプロパン A4 1A

※ 表の見方は、当サイトの「SDSの読み方シリーズ① 発がん性について」を参考にして頂きたい。

2019年12月01日執筆 2022年03月24日最終修正