労働衛生コンサルタント試験 2016年 労働衛生一般 問02

有害物質の性状、空気中での状態など




問題文
トップ
合格

 このページは、2016年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2016年度(平成28年度) 問02 難易度 化学物質の性状・物性に関する知識問題。合否を分けるレベルだろう。確実に正答しておきたい。
有害物質の性状・物性

問02 有害物質の性状、空気中での状態などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)有機溶剤は一般に可燃性であるが、ハロゲン化炭化水素である有機溶剤の中には難燃性のものがある。

(2)ヒュームの一次粒子の粒径は、5~10μm程度である。

(3)空気中の有機溶剤の体積分率0.1 %は、1000ppmに相当する。

(4)粉じん粒子の空気力学相当径とは、その粒子と同じ終末沈降速度をもつ密度1g/cm3 の球形粒子の直径である。

(5)メタノールは、ベンゼンより極性が大きい。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。有機溶剤は可燃性のものが多いので前段は正しいと言ってよい。

後段のハロゲン化炭化水素とは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)化された炭化水素のことであり、ジクロロメタン(CH2Cl2)クロロホルム(CHCl3)トリクロロエチレン(HCCl=CCl2)などがある。

これらは油脂類を溶かすので溶媒や洗浄剤などに用いられており、広義の有機溶剤であるが、難燃性の液体である。

(2)誤り。ヒュームとは高温で蒸気となった金属が空気中で冷やされて固まったものであるが、一般の粉じんに比して、形が球形や結晶状に整っており、大きさは0.1~1μm程度である。

(3)正しい。0.1%が“1000分の1”であることは問題ないだろう。一方、ppmは“百万分率”の単位であるから、1000ppmは“1,000,000分の1,000”すなわち、“1000分の1”となる。従って、この2者は等しいので、本肢は正しい。計算間違いさえしなければ間違うことはない。

(4)正しい。粉じんについて、労働衛生上の問題について考えるとき、その大きさが重要となるが、粉じんは様々な形状をしており、大きさを直径や長さで表すことは困難である。また、現実の大きさよりも、それが空気という流体の中でどのようにふるまうかの方がより重要でもある。

そこで、流体の中でどのようにふるまうかを表す指標として、空気力学相当径(別名:空気動力学的径(aerodynamic diameter))という概念が考察された。具体的には、様々な直径の水滴(密度1g/cm3の球形の粒子であればよい)の終末沈降速度を調べておき、ある粉じんについて、その粉じんの終末沈降速度と等しい水滴の粒子の直径を、その粒子の空気動力学径であるとするのである。このため、同じ空気動力学径の粉じんは、空気中で同じ挙動を示すこととなる。従って本肢は正しい。

なお、水滴ではなく、その粉じんと同じ物質で、同じ終末沈降速度となる球形粒子の直径をストークス径という。

(5)正しい。物質の極性とは、分子内に存在している電気的な偏りのことである。極性が大きな物質は、極性の大きな溶剤には溶けやすいが、極性の小さな溶剤には溶けにくい。そして、メタノールは極性分子であるが、ベンゼンは無極性分子である。従って本肢は正しい。なお、水は極性分子であって、メタノールより極性が大きいことも覚えておこう。

溶媒名 Rohrschneider
の極性パラメータ
シクロヘキサン -0.2
n-ヘキサン 0.1
四塩化炭素 1.6
イソプロピルエーテル 2.4
トルエン 2.4
ベンゼン 2.7
塩化メチレン 3.1
二塩化エチレン 3.5
イソプロピルアルコール 3.9
テトラヒドロフラン 4.0
n-プロパノール 4.0
クロロホルム 4.1
エタノール 4.3
酢酸エチル 4.4
メチルエチルケトン 4.7
ジオキサン 4.8
アセトン 5.1
メタノール 5.1
アセトニトリル 5.8
酢酸 6.0
ジメチルホルムアミド 6.4
エチレングリコール 6.9
ジメチルスルホキシド 7.2
10.2
2019年12月01日執筆 2020年04月17日修正