労働衛生コンサルタント試験 2015年 労働衛生一般 問20

労働衛生の観点からみた座った姿勢




問題文
トップ
合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2015年度(平成27年度) 問20 難易度 労働衛生の観点からみた座った姿勢に関する基本的な知識問題。確実に正答したい問題である。
座った姿勢と労働衛生

問20 座った姿勢に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)椅座位は、立位に比べて身体全体への負担は小さいが、腰椎にかかる負担は大きい。

(2)足で繰り返しペダル操作をする作業は、立位よりも椅座位で行う方が適している。

(3)車両運転中の振動は、腰部の末梢血流を増加させる。

(4)静脈還流は、椅座位よりも立位の方が阻害されやすい。

(5)背もたれを直立から後ろに倒していき、座面と背もたれの作る角度が大きくなるに従って椎間板内圧は低くなる。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。「立位」「椅子座位」「椅子座位(背もたれ付き)」「椅子座位(机にもたれる)」の4つについて、腰部椎間板の圧迫力を大きい順に並べると次のようになる。

① 「椅子座位」

② 「椅子座位(背もたれ付き)」

③ 「立位」

④ 「椅子座位(机にもたれる)

なお、「椅子座位」と「立位」では「椅子座位」の方が2倍近く大きいが、「立位」と「椅子座位(机にもたれる)」ではそれほど違いがあるわけではない。

(2)正しい。これは常識で考えるしかない。このようなことを解説している参考書はかなり専門的なものであり、受験者が知識として知っているようなことは多くないと思われる。

片方の足で立って、もう一方の足でペダルを操作する場合、体重を片方の足にかけるより椅子の座面にかける方が足に加わる力を軽減できる。また、椅子に座っている方が、体を不自然にひねるおそれも少なくなる。

(3)誤り。振動が末梢血流を増加させるようなことはない。なお、上体を真直に伸ばした椅座位は、自然にリラックスした椅座位に比べても、振動の影響を受けやすく、振動により筋緊張や反射が高まり、末梢血流が減少する。本肢は誤っている。

なお、振動病の症状である白ろう指は、振動、寒冷、騒音の3つの要因によって、全身の自律神経系が緊張状態になり、手指の細小動脈が収縮して、循環血流量が減少することによって発症するとされている。

(4)正しい。血液は、心臓から送り出されて動脈から各組織へ流れ、栄養分や酸素を供給した後、静脈へ送られ、右心房に吸い込まれる。静脈還流とは、この各組織から静脈を通って右心房への血液の流れのことをいう。これが阻害されると“むくみ”が起きる。

長時間の立位や座位を持続すると、重力と筋緊張の持続によって静脈にかかる圧力が増加する。このため、血中の水分が組織間隙に貯留しやすくなりむくみが発生する。これは、立位作業と座位作業を交互に繰り返すようにしたり、作業の途中で適度な運動を行ったりして避けるようにする。

(5)正しい。これは、ある意味で常識問題であろう。椎間板にかかる体重を、椎間板を圧迫する方向の分力と、背中側への分力に分解して考えよう。背もたれを直立から後ろに倒していき、座面と背もたれの作る角度が大きくなると、椎間板を圧迫する分力は小さくなり、背もたれの方向への分力が大きくなる。

分かりにくければ、背もたれを完全に倒して水平にした場合と、垂直にした場合で、椎間板にかかる内圧がどうなるかを考えれば分かりやすいだろう。

2019年12月01日執筆 2020年05月05日修正