労働衛生コンサルタント試験 2015年 労働衛生一般 問17

作業環境測定デザインにおける留意事項




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合格

 このページは、2015年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2015年度(平成27年度) 問17 難易度 作業環境測定におけるデザインに関する初歩的な知識問題。正答できなければならない。
作業環境測定のデザイン

問17 作業環境測定におけるデザインを行う者が留意すべき事項に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)測定の委託者が原材料中に含まれる有害物質の種類を十分把握していない場合には、原材料などに関する安全データシート(SDS)を活用して、含有する有害物質の種類の確認を行う。

(2)測定対象作業場の主業務の他に付随的な業務で法的に測定義務のある物質を発散する業務が行われることがあるので、衛生管理者、作業主任者などと事前の打合せを行い、作業の実態を十分に把握する。

(3)測定対象物質が、どのような形態で発散し、どのような状態で環境空気中に存在するかを把握する。

(4)混合有機溶剤の場合、各成分がその含有率と同じ割合で環境空気中に発散するので、各成分の含有率を把握する。

(5)取り扱う原材料によっては、温度などの条件や生産過程によって、有害物質の発散の程度が著しく変動する場合があるので注意を要する。

正答(4)

【解説】

これは、サービス問題であろう。本問は、特定の法令や指針の内容に関する知識問題ではなく、“適切でないもの”を問うている。常識で解答できる。なお、作業環境測定基準(昭和51年4月2日労働省告示第46号:最終改正令和2年1月27日厚生労働省告示第18号)には、本問に関する規定はない。

(1)適切である。原材料などに関する安全データシート(SDS)を活用して、含有する有害物質の種類の確認を行うこと自体が、適切でないわけがなかろう。依頼主が作業環境測定の必要性のある物質を使用していることを知らないのであれば、作業環境測定士の側で、そのような物質を使用していないかを調べることは望ましいことである。本肢は適切でないとは言えない。

(2)適切である。これも適切でないと考える余地がない。あえて言えば、「法的に測定義務のある」ものに限定していることが不適切と言って言えなくもない。法令や通達で測定すべきとされていない物質であっても、測定することが望ましい物質が存在するおそれがあるからである。

しかし、本肢には「法令等で測定すべきとされていない物質について、把握する必要がない」とは書かれていない。従って、適切でないとまでは言えない。

(3)適切である。これも適切でないと考える余地がない。

(4)適切ではない。混合有機溶剤の場合、各成分がその含有率と同じ割合で環境空気中に発散するわけがあるまい。気化しやすい物質と気化しにくい物質の混合物について、その液体の濃度比と気中の濃度比が同じにならないことは理解できるであろう。

(5)適切である。本肢の前段で、「取り扱う原材料によっては、温度などの条件や生産過程によって」と2度も状況を限定し、後段では「場合がある」とさらに限定している。化学物質の発散についてここまで限定すると不適切になるわけがない。仮に、水の場合であっても、0℃以下で使用する場合と、100℃以上で使用する場合で、気中への発散量が異なることは分かるであろう。本肢は適切でないと考える余地がない。

2019年12月01日執筆 2020年05月04日修正