労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生関係法令 問03

じん肺の予防、健康管理等の措置




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問03 難易度 じん肺の予防、健康管理等の措置に関する基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
じん肺予防、健康管理等

問3 じん肺の予防、健康管理等の措置に関する次の記述のうち、じん肺法及び関係法令上並びに粉じん障害防止規則上、正しいものはどれか。

(1)じん肺法及び粉じん障害防止規則は、粉じんによる健康障害の防止に関する措置を規定するもので、じん肺法施行規則の別表に定める粉じん作業と、粉じん障害防止規則の別表第一に定める粉じん作業は同一である。

(2)粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であった者については、じん肺健康診断の結果に基づき、管理一、管理二、管理三又は管理四(イ及びロ)に区分して健康管理を行うものとされている。

(3)粉じん作業のうち特定粉じん作業に常時従事する労働者のじん肺健康診断を行ったときは、受診者すべてのエックス線写真及びじん肺健康診断結果証明書等を都道府県労働局長に提出して、じん肺管理区分の決定を受けなければならない。

(4)常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事し、じん肺管理区分が管理二であるものに対しては、3年以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

(5)じん肺健康診断の結果、エックス線写真像の大陰影及び著しい肺機能の障害があると認められる者又は続発性気管支炎等の合併症にかかっていると認められる者は管理四に区分され、療養を要するものとされている。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。まず、粉じんによる障害対策の法令には、(作業環境測定法を別にして)

 安衛法 ⇒ 安衛令 ⇒ 粉じん則

 じん肺法 ⇒ じん肺法施行規則

の2つの系統があることを押さえておこう。Ⅰは粉じんによる障害の予防のための法令であり、Ⅱは、じん肺に関する健康管理のための法令である。

じん肺法施行規則の別表粉じん障害防止規則の別表第一に定める粉じん作業は、似通ってはいるが完全に同一ではない。例えば、じん肺則別表の第三号ハや第六号のロの除外規定は、粉じん則別表第1では除外されていない。

また、じん肺則別表の第二十四号は「石綿」を取り扱う作業等を定めているが、粉じん則では石綿を規制していない。これは、安衛法の委任によって定められている省令には、粉じん則の他に石綿則もあり、石綿は石綿則によって規制されているためである。

【粉じん障害防止規則】

別表第1 (第二条、第三条関係)

一及び二 (略)

 坑内の、鉱物等を破砕し、粉砕し、ふるい分け、積み込み、又は積み卸す場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。

 湿潤な鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業

 水の中で破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業

三の二~五の三 (略)

 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業を除く。

七~二十三 (略)

【じん肺法施行規則】

別表 (第二条関係)

一及び二 (略)

 坑内の、鉱物等を破砕し、粉砕し、ふるい分け、積み込み、又は積み卸す場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。

 湿潤な鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業

 水の中で破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業

 設備による注水をしながらふるい分ける場所における作業

三の二~五の三 (略)

 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。

 火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業

 設備による注水又は注油をしながら、裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業

七~二十三 (略)

(2)誤り。じん肺法第4条第2項では、管理3をイ及びロに区分する。管理4をイ及びロに区分するのではない。

【じん肺法】

(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)

第4条 (略)

 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。

じん肺管理区分 じん肺健康診断の結果
管理一 じん肺の所見がないと認められるもの
管理二 エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理三 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理四

(1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの

(2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

(3)誤り。エックス線写真及びじん肺健康診断結果証明書等を都道府県労働局長に提出して、じん肺管理区分の決定を受けなければならないのは、「じん肺の所見があると診断された労働者」であって「すべての者」ではない。

【じん肺法】

(定期健康診断)

第8条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年

 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年

 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年

 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年

 (略)

(事業者によるエックス線写真等の提出)

第12条 事業者は、第七条から第九条の二までの規定によりじん肺健康診断を行つたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。

(4)正しい。じん肺法第8条第1項(第3号)により正しい。なお、条文は(3)の解説を参照されたい。

(5)誤り。管理区分の決定方法はじん肺法第4条に示されている。続発性気管支炎等の合併症にかかっていると認められる者は、すべて管理4に区分されるわけではない。

なお、じん肺法第23条により、管理四の者及び合併症にかかつている者は療養を要するため、結論は正しい。

【じん肺法】

(エックス線写真の像及びじん肺管理区分)

第4条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。

エックス線写真の像
第一型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第二型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第三型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第四型 大陰影があると認められるもの

 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。

じん肺管理区分 じん肺健康診断の結果
管理一 じん肺の所見がないと認められるもの
管理二 エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理三 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理四

(1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの

(2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

(療養)

第23条 じん肺管理区分が管理四と決定された者及び合併症にかかつていると認められる者は、療養を要するものとする。

2020年05月15日執筆