労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生関係法令 問01

事業場の安全衛生管理体制




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問01 難易度 労働安全衛生管理体制に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
労働安全衛生管理体制

問1 事業場の安全衛生管理体制に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)事業の実施を統括管理している所長を総括安全衛生管理者として選任し、第一種衛生管理者免許を有する者2名を衛生管理者として選任している常時使用労働者数300人のガス業の事業場において、総括安全衛生管理者又は衛生管理者が旅行等のため職務を行うことができないときは、いずれの場合もその代理者を選任しなければならない。

(2)常時使用労働者数 1200 人で、そのうち著しく暑熱な場所における業務に常時 30 人の労働者が従事している製造業の事業場では、4人以上の衛生管理者を選任し、そのうち少なくとも1人は専任の衛生管理者とするほか、1人は衛生工学衛生管理者免許を有する者としなければならない。

(3)事業者は、衛生管理者に対して、総括安全衛生管理者が統括管理すべき業務のうち衛生に係る技術的事項を管理させるとともに、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。

(4)常時使用労働者数500 人で、そのうち枇素、水銀等の化学物質を取り扱う有害業務に常時 30 人の労働者が従事している製造業の事業場では、専属の産業医を選任して有害業務従事者の特殊健康診断を行わせなければならない。

(5)塩酸、硝酸又は硫酸のガス、蒸気が発散する場所における業務に常時 50 人の労働者が従事している事業場では、歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。安衛則第3条により、総括安全衛生管理者が旅行などのやむを得ない事由で職務を行なうことができないときは、事業者は代理者を選任しなければならない。そして、本条は同規則第7条第2項により衛生管理者に準用されている。

もちろんこれは、それらの総括安全衛生管理者及び衛生管理者が安衛法によって選任が義務付けられている場合であることは当然である。この事業場は常時使用労働者数300人のガス業の事業場であるから、安衛令第2条(第二号)により総括安全衛生管理者を選任しなければならず、安衛則第7条第1項(第四号)の規定により衛生管理者を2人選任しなければならない。

従って、これらの者は安衛法令によって選任が義務付けられているので、代行者の選任も必要となる。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 (以下略)

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(総括安全衛生管理者を選任すべき事業場)

第2条 労働安全衛生法(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める規模の事業場は、次の各号に掲げる業種の区分に応じ、常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する事業場とする。

 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 百人

 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 三百人

 その他の業種 千人

(衛生管理者を選任すべき事業場)

第4条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(総括安全衛生管理者の代理者)

第3条 事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によつて職務を行なうことができないときは、代理者を選任しなければならない

(衛生管理者の選任)

第7条 法第十二条第一項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一~三 (略)

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模(常時使用する労働者数) 衛生管理者数
五十人以上二百人以下 一人
二百人を超え五百人以下 二人
五百人を超え千人以下 三人
千人を超え二千人以下 四人
二千人を超え三千人以下 五人
三千人を超える場合 六人

五及び六 (略)

 第二条第二項及び第三条の規定は、衛生管理者について準用する

(2)正しい。衛生管理者の選任の義務については、安衛法の第12条に規定されている。本肢の場合の要件は以下の通りとなる。

① 労働者数 安衛則第7条第1項第4号の規定により、常時雇用する労働者数が1,200人の事業場では、業種に関わりなく4人の衛生管理者を選任しなければならない。

② 資格 安衛則第7条第1項第6号規定により、著しく暑熱な場所における業務に常時 30 人の労働者が従事している事業場では、少なくとも1人衛生工学衛生管理者免許を有する者のうちから選任しなければならない。

③ 専属関係 安衛則第7条第1項第3号イの規定により、著しく暑熱な場所における業務に常時 30 人の労働者が従事している事業場では、少なくとも1人は専任の衛生管理者としなければならない。

以上より、本肢は正しい。

【労働安全衛生法】

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の選任)

第7条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

一~二 (略)

 次に掲げる業種の区分に応じ、それぞれに掲げる者のうちから選任すること。

 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者

 その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許を有する者又は第十条各号に掲げる者

 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。

事業場の規模(常時使用する労働者数) 衛生管理者数
五十人以上二百人以下 一人
二百人を超え五百人以下 二人
五百人を超え千人以下 三人
千人を超え二千人以下 四人
二千人を超え三千人以下 五人
三千人を超える場合 六人

 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも一人を専任の衛生管理者とすること。

 常時千人を超える労働者を使用する事業場

 常時五百人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第十八条各号に掲げる業務に常時三十人以上の労働者を従事させるもの

 常時五百人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第十八条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時三十人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち一人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること

 (略)

【労働基準法施行規則】

第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激なる業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

(3)正しい。安衛法第12条の規定により、事業者は、衛生管理者に対して、総括安全衛生管理者が統括管理すべき業務のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。また、安衛則第11条第2項の規定により、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。

【労働安全衛生法】

(総括安全衛生管理者)

第10条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

一~五 (略)

 (以下略)

(衛生管理者)

第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)

第11条 (略)

 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。

(4)誤り。安衛則第13条第1項(第三号)により、枇素、水銀等の化学物質を取り扱う有害業務に常時500人以上の労働者を従事させている事業場では産業医を専属としなければならない。

常時使用労働者数500 人で、そのうち枇素、水銀等の化学物質を取り扱う有害業務に常時 30 人の労働者が従事している製造業の事業場では、専属の産業医を選任しなければならないわけではない。

また、産業医に有害業務従事者の特殊健康診断を行わせなければならないとする規定はない。

【労働安全衛生法】

(産業医等)

第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

2~6 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(産業医を選任すべき事業場)

第5条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

【労働安全衛生規則】

(産業医の選任等)

第13条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

一及び二 (略)

 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。

 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

 異常気圧下における業務

 さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

 重量物の取扱い等重激な業務

 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

 坑内における業務

 深夜業を含む業務

 水銀、砒素、黄りん、弗化化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

 病原体によって汚染のおそれが著しい業務

 その他厚生労働大臣が定める業務

 (略)

2~6 (略)

(5)正しい。塩酸、硝酸又は硫酸のガス、蒸気が発散する場所における業務に常時 50 人の労働者が従事している事業場では、歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(健康診断を行うべき有害な業務)

第22条 (第1項及び第2項 略)

 法第六十六条第三項の政令で定める有害な業務は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務とする。

【労働安全衛生規則】

(産業医及び産業歯科医の職務等)

第7条 (第1項~第4項 略)

 事業者は、令第二十二条第三項の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については、第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。

6及び7 (略)

2020年05月14日執筆