労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問20

椎間板




問題文
トップ
合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2014年度(平成26年度) 問20 難易度 椎間板に関するやや高度な知識問題である。医師以外の受験生には難問だろう。
椎間板

問20 椎間板に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)椎間板は、10 代後半から次第に水分を失い、弾力性も減少する。

(2)椎間板は、その形状を変えることにより脊柱にかかる圧力を弾力的に受け止める働きをしている。

(3)椎間板内圧は、立位よりも椅座位のほうが高くなる。

(4)立ち作業時に前屈姿勢や過伸展姿勢をとると、椎間板内圧は低くなる。

(5)椎間板自体の老廃物の排出や栄養素の取り込みは、椎間板内圧の増減の繰り返しにより促進される。

正答(4)

【解説】

椎間板は、背骨を形成する椎骨と椎骨の間にある組織で、線維輪という硬い外枠の中に髄核というゲル状の成分が詰まった構造をしている。軟骨でできており、この部分があることで背骨を曲げることができるとともに、クッションの役割を果たしている。

(1)正しい。椎間板は水分を含むことができ、水を含んだり排出したりして伸縮する。椎間板が含む水分の量は10歳代後半頃までは80~90%弱といわれる。10歳代後半からは加齢に伴い徐々に水分が失われていく。

(2)正しい。椎間板は、柔らかい組織で形を変えることができ、また、髄核が水分を吸収したり排出したりすることによりその体積を変えることができる。これにより脊柱にかかる圧力を弾力的に受け止めるクッションのような働きをしている。

(3)正しい。Nachemson.によると、姿勢と椎間板内圧の関係は次のようになる1)

姿勢 椎間板内圧
あおむけ寝 25
横向き寝 75
立位 100
立って前傾 150
立って前傾で荷物を持つ 220
座位(椅子座位) 140
座って前傾 185
座って前傾で荷物を持つ 275

椎間板の内圧は立位を100として表した数値である。

(4)誤り。2013年(平成25年)に改正された「職場における腰痛予防対策指針及び解説 」には「立ち作業」の解説として「作業機器や作業台の配置が適当でない場合は、前屈姿勢(おじぎ姿勢)や過伸展姿勢(反返りに近い姿勢)を強いられることになるが、これらの姿勢は椎間板内圧を著しく高めることが知られている」とされている。

(5)正しい。椎間板には血管は通じておらず、椎間板内圧の増減による水分の吸収・排出によって、老廃物の排出や栄養素の取り込みが行われる。

すなわち、椎間板内圧が低くなる(例えば立位から臥床したとき)と周囲から水分と共に栄養を吸収し、椎間板内圧が高くなる(例えば臥床から立位)と老廃物を水分と共に排出する。

  1. 1)Nachemson.A.L.「The lumbar spine an orthopedic challenge」(spine 1,1976)
2020年05月23日執筆