労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問17

作業環境測定のデザイン




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合格

 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問17 難易度 作業環境測定のデザインに関するやや高度な知識問題である。合否を分けるレベルか。確実に正答したい。
作業環境測定のデザイン

問17 作業環境測定のデザインに関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)気中濃度が高くなると思われる場所が 2 か所以上あり、どこが最大濃度になるか予測できなかったため、それらのすべての点で測定を行い、得られた測定値のうち最大のものを B 測定値とした。

(2)単位作業場所の範囲を決定する際に、対象作業場を良く知っている衛生管理者や設備担当者等の助言を求めた。

(3)A 測定の測定点を決めるに当たり、単位作業場所の中に発生源と思われる機械が規則的に並んでいたので、この規則性と外れるような間隔となるように測定点を決定した。

(4)過去の作業環境測定結果から、測定値の幾何標準偏差が 1.5 以下であることが明らかであるため、測定点を決定するために想定する直線の間隔を 8 m 間隔に設定した。

(5)単位作業場所において、等間隔に引いた縦横の線に従って A 測定の測定点を設定したが、測定点の一つが生産設備と重なり、労働者の呼吸域となることがないので、ここを測定対象から除外して A 測定を実施した。

正答(4)

【解説】

本問は、作業環境測定基準からの出題である。

作業環境測定のA測定、B測定の基本的な方法は、作業環境測定基準第2条第1項1号から3号までに定められている。なお、第2条の規定は粉じんの濃度等の測定に関するものであるが、特定化学物質、石綿(3号但書きを除く。)、鉛(3号但書きを除く。)及び有機溶剤の測定についても準用されている。

【作業環境測定基準】

(粉じんの濃度等の測定)

第2条 労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号。以下「令」という。)第二十一条第一号の屋内作業場における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度の測定は、次に定めるところによらなければならない。

 測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。以下同じ。)の床面上に六メートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上五十センチメートル以上百五十センチメートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。ただし、単位作業場所における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、測定点に係る交点は、当該単位作業場所の床面上に六メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とすることができる。

一の二 前号の規定にかかわらず、同号の規定により測定点が五に満たないこととなる場合にあっても、測定点は、単位作業場所について五以上とすること。ただし、単位作業場所が著しく狭い場合であって、当該単位作業場所における空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、この限りでない。

 前二号の測定は、作業が定常的に行われている時間に行うこと。

二の二 土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、前三号に定める測定のほか、当該作業が行われる時間のうち、空気中の土石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うこと。

 一の測定点における試料空気の採取時間は、十分間以上の継続した時間とすること。ただし、相対濃度指示方法による測定については、この限りでない。

 (略)

2及び3 (略)

(1)適切である。作業者がばく露する危険のある最も高い濃度を調べるのがB測定である。気中濃度が高くなると思われる場所が2か所以上あり、どこが最大濃度になるか予測できなければ、本肢のようにするしかない。

なお、作業環境測定基準様式第2号には「『B測定値』の欄は、二以上の測定点においてB測定を行った場合には、そのうちの最大値を記入すること」とされている。

(2)適切である。単位作業場所の範囲を決定する際に、対象作業場を良く知っている衛生管理者や設備担当者等の助言を求めることは当然であろう。事業者側の人間に助言を求めることはとくに禁止されていないし、測定の依頼者側に助言を求めなければ適切な測定はできない。

本肢は出題意図がよく分からない。事業者側の人間に助言を求めると作業環境測定が的確に行われなくなるのではないかという論点かもしれないが、そもそも、安衛法で測定の義務を課せられているのは事業者である。事業者側が単位作業場所の決定にかかわらない方がおかしいだろう。

また、作業環境測定の素人に助言を求めるのはおかしいという論点だとすると、最終的に決定するのは専門家なのだから、たんなる「助言」に問題があるとは思えないし、作業場所の状況を知っているのは職場側の職員である。その意味で、本肢は、不適切とする余地がないのである。

なお、「良く知っている」は「よく知っている」の誤植であろう。

(3)適切である。A測定の趣旨は、作業場の平均的な濃度を調べるものであるから、測定点を決めるに当たり、発生源と思われる機械の配置の規則性と外れるような間隔となるように測定点を決定することは好ましいことである。

なお、作業環境測定基準第2条は、間隔を原則として6m以下とすることを求めており、その要件に合致していれば基準に違反することはない。

(4)適切ではない。作業環境測定基準第2条の規定は、測定点を決定するために想定する直線の間隔は6m以下とすることが求められているが、測定対象物がほぼ均一であることが明らかなときは6m超えることができることとされている。

しかしながら、昭和63年9月16日基発第604号「作業環境測定基準の一部改正について」によれば、「ほぼ均一であることが明らかなとき」とは「過去において実施した作業環境測定の記録により、測定値の幾何標準偏差がおおむね1.2以下であることが明らかなときがあること」とされており、本肢の「測定値の幾何標準偏差が 1.5 以下であることが明らかである」ことは、「ほぼ均一であること」に該当しない。

(5)適切である。作業環境測定基準第2条によって定められる測定点は、カッコ書きによって「設備等があって測定が著しく困難な位置を除く」とされている。

そして、(4)で述べた昭和63年9月16日基発第604号「作業環境測定基準の一部改正について」にある「『設備等があって測定が著しく困難な位置を除く』とは、設備等があるために労働者の呼吸域となることが考えられないような位置を除く趣旨であって、設備等の上に労働者が乗り出す等により労働者の呼吸域となる可能性のある位置は、これに該当しないものであること」にも適合している。

2020年05月23日執筆