労働衛生コンサルタント試験 2014年 労働衛生一般 問02

有機溶剤の物理的性質等




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 このページは、2014年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2014年度(平成26年度) 問02 難易度 有機溶剤の物性等に関するごく基本的な知識問題。確実に正答できなければならない。
有機溶剤の物性等

問02 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)有機溶剤の中には、脂溶性と水溶性の両方の性質を示すものがある。

(2)有機溶剤の蒸気は、一般に空気より軽いので拡散しやすい。

(3)有機溶剤は一般に可燃性であるが、ハロゲン化炭化水素系の有機溶剤の中には難燃性のものがある。

(4)有機溶剤は、沸点が低いほど 25 ℃における蒸気圧は高い傾向がある。

(5)蒸発して蒸気となった有機溶剤でも、皮膚から吸収されることがある。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。有機溶剤は脂溶性の溶剤であるが、メタノール、アセトンなどは脂溶性とともに水溶性をも有する。

なお、以下の2点も覚えておく必要がある。

① ヘキサン、ジクロロメタン等は水溶性を示さない。

② 脂溶性と水溶性を合わせて有するものはとくに経皮吸収されやすい。

(2)誤り。空気の分子量は約29であり、22.4リットル当たりの重さが約29gとなる。一方、代表的な有機溶剤の分子量は、トルエン:92.14、キシレン(m-体):106.17、シクロヘキサン:84.16、アセトン:58.08、メタノール32.04、エタノール46.07などで、いずれも空気より重い。

このため、有機溶剤の使用温度が常温であれば、局所排気装置は一般に下方吸引の方が効率的であり、センサーは低い位置につける方が好ましい。

(3)正しい。一般的な意味の有機溶剤とは「モノを溶かす性質を持つ有機物」であり、炭素と水素を含む化合物である。一般に可燃性であるが、ハロゲン化炭化水素には難燃性のものがある。

なお、ハロゲンとはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素及びアスタチンであり、炭化水素中の水素がハロゲンに置き換わったものをハロゲン化炭化水素という。多くは液体である。ハロゲン化炭化水素は全く燃焼しないわけではないが、化合物中のハロゲン原子の数の増加に従って燃焼性が低下する。ハロゲン原子の数が多いものはそれ自体が難燃性で、ある程度の難燃効果を有している。

(4)正しい。沸騰とは、飽和蒸気圧が大気圧に等しくなったときに起きる現象である。液体の温度が上昇して飽和蒸気圧が大気圧に等しくなると、液体内部で蒸気が発生し、連続して気泡が生じるようになる。これが沸騰である。

常温(25℃)での蒸気圧が高ければ、低い温度でも飽和蒸気圧が大気圧が等しくなるので、沸点は低くなる。飽和蒸気圧が高ければ蒸発しやすいので、沸騰もしやすいと覚えておけばよい。

(5)正しい。これまでの中毒事例や実験結果によって、ジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミドなど多くの有機溶剤は、経皮吸収されると考えられている。

2020年05月17日執筆