労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問23

作業負担の評価




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問23 難易度 やや高度な内容の肢もあるが、全体として基本的な知識で正答可能な問題である。
作業負担の評価

問23 作業負担の評価に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エネルギ一代謝量は、呼気分析によって推定することができる。

(2)基礎代謝量は、座位姿勢で安静にしている状態で測定する。

(3)筋負担の大小は、筋電図の振幅の大小によって推定することができる。

(4)フリッカー値は、中枢神経系の疲労の指標として用いられる。

(5)フリッカー値は、疲労が増すと低くなる。

正答(2)

【解説】

(1)正しい。食物から得た栄養素から得られる熱エネルギーは、炭水化物で4kcal/g、脂肪で9kcal/g、タンパク質で4kcal/gであるとされている。このうち、炭水化物と脂肪は最終的に二酸化炭素と水に分解され、タンパク質は尿中窒素に分解される。そこで、呼吸中の酸素及び二酸化炭素の量と尿中の窒素の量から、エネルギーがどれだけ生成されたかが推定できるのである。

エネルギー消費量(kcal) = 3.941 × 酸素摂取量 + 1.106 × 二酸化炭素産生量 – 2.17 × 尿中窒素量

そして、3大栄養素のうち摂取エネルギーに占めるタンパク質の割合は安定しているので、タンパク質の割合を12.5%と仮定すると上式は次のようになる。これをWeirの式という。

エネルギー消費量(kcal) = 3.9 × 酸素摂取量 + 1.1 × 二酸化炭素産生量

従って、吸気中の酸素量と二酸化炭素量は空気の濃度に呼吸量を乗じることで算出できるので、呼気中の酸素量及び二酸化炭素量を測定することにより、エネルギ一代謝量を推定することができるのである。

※ 厚生労働省WEBサイト「e-ヘルスネットエネルギー代謝の評価法」を参照した。

(2)誤り。基礎代謝とは、身体的・精神的に安静にしている状態でのエネルギー代謝量のことである。生命維持に必要な最低のエネルギーである。これを正確に測定するには、食後14時間が経過した時点で、ベッドに仰向きに寝て安静にし、吸気と呼気中の酸素と二酸化酸素の濃度を測定することによって行う。

なお、現実には、デジタル体組成計で簡易的に測定できる。

(3)正しい。筋電図とは、個々の筋線維が収縮したときに発生する電圧(活動電位)を電極(筋肉に刺した針)によって測定してグラフ化したものである。

通常、筋力低下が神経、筋肉、神経筋接合部のいずれの疾患によるものか判断することが臨床的に困難な場合に、これを確認するために行われる検査である。

筋電図の振幅の大小によって筋負担の大小を推定することは可能である。

(4)正しい。光点を高速で点滅させ、点滅の周波数を徐々に上げていくと、ある周波数のときに「ちらつき感」が消えて、連続した光と感じられる。これをちらつきの融合といい、融合を起こしたときの点滅周波数をフリッカー値(Critical Flicker Fusion Frequency)という。

フリッカー値は、大脳皮質全般の活動性を表示する機能指標であることから、中枢神経系の疲労指標ともなり、産業疲労のテストに用いられる(※)

※ 橋本邦衛「精神疲労の検査」(人間工学 Vol.17,No.3,1981年)を参照した。

(5)正しい。フリッカー値は、疲労が増すと低くなる。映画を見ていても、身体の調子が良いと、画面が不連続な動きに見えることがあることを経験した方もおられるだろう。

2021年03月13日執筆