労働衛生コンサルタント試験 2013年 労働衛生一般 問22

GHS




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 このページは、2013年の労働安全衛生コンサルタント試験の「労働衛生一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2013年度(平成25年度) 問22 難易度 GHS分類と区分基準についての高度な知識問題。難問ではあるが、感覚的に正答できるか。
GHS区分の判定基準

問22 「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)吸入ばく露による急性毒性では、物質の状態が気体、蒸気、粉じん、ミストのいずれであっても判定基準の値及び単位は同じである。

(2)皮膚腐食性であるか刺激性であるかの判定基準では、作用が可逆的であるかどうかについても考慮される。

(3)生殖毒性の判定基準では、授乳を介した影響も考慮される。

(4)発がん性の有無の判定には、ヒトに関する疫学的データのほか動物実験によるデータも用いられる。

(5)特定標的臓器毒性は、単回ばく露か反復ばく露かにより判定基準が異なる。

正答(1)

【解説】

GHSの分類及び区分については、経済産業省「事業者向け GHS 分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver. 2.0)」(2022年)(以下、「ガイダンス」という。)に記されているので、これに従って解答すればよい。

(1)誤り。ガイダンス148頁の図表3.5.1をみれば分かるように、吸入ばく露による急性毒性では、物質の状態が気体、蒸気、粉じん、ミストによって、判定基準の値及び単位は異なる。

そもそも、物質の状態が気体であれば、蒸気や粉じん・ミストよりも吸収されやすく、同じ濃度でもより危険であることは想像がつくだろう。同様に、蒸気は、粉じん・ミストよりも吸収されやすい。判定基準の値が同じわけがない。

(2)正しい。皮膚腐食性とは「化学品の 4 時間以内の皮膚接触で、皮膚に対して不可逆的な損傷を発生させる性質」であり、皮膚刺激性とは「化学品の 4 時間以内の皮膚接触で、皮膚に可逆的な損傷を発生させる性質」である(ガイダンス166頁の定義を参照)。当然に判定基準は、作用が可逆的であるかどうかによって異なる。

(3)正しい。授乳に対する又は授乳を介した影響も生殖毒性に含めることとされている(ガイダンス236頁の(1)参照)。なお、分類においては別に区分することが望ましい。

(4)正しい。当然であろう。ヒトに関する疫学的データしか用いられないとしたら、比較的新しい物質の発がん性の評価など不可能に近くなる。当然、動物実験によるデータも用いられる(ガイダンス225頁以降参照)。

(5)正しい。当然であろう。1回しかばく露しない場合の基準と、繰り返しばく露する場合の判定基準が同じわけがあるまい。ある濃度で1回ばく露しただけなら健康影響がなかったとしても、同じ濃度で何度もばく露していれば影響が出ることがあり得るだろう。なお、ガイダンス252頁図表3.5.70及び265頁図表3.5.75を比較されたい。

2021年03月13日執筆